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2021.04.12 コラム解決事例(税務調査)解決事例(税務顧問)

役員報酬について、税務調査や節税のポイントは

私の経験上でしかありませんが、法人の税務調査において、役員報酬はそれほど論点になっていません。これは、今まで立ち会った法人の役員報酬がそれほど多額ではなかったからです(以前関与していた顧問先には役員報酬0円の社長もいました)。しかし、役員報酬の金額が大きく、かつ変動が大きい場合は、税務調査では必ず論点になります。実際に、争った裁判事例もたくさんあります。そこで、今回は役員報酬について取り上げます。

【目次】
  1. 損金として認められる役員報酬とは
    1. 定期同額給与
    2. 事前確定届出給与
    3. 業績連動給与
  2. 税務調査での論点とは
  3. 役員報酬の増減は慎重に
  4. 節税のポイント

1.損金として認められる役員報酬とは

役員報酬を柔軟に変更することを許容してしまうと、税金対策を講じられてしまうことから、損金算入できる役員報酬を以下の3点に限定しています。

1.定期同額給与

文字通り、毎月定額支給する給与です。基本的には1年を通して同じ金額を設定する必要があります。しかし、役員の職制上の地位が変更されたり、職務内容の重大な変更等が生じたような臨時改定事由があった場合や、経営状況が著しく悪化するといった業績悪化改定事由があった場合に変更することが可能です。2020年はコロナの影響で業績が悪化した企業も多いと思います。コロナに関係する業績悪化改定事由については、国税庁のHPに以下のような事例が掲載されています。

〇イベント業
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、イベント等の開催中止の要請があったことで、今後、数か月間先まで開催を予定していた全てのイベントがキャンセルとなった。その結果、業績が急激に悪化して家賃や給与等の支払いが困難となり、取引銀行や株主との関係からもやむを得ず役員給与を減額しなければならない状況。

〇観光業
現状では、売上などの数値的指標が著しく悪化していないとしても、新型コロナウイルス感染症の影響により、観光需要の著しい減少も見受けられ、また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が防止されない限り、減少した観光客等が回復する見通しも立たないことから、現時点において、経営環境は著しく悪化している状況。そのため、役員給与の減額等といった経営改善策を講じなければ、客観的な状況から判断して、急激に財務状況が悪化する可能性が高く、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と考えられる状況。

ここでのポイントは、現に業績悪化している企業だけでなく、今後業績悪化が見込まれる企業についても、役員報酬の減額が認められる場合があるという事です。新型コロナウイルス感染症は国難ですので、国税も柔軟な対応をするという事なのだと思います。

とはいえ、このように変更はできるものの、税務調査ではその変更事由をしっかりと説明する必要があるため、可能な限り変更しない方が良いというのが私のスタンスではあります。例えば、法人の一時的な資金繰りの都合や業績目標値に達しなかった場合などは、変更事由に該当しません。

2.事前確定届出給与

ボーナスにあたります。このボーナスを損金として認めてもらう為には、事前確定届出給与に関する届出を予め税務署に提出しなければなりません(支払日と支払う金額を予め申告します)。そのため決算間近になり、かなり利益が出そうだとわかったタイミングで税金対策として役員に対してボーナスを払っても、そのボーナスは損金として処理できません。勿論、税務署に提出した金額を申請した日に支払う分には問題ありませんが。このように実務としては使いづらい制度であるため、設定していない顧問先も多いです。

事前確定届出給与は、是非は別にして社会保険料削減スキームとして活用されることがあります。ご興味がある方は、”事前確定届出給与 社会保険料削減”といったキーワードで検索してみてください。

3.業績連動給与

その名の通り会社の業績に連動した給与です。しかし、細かいことを抜きにして基本的には同族会社はこの制度を活用できませんので、中小企業がこの制度を導入することはありません。そのため、このコラムでは特段取り上げません。

