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一人親方の税務調査のポイントは?売上、外注費、交際費などについて
私が関与した個人事業主の税務調査(税務調査から初めて関与した先)において、最も件数が多いのが一人親方の税務調査です。大工、内装業、塗装業、設備業等々、たくさんの方が一人親方として働いています。そして、他の業種と比較すると多額の税金がとられる傾向があります。そこで今回は一人親方に対する税務調査の調査項目ついて紹介します。
【目次】
- 主な調査項目
- 売上高
- 外注費
- 交際費
- 自宅兼事務所の事業割合
- まとめ
1.主な調査項目
1.売上高
当たり前ですが、売上については必ず確認します。そして、一人親方の税務調査では一般的に以下のような方法で調査が行われます。
1年分の通帳から売上入金されている項目を抽出し、1年分を合計すると申告書と一致しているか(もしくはある程度整合しているか)を確認します。ここで明らかに申告書と異なる場合、税務調査は一気に厳しくなります。調査官の「なぜ、入金額と申告書が違うんですか?」という質問に対して、納税者は回答しなければなりません。計算ミスだったり、入金件数が多く計算対象から漏れた可能性もあるため、本人が正しく計算したつもりだったのであればそれほど大きな問題になりませんが(調査官にそのように説明する必要があります)、不正を意図したものであれば重加算税が課されるため、追徴課税も一気に増加します。その場合、事前に修正申告を提出することも検討が必要です。事前の修正申告については以下のコラムを参考にしてください。
税務調査前に修正申告書を提出するべきか
同時に元請が発行した請求書を確認します。これを確認する意図は、入金額が必ずしも売上と一致しない場合があるためです。つまり、売上から諸経費(外注費、ガソリン代、旅費交通費等)を差し引いた金額が入金されている場合があり、この場合、諸経費を差し引く前の金額を売上として処理しなければなりません。調査官は、請求書を見てその事実関係を確認します。ここで問題となるのは、諸経費を差し引く前の金額を集計した結果、年間の売上高が1,000万円を超えてしまうと、消費税の納税対象になってしまう点です。このエラーについては、不正の意図がない場合が多い印象ですが(入金額が売上と考えている方が非常に多い)、消費税は負担額が大きいため重加算税が課せられなくても厳しい結果になってしまいます。
また請負契約の場合、売上は役務の提供が完了した時期で計上するため、売上高の期間配分が適切か確認します。例えば、入金は2021年1月であっても仕事が完了した月が2020年12月であれば、2020年12月の売上として処理しなければなりません。実務では多くの方が間違っていますので、税務署も間違っていることを責めたりしません。重加算税が課されることも基本的にはありません。
繰り返しになりますが、入金金額と確定申告書の売上金額に明らかに差がある場合、調査が厳しくなります。そもそも売上除外は簡単にばれるので、ご自身の売上については間違いのないように正確に申告しましょう。
2.外注費
論点は主に2つあります。1つは架空外注費で、もう1つは外注費か給与かという論点です。一人親方の税務調査では、一般的に以下のような方法で調査が行われます。
納税者が申告した外注費が実在しているかについて、まず外注先の名前・住所・連絡先等を整理します。これは、後々反面調査を行う可能性があることや、外注先の申告状況を確認するためです。その上で、外注先が発行した請求書/領収書のチェック、振込実績の確認をおこないます。それでも調査官が不信感を感じれば、外注先に対して反面調査をおこなう場合もあります。
外注費が給与かについては、別のコラムでまとめますので参考にしてください。外注費が給与認定されてしまうと、消費税課税事業者であれば消費税の追徴課税が発生しますし、課税事業者ではなくても源泉所得税は発生するためかなりの痛手になります。
一人親方の外注費と給与の区分について
外注先には必ず請求書や領収書を発行してもらうこと、可能な限り現金支払いではなく振り込みにしてもらうことで実在性の問題を解消し、給与認定されないためには請負契約書等を作成することも大切ですが、何より確定申告をするように指導することがとても大切です。
3.交際費
一人親方の確定申告書を拝見すると、交際費(飲食代)が多い傾向があります。交際費については、プライベート支出であっても簡単に経費として処理することができるからこそ(私達税理士が、飲食店の領収書を見ても業務に必要な費用かプライベート支出かわかりません)、税務署もその前提でチェックします。
交際費の調査方法は、調査官によってかなり手法が異なります。金額の大きい交際費しかチェックしない調査官もいれば、領収書やレシートをすべて集計した上できちんと調査する調査官もいます。元請との飲食しか交際費として認めようとしない調査官もいます。細かく確認されてしまうと、一人で行ったと推測される飲食代、子供といったことが明らかな飲食代等々、突っ込みどころ満載のレシートがわんさか出ることもあります。交際費については、プライベートの支出ではなく業務で必要であったことを主張しなければならないためとても面倒ですが、日頃から誰といったかメモしておくことをお勧めします。事業との直接関連性については、以下のコラムを参考にしてください。
税務調査で問題となる個人事業主の経費について。事業との直接関連性とは
4.自宅兼事務所の事業割合
自宅の一部を事務所として使用されている方も多いです。その事業割合が実態と明らかに異なる場合、乖離する部分については、否認される可能性があります。
2.まとめ
今回は、一人親方の税務調査の特徴について説明しました。正直に申し上げると、一人親方の確定申告は杜撰な方も多いです。税務調査は、多額の税金がとれそうなところを優先するという傾向がある以上、一人親方は税務調査の対象に選定されやすいと理解して頂き、適切な確定申告を心がけてください。何よりも売上が間違っていることが本当に良くないので、意図的な売上除外は論外ですが確定申告時には何度か計算しなおすことをお勧めします。また、これまでの経験上、年間売上高1,000万円を大きく下回る方でも税務調査の対象になっていますので、売上が少ないから大丈夫とは思わないでください。
当税理士事務所は、重加算税が課される可能性が高い案件を含め、一人親方の税務調査を数多く経験しています。当税理士事務所は最初の相談は無料で受けていますので、その無料相談でも可能な限りの事はお伝えします。そして、税務調査の立会いを依頼した場合の料金は広告費にお金をかけていない分、他の税理士よりも安く設定していますので、是非ご連絡ください。