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税務調査の対象になりやすい個人事業主とは
インターネットで検索すると、税務調査の対象になりやすい個人事業主の具体例などがたくさん出てくると思います。今回は、私がこれまで税務調査の相談を受けた個人事業主の特徴についてお伝えします。今回取り上げる事例の多くは、顧問税理士がついていなかった個人事業主ですので、現在、顧問税理士がいない方にとっても参考になると思います。
【具体例】
- 売上が1,000万円未満ぎりぎりで申告している
- 所得金額が100万円弱で申告している
- 申告書類に不備がある
- 白色申告である
- 経費にプライベート支出が含まれていそう
1.売上が1,000万円未満ぎりぎりで申告している。
これは有名な話ですし、私が相談をうけたケースでも本当に多いです。勿論、正しく申告している方も多いのですが、税務署は、売上1,000万円弱での申告が続いている納税者については、消費税を払いたくないから、売上をごまかしているのではないかと疑うため、税務調査の対象に選定されやすくなってしまいます。仮に売上の一部を隠していた場合、税務署は基本的には、仮想隠蔽行為とみなし、重加算税が課そうとします。重加算税が課された場合、35%から40%のペナルティーを課されるのも痛いのですが、今後、税務調査が当たりやすくなるという大きなデメリットもあるため、売上を意図的に除外するのは、絶対にやってはいけない脱税です。また、売上除外の方法を別のコラムでまとめましたので興味がある方はご覧ください。
税務調査の相談等でみてきた売上除外のパターンとは
正しく申告していたとしても、売上1,000万円弱の納税者は税務調査にあたりやすいと認識した上で、経費項目についても、税務署に脱税と思われないような申告が必要です。
国税庁HP N0.6501 納税義務の免除
消費税では、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。
この納税の義務が免除される事業者(以下「免税事業者」といいます。)となるか否かを判定する基準期間における課税売上高とは、個人事業者の場合は原則として前々年の課税売上高のことをいい、法人の場合は原則として前々事業年度の課税売上高のことをいいます。なお、基準期間が1年でない法人の場合は、原則として、1年相当に換算した金額により判定することとされています。具体的には、基準期間中の課税売上高を、基準期間に含まれる事業年度の月数で割った額に12を掛けて計算した金額により判定します。
2.所得金額が100万円弱で申告している
これもかなり多い事例です。個人事業主の場合、事業活動で残ったお金(売上ー経費=所得)で、生活するため、所得金額があまりに少ないと生活ができません。そのため、税務署は、売上をごまかしているのではないか、経費を過大に申告しているのではないかと疑います。私が関与した方の大部分も、売上が過少だったり、経費にプライベート支出が紛れているなど、正しく申告されていない状況でした。
3.申告書類に不備がある
申告書類に記入ミスがあったり、計算ミスがあると、税務署は、適当に申告していると考え、税務調査の対象になりやすくなります。私が関与した案件では、消費税の簡易課税区分が明らかに誤っているケース、消費税の簡易課税計算の売上が間違っているケース(今期の売上ではなく、前々年度の売上を使用して消費税を計算していた)、確定申告書の収支内訳書について、経費の金額を手書きで何度も訂正しているような方がいました。税務署の立場からすると、明らかに誤りのある申告書の場合、確実に追徴課税を課すことができるため、このようなケースは当たりやすくなります。
また、手書きの申告ですが、2020年度確定申告から、電子申告(もしくは電子帳簿保存)の要件を満たさないと、青色申告特別控除65万円を受けることができないため、その点もご留意ください。年配の税理士で電子申告できない方も結構いたりします。この点も別のコラムで紹介していますので参考にしてください。
令和2年分確定申告-青色申告特別控除65万円の変更点
4.白色申告である
これは、白色申告だから当たりやすいという訳ではなく、税務調査の相談を受ける際、白色申告の事業者は税務調査が入らないと思っていた方がたくさんいましたので、白色申告であっても税務調査は入りますよとお伝えするために取り上げました。そもそも、白色申告の事業者は、青色申告の事業者と比較して、適当に申告している方が多いと推測されるため、税務調査は、税金が取れやすいところに行くという大原則を考えると、むしろ白色申告の方が狙われやすいのではないかとさえ思います。因みに、私が相談を受けた方の9割は、白色申告の方です。
5.経費にプライベート支出が含まれていそう
これも非常に多いです。確定申告書を見ただけではプライベート支出が含まれているかどうかわかりませんが、所得金額があまりに少ない方は、基本的にプライベート支出が含まれています。また、交際費や雑費に多額の金額が計上されていた場合、怪しまれてしまいます。税務調査では、プライベート支出は経費ではないので、当然否認されるのですが、皆さんの事業について理解もせずに、何から何までプライベート支出と断定して否認する税務職員もいるようです。税理士が立ち会っていれば、さすがにないと思いますが。プライベート支出だといわれても、事業に係る支出なのであれば、しっかりと主張する必要があります。本来払わなくてよい税金を払う必要はありません。
まとめ
今回は、税務調査の対象になりやすい個人事業主の具体例を取り上げました。当税理士事務所の顧問先に継続的に売上1,000万円弱で申告している方がいますが、正しい申告をしているにも関わらず、自分は税務調査の対象として選定されやすいと半ばあきらめています。仮に不正により上記のような確定申告書を提出されている方がいれば、近いうちに税務調査に選定される可能性が高いため、早めに税理士に相談することをお勧めします。梁瀬会計事務所では、税務調査とは関係なく、過去の事業年度に係る修正申告書を提出するサービスを提供しています。初回相談は無料ですので、是非ご相談ください。無申告・期限後申告の料金も広告費にお金をかけていない分、他の税理士よりも安く設定しています。
期限後申告の料金やご利用の流れ等
また、税務調査の対象になりやすい個人事業主という今回の趣旨とは異なるのですが、最後にお伝えしたいことがあります。それは、売上が小さくても税務調査には当たる可能性があるという点です。別のコラムでは、売上がそれほど大きくない美容師の税務調査に立ち会った事をお伝えしました。
美容師の税務調査…経営者ではない美容師も税務調査の対象に
この美容師以外にも、売上400万円程度で申告していた一人親方の税務調査に立ち会ったこともあります。この一人親方は、本当の売上が700万円程度だったため、税務調査前に修正申告を提出したのですが。税務署は、各業種の平均売上のデータを保持しています。美容師であれば○○万円、一人親方であれば○○万円というように。その平均売上から大きく下回る売上で申告していると、税務署は疑いそうですよね。この点からも、売上が小さいからといって税務調査には当たらないとは思わないようにしてください。