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2021.02.06 コラム

税務調査で問題となる個人事業主の経費について。事業との直接関連性とは

税務調査では、金額が大きい勘定科目や不正のリスクが高い科目(売上高、仕入・棚卸、人件費、外注費、支払手数料など)が優先的にチェックされます。これらは重加算税の有無で揉めることはあっても実在性で揉めることはそう多くはありません。

逆に、交際費や会議費(飲食費)などの経費については、「それは売上に直接要した費用(直接繋がった費用)ですか?」という税務署側の追及もあり、本当によく揉めます。

今回は個人事業主の税務調査における経費全般の交渉の中で問題となりがちな「直接に要した」について取り上げます。

【目次】
  1. 法律は必要経費をどう規定しているか?(所得税法第37条)
  2. 【最高裁確定】「直接関係」は不要と判断された判例
  3. 税務調査での交渉:税務署の主張と正しい反論方法
  4. 業務に「必要であること」を主張・立証するための準備
  5. まとめ

1.法律は必要経費をどう規定しているか?(所得税法第37条)

まず、法律が「必要経費」についてどのように明文化しているか確認します。

 所得税法 第三十七条(必要経費)
その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額……の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用の額とする。

条文をよく読むと、重要な違いがあることに気づきます。

  • 売上原価など ➔ 「総収入金額を得るため直接に要した費用の額」

  • 販売費・一般管理費など ➔ 「業務について生じた費用の額」

つまり、仕入や製造コストなどの「売上原価」については「直接に要した」という文言が入っていますが、交際費や会議費、広告宣伝費などの「販売管理費(販管費)」については「直接に要した」とは書かれていません。

2.【最高裁確定】「直接関係」は不要と判断された判例

税務調査を専門とする税理士の間で非常に有名な裁判例があります(弁護士の必要経費をめぐる裁判:平成24年9月19日東京高裁判決 / 平成26年1月17日最高裁にて確定)。

この裁判で国税側(税務署側)は、「経費として認めるには、事業の業務と直接関係を持ち、かつ専ら業務の遂行上必要といえるかによって判断すべきだ」と主張しました。しかし、裁判所は国税側の主張を退けています。

⚖️ 東京高裁(H24.9.19判決 / H26.1.17最高裁確定)抜粋 「……ある支出が業務の遂行上必要なものであれば,その業務と関連するものであるというべきである。それにもかかわらず,これに加えて,事業の業務と直接関係を持つことを求めると解釈する根拠は見当たらず,「直接」という文言の意味も必ずしも明らかではないことからすれば,被控訴人【国税】の上記主張は採用することができない。」

要するに、裁判所は「業務の遂行上必要な費用であれば十分であり、さらに『直接関係していること』まで求める国税の理屈には法的根拠がない」と明確に判断したのです。

3.税務調査での交渉:税務署の主張と正しい反論方法

1.税務署がよく主張するロジック

実務の現場で調査官がよくやるのが、飲食費の領収書を見て「この相手は誰ですか? 今期の売上先(顧客)ではないですよね? なら売上に直接結びついていないので経費になりません」という主張です。

例えば、顧問税理士との会食費や、外注先(協力会社)との飲食費などに対して、この「直接性」という観点で経費ではないと主張します。

2.愛知県一宮市での実際の交渉事例

私が立ち会った愛知県一宮市の個人事業主様の税務調査でも、調査官が「売上に直接紐づいていない」という理由で飲食費を否認しようとしてきました。そこで私は、先ほどの判例(業務直接性の不要)を提示した上で、調査官に次のように反論・交渉しました。

💬 現場での反論ロジック
「そもそも、売上に直接紐づく費用しか認められないと言うなら、オフィスで使う文房具代や通信費なども『直接その年の売上を生んだ証拠』はありませんよね? なぜそれらの経費は認めるのに、外注先や取引先との関係維持・打ち合わせに必要な飲食費だけ『売上への直接の紐づき』を求めるのですか? 法律上の根拠に基づいて説明してください。」

このように「売上に直接紐づかない経費など世の中に山ほど存在する」という当たり前の事実と法律上の根拠を突きつけた結果、最終的に納税者本人が「業務上の打ち合わせや関係維持に必要だった」と説明できた飲食費については、すべて無事に経費として認めてもらうことができました。

4.業務に「必要であること」を主張・立証するための準備

「直接に要した」否かに関わらず、「そもそも事業・業務に必要だったのか(プライベートの支出ではないか)」という点は当然クリアしなければなりません。完全なプライベートの飲食費や家族での食事などを「事業の経費」と主張するのは不可能です。

大切なのは、普段から「これは業務に必要な支出であった」と後から客観的に説明できる証拠を残しておくことです。

  • 領収書の裏に「同席者の名前」と「打ち合わせ内容(〇〇案件の相談など)」をメモしておく

  • 業務上の必要性(今後の仕事の受注、協力体制の維持、情報交換など)を自分の言葉で話せるようにしておく

過去には、プライベートと思われがちな「高級外車(フェラーリ)」であっても、事業上の必要性を論理的に立証できたことで経費として認められた国税不服審判所の裁決事例もあります。

🔗 関連コラム:フェラーリなどの高級車は経費にできますか

5.まとめ

税務調査では、調査官が言ってきた否認理由が、実は法律上の根拠がないケースがあります。知識がないまま調査官の言われるがままになってしまうと、本来なら払う必要のない追徴課税を払わされることになります。

ご自身だけで調査官と論理的に戦うのが難しいと感じた場合は、ぜひ税務調査に強い専門家へご相談ください。

梁瀬会計事務所では、税務調査の事前リスクチェックから当日の立会い・交渉まで徹底サポートしております。ネット広告に高額な費用をかけていない分、他の事務所よりもリーズナブルな料金で、頼れるパートナーとして最後まで戦います。

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