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美容師の税務調査…経営者ではない美容師も税務調査の対象に
私がいつも通っている美容師さんは、独立してご自身のお店をお持ちです。私が税理士と知っていますので、税金の話をよくします。これって経費にできますかね?とか。売上については議論の余地はないのですが、経費はグレーゾーンも多いため、税理士によっても見解が異なるところです。今回は、その美容師のように店舗経営している方ではなく、外注として勤務している美容師が税務調査の対象となりました。最近は、美容室に勤務する方も外注として働く方が多いようです。税務調査に立ち会った本人にその理由を聞くと、報酬が良いからとの事でした。採用する側からすると、外注の方が税務メリットを享受できますし、社会保険負担もないというメリットがある一方、条件の良い美容室があると、すぐそちらに移ってしまうというデメリットもあるようで、なかなか難しいようです。
【目次】
- 税務調査に選定されたのは…
- 美容師の税務調査の論点は
- 売上は正しいか
- 経費にプライベート支出が含まれていないか
- まとめ
1.税務調査に選定されたのは…
今回、一番お伝えしたい点です。それは、店舗経営しているような企業や個人事業主だけでなく、そこで外注として働いている美容師も税務調査に選定される可能性があるという事です。私が関与した美容師ではありませんが、フルで働いていない美容師の場合、売上が200万円位の方もいると思います。それでも税務調査にあたる可能性はありますので、売上が少ないから自分は当たるわけないとは思わず、不適切な申告は避けましょう。
2.美容師の税務調査の論点は
店舗経営している企業や個人事業主の場合、予約管理データ(ホットペッパービューティー等)や顧客管理データ等に基づき、適切な売上を計上しているか?といった、調査官としても工数のかかる調査が発生しますが、外注として働く美容師の場合、そういった細かい論点はありません。以下、チェックポイントをお伝えします。
1.売上は正しいか
どの業種でも同じですが、必ず売上はチェックされます。美容師の場合、勤務する美容室から受け取ったお金を正確に売上として計上しているか確認するだけですので、銀行口座(現金受領の場合、領収書)と売上の明細書があれば、すぐにわかります。すぐにわかるので、不正をしたら簡単にバレます。そして、現金受取も多いようですので、勤務する美容室への反面調査の可能性も高いです。私が関与した案件の場合、現金受領を証明する領収書を一部なくしていたので、反面調査が行われました。
また、建設業や運送業など他の業種でもよくありますが、売上明細書をみると、売上から消耗品費や広告負担金、その他雑費を差し引いた金額を受け取る場合が多いようです。その場合、売上はそういった経費を差し引く前の金額を計上しなければなりません。この論点は、売上高1,000万円を超えるか否かの時に重要になってきますが、美容師の場合は1,000万円超えることは少ないと思いますので、問題にならない可能性が高いです。
2.経費にプライベート支出が含まれていないか
美容師の税務調査のポイントは、結局ここだと思います。売上除外は論外ですので重加算税を課せられて多額の追徴課税を払っていただくとして、ある程度適正に申告している方であっても、プライベート支出は、意図的かどうかは別として、含まれている場合が多いです。私が立ち会ったケースでは、仕事に関連するか否か不透明な飲食費や消耗品、お客様への贈答品(外注として働く以上、お客様を維持しないといけないため、仲良くなって食事に行くこともあるとの事)等々、レシートはわんさか出てきましたが、それぞれが仕事と関連するか否かは本人も明確には記憶していない状況でした。
このようなケースでは、細かく見ていっても明確な数値を出すことはできないので、レシートをざっと見ていき、事業との関連性を予め説明できるようにした上で、税務調査に臨み、調査官ともヒアリングベースで数値を固めていきました。調査官によっては、レシート全てを集計する方針を採用する人もいるので、調査官によって交渉方法を変えていく必要はありますが。
当初申告の経費は、明らかにプライベート支出が盛り沢山でしたので、合理的な範囲で経費否認されて終了となり、追徴税額もそれほど多くはありませんでした。
3.まとめ
今回は、美容師の税務調査について取り上げました。経費にプライベート支出が紛れ込んでいることは、どの業種でもありますので、美容師特有の論点でも何でもありません。今回お伝えしたかったことは、繰り返しになりますが、収入が少ないから税務調査の対象にはならないとは絶対に思わないでくださいということです。美容師に限らずです。私が関与した建設業の個人事業主の場合でも、売上が400万円位でも税務調査の対象に選定されていましたので。
売上が小さくても税務調査に選定されることについて、別のコラムで整理しています。是非、こちらもご覧ください。
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