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法人成り後の注意点…社長への貸付金は避けましょう
法人成りすると、財布が個人と会社に分かれます。会社のお金は会社のものなので、社長であっても勝手に使ってはいけません。とはいえ、社長が、法人口座のキャッシュカードを持っているので、実質的には使うことが可能なのですが…法人成りした顧問先からよく聞かれる点として、プライベートでお金が一時的に必要なので、法人口座からお金を引き出して良いでしょうか?という質問です。その場合、問題ありませんが、頻繁に発生しないようにしてくださいとお伝えしています。プライベート支出として、法人口座からお金を引き出すと、それは、会社が社長にお金を貸したと見なされます。この状態は、非常に宜しくないので、今回はこの点についてお伝えします。
【目次】
- 社長貸付を回避しなければならない理由
- 税務調査で問題になる
- 銀行からの心証が悪い
- 利息が発生する
- 社長への貸付金が生じることを防ぐ方法
- 役員報酬を適正な額に設定する
- 法人の節税対策を講じる
- 保険の活用
- まとめ
1.社長貸付を回避しなければならない理由
個人事業主の時の感覚のままだと、個人の口座も法人の口座も区別なく使ってしまいます。当税理士事務所の顧問先にもその傾向がある社長がいるので、何回も何回も、区別してくれと伝えている状況です。それができない場合、会社から社長への貸付が増え続けることになりますが、なぜそれがダメなのでしょうか。
1.税務調査で問題になる
調査官は、役員貸付金があると必ず突っ込みます。それは、社長への貸付ではなく賞与ではないかと。賞与と認定されてしまうと、賞与と認定された金額が、会社の損金として認められないばかりか、社長の所得としては認定されるため、源泉所得税を追加で払えと言われてしまいます。これは非常に厳しいので、賞与認定は必ず避ける必要があります。そういったリスクを回避するためにも、役員貸付金は計上しないようにすることが大切です。
2.銀行からの心証が悪い
銀行の立場からすると、会社にお金を貸しても、社長個人に渡る可能性があると見なします。そういった会社には、銀行はお金を貸したいとは思わないので、本当に困ったときに銀行がお金を貸してくれなくなります。当税理士事務所は、中小企業が事業継続する上で最も大切なことは資金繰りと考えており、したがって、銀行とは密に付き合った方がよいという立場です。そのため、銀行からの心証が悪くなる役員貸付は、避けなければならないと考えます。
3.利息が発生する
会社は、お金を稼ぐことを目的とする組織なので、無利息でお金を貸すというのは理論的におかしいです。そのため、役員への貸付であっても利息を取る必要があります。国税のホームページをみると、令和2年の場合、利息相当額を1.6%と設定しています。
No.2606 金銭を貸し付けたとき
もし利息を取らなかった場合、給与認定されてしまう為(上記の”税務調査で問題になる”と同じ論点)、利息は必ず取る必要があります。役員貸付があると、無駄に税金が増える効果があるため、この点からも役員貸付は問題です。
2.社長への貸付金が生じることを防ぐ方法
これまで、役員貸付は回避しなければならないとお伝えしました。では、それを回避する手段は何でしょうか。
1.役員報酬を適正な額に設定する
これが最もオーソドックスな方法です。役員報酬が生活費の原資になりますので、生活費に応じた役員報酬を設定する必要があります。当税理士事務所の顧問先に対しては、まず必要な金額を決めてもらった上で、役員報酬シミュレーションを活用し、最も節税効果のある金額をお伝えしています。
以前のコラムで、事前確定届出給与を活用した社会保険料削減についてご紹介しました。この中で、このスキームを使える役員は限定的であるとお伝えしましたが、その理由がまさしく、役員報酬が生活の原資になるという点です。従って、このスキームを使える役員は、毎月定額の役員報酬がなくても生活できる人となります。
役員報酬について、税務調査や節税のポイントは
2.法人の節税対策を講じる
3.保険の活用
効果的な保険は、国によってほとんど蓋されてしまいましたので(現在、蓋をしようとしている保険商品を含む)、今は使う機会があまりありません。個人契約の医療保険やがん保険などを法人契約にすることで、保険相当の生活費を下げることは可能です。
3.まとめ
今回は、法人成り後の注意点として、社長への貸付は避けましょうという論点でお伝えしました。一時的に会社から個人へお金を貸すことは仕方ありませんが、それが常態化することがないように注意してください。また、そもそも法人成りした方がよいか否かについては、別のコラムでまとめていますのでそちらをご覧ください。
個人事業主が法人成りを検討する際に注意する事とは