2.税務調査での論点とは

法律にて、高額な役員報酬は損金として認めないと明記されています。そして、高額か否かの判定は以下の項目に基づき総合的に判断するとされています。それぞれの項目について、具体例を含めて取り上げました。
1.役員の職務内容
⇒他の役員や同業他社の役員報酬水準と比較して多額の報酬を支払うのであれば、その役員の職務内容が非常に重要であることを説明する必要があります。とはいえ、その説明は非常に難しいのではないでしょうか。
2.法人の収益状況
⇒法人は赤字なのに役員報酬を増額するのはなぜですか?、法人の売上・利益は横ばいなのに、役員報酬を2倍にするのはなぜですか?といった質問に合理的な回答をする必要があります。これも説明が難しそうです。
3.従業員の給与状況
⇒従業員の給与の伸び率に対して、役員報酬の伸び率が過大な場合、その理由を説明する必要があります。
4.同業他社の役員報酬の水準
⇒役員の職務内容と同じ視点です。

ここまで書いておきながら、結局どの程度が合理的なのかわからないと思います。多分誰もわかりません。同業他社の役員報酬の水準なんてそもそもわかりませんし。そうなると、過去の裁判例を参考に判断せざるを得ません。裁判例を確認すると、年間の役員報酬が1,000万円を超えるケースで争われていることがほとんどのようです。よって、その範囲内であれば税務調査ではそれほど問題にならないのではないかと考えています。私の経験からもそう言えます。しかし、1,000万円→300万円→1,000万円というように過度に変動幅が大きいやり方は避けましょう。300万円→1,000万円の説明が困難な場合もありますので。

3.役員報酬の増減は慎重に

役員報酬を何千万円と貰っていない限りは、税務調査ではそれほど問題にはなりません。しかしそうではない役員もたくさんいらっしゃると思います。それだけ出せる会社はそれなりに大きい会社で顧問税理士もいるはずですので、もし今まで上記のような視点で役員報酬を検討していない場合は、一度顧問税理士に確認してください。

役員報酬の設定が難しいことはご理解頂けたと思います。それに付随してお伝えしたいのが役員報酬の変動です。裁判例をみても、役員報酬を増額している場合に否認されている事例がほとんどです。そのため、役員報酬を減らすのは難しくありませんが、増やすのは慎重にならざるをえません。だからこそ、役員報酬を安易に減らすことはお勧めしませんし、増やす場合も徐々に増やした方が良いだろうと当税理士事務所では考えています。月に数十万の変動は特に問題ないと思いますが。

4.節税のポイント

話が節税にかわります。役員報酬は節税対策としても有効です。実質的には会社と役員の財布は同じと考えれば、お金が外に出ていかないという点で、大きなメリットがあります。まず、配偶者に対して役員報酬を支払うことを検討します。例えば、社長に100万円渡すより、社長に90万円、配偶者(非常勤役員)に10万円渡した方が節税効果があります。配偶者が常勤役員であれば、社長60万円、配偶者40万円といった形で分散するとより節税効果が図れます。勿論、配偶者も業務に携わる必要はありますが。当税理士事務所では、役員報酬シミュレーションソフトを活用し、会社の税金と役員の税金の合計額が一番安くなるように役員報酬の理論値を算定し、顧問先にお伝えします。先ほど、役員報酬の増減はリスクがある旨をお伝えしていますので、その点を加味しながら毎期、役員報酬を決定しています。

 

 

法人税法

(役員給与の損金不算入)
第三十四条
2 内国法人がその役員に対して支給する給与(前項又は次項の規定の適用があるものを除く。)の額のうち不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない

法人税法施行令

(過大な役員給与の額)

第七十条 法第三十四条第二項(役員給与の損金不算入)に規定する政令で定める金額は、次に掲げる金額の合計額とする。
一 次に掲げる金額のうちいずれか多い金額
イ 内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与(法第三十四条第二項に規定する給与のうち、退職給与以外のものをいう。以下この号において同じ。)の額(第三号に掲げる金額に相当する金額を除く。)が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(その役員の数が二以上である場合には、これらの役員に係る当該超える部分の金額の合計額)

 

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