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法人の節税方法について…社宅制度の導入
税金は、可能であれば払いたくないものです。そのため、多くの方が節税対策を追い求めます。そこで、これから数回にわたって法人の節税対策についてお伝えしますが、最初にご紹介するのは、社宅制度です。こちらは非常に強力な節税対策ですので、是非、活用して頂きたいです。
【社宅制度の導入】
- 役員に社宅を貸し付けた場合
- 社宅が小規模な住宅の場合
- 社宅が小規模な住宅ではない場合
- 社宅がいわゆる豪華社宅である場合
- 従業員に社宅を貸し付けた場合
法人が賃貸マンション等を借りて、そのマンション等を役員や従業員に社宅として貸し付けた場合、家主へ支払った賃料と役員等から受け取った賃料の差額を、会社の損金とすることができます。私の顧問先についても、法人成りした場合、社長のご自宅が賃貸であれば、法人契約に切り替えて節税する方法を検討してもらっています(今のところ、全員が法人契約に切り替えています)。
注意点は、賃料全額を経費として処理できない点です。では何割経費にできるのか?が気になると思いますが、国税庁のホームページで計算方法が明示されていますので、そのホームページに基づき算出します。
1.役員に社宅を貸し付けた場合
1.社宅が小規模な住宅の場合(※1)
基本的にはこちらに該当することが多いと思います。次の1から3までの合計額が賃貸料相当額になりますが、固定資産税の課税標準額の調べ方が少々面倒です。この調べ方については、物件のオーナーに確認するのは現実的ではないため、県税事務所等に問い合わせることになります。その時に、賃貸契約書を提示しないと、固定資産税評価額の資料は渡してくれませんので、必ず、賃貸契約書を準備してください。そして計算すると、賃貸料相当額が20%程度になる場合が多いようです。つまり、実質的に賃料の80%を経費として処理できるため(賃料ー賃貸料相当額)、強力な節税対策となります。私の顧問先で最近算出しましたが、賃料相当額17.5%でした。
- その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
- 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
- その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
会社によっては(税理士の指導?)、税務署に否認されないために、保守的に一律で賃料相当額を50%に設定しているケースもあるようですが、節税対策としてはいまいちです。国税庁ホームページで計算式が明記されているのですから、そのルールに従って、しっかりと節税するべきと考えます。
※1:小規模な住宅とは?
法定耐用年数が30年以下の建物の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定します。)である住宅
2.社宅が小規模な住宅ではない場合
その社宅が自社所有の社宅か、他から借り受けた住宅等を役員へ貸与しているのかで、賃貸料相当額の算出方法が異なりますが、それぞれの計算式は以下の通りです。
- 自社所有の社宅の場合
次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12%ではなく、10%を乗じます。
ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6% - 他から借り受けた住宅等を貸与する場合
会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記(1)で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額が賃貸料相当額になります。
3.社宅がいわゆる豪華社宅である場合
通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額になるため、節税対策にはなりません。
豪華社宅であるかどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、いわゆる豪華社宅に該当することとなります。要は、社長の嗜好で豪華な賃貸マンション等に住んだとしても、そんな贅沢な住まいには節税させませんよという事だと考えます。
2.従業員に社宅を貸し付けた場合
役員に小規模な住宅を貸し付けた場合と同じ計算式ですので、そちらをご覧ください。
3.まとめ
今回は、社宅制度の導入について紹介しました。この節税方法は、法人でしかできません。個人事業主ではできない節税方法です。そのため、個人事業主の場合、事業割合で家賃の一部を経費処理できますが、経費にできる割合は3~4割程度ではないでしょうか。しかし、社宅制度の場合は、8割程度を経費処理することも十分に可能なのです。また、社長が利用するという前提で、もう1つ重要なポイントがあります。それは、家賃の支払いを法人で支払う事ができるため、家賃相当分だけ役員報酬を下げる余地が出てくる点です。役員報酬を減らせば、社長自身の所得税、住民税、社会保険を節約することができます。この点からも、賃貸に住んでいるのであれば、必ず検討して頂きたい節税対策です。