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一人親方の外注費と給与の区分について
前回、税務調査で問題となりがちな外注費と給与の区分について一般的な解説を行いました。
今回は、一人親方に絞ってお伝えしようと思います。私が関わった税務調査で最も多い業種は建設業ですが、なぜかこの外注費と給与の区分で揉めた記憶があまりありません。理由としては、私が立ち会う税務調査は、元々税理士がついていない個人や法人の税務調査が多いため、売上の過少計上や外注費の架空計上など、もっとわかりやすく税務署も指摘しやすい論点が多いためだと思います。要は他の論点に埋もれたということなのだと推測しています。建設業に限らず売上と外注費は必ずチェックされる項目ですので、必ず正しく申告するように心がけてください。結果的に一つだけ漏れていたという事であれば大きな問題はありませんが(ミスしたと言えるので)、間違い箇所が多いとミスではなく意図的にやったでしょ!と必ず言われます。追い込まれますよ。
【目次】
- 外注費と給与の判定基準
- 外注費と給与の判定基準-一人親方
- まとめ
1.外注費と給与の判定基準
再確認のため、本論点の基礎となる消費税法基本通達を取り上げておきます。(1)~(4)が1つの判断基準になります。
消費税法基本通達
(個人事業者と給与所得者の区分)
1-1-1 事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
2.外注費と給与の判定基準-一人親方
大工や左官といった一人親方については、個別に通達が存在します。問い合わせが多かったため、個別対応したものだと思われます。
大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)
標題のことについては、下記のとおり定めたから、これによられたい。
なお、昭和28年8月17日付直所5-20「大工、左官、とび等に対する所得税の取扱について」(法令解釈通達)、昭和29年5月18日付直所5-22「大工、左官、とび等に対する所得税の取扱について」(法令解釈通達)、昭和30年2月22日付直所5-8「大工、左官、とび等に対する所得税の取扱について」(法令解釈通達)及び昭和31年3月12日付直所5-4「大工、左官、とび等に対する従来の取扱通達にいう『大工、左官、とび等』の意義等について」(法令解釈通達)は、廃止する。(趣旨)
大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得が所得税法第27条に規定する事業所得に該当するか同法第28条に規定する給与所得に該当するかについては、これまで、昭和28年8月17日付直所5-20「大工、左官、とび等に対する所得税の取扱について」(法令解釈通達)ほかにより取り扱ってきたところであるが、大工、左官、とび職等の就労形態が多様化したことなどから所要の整備を図るものである。記
1 定義
この通達において、「大工、左官、とび職等」とは、日本標準職業分類(総務省)の「大工」、「左官」、「とび職」、「窯業・土石製品製造従事者」、「板金従事者」、「屋根ふき従事者」、「生産関連作業従事者」、「植木職、造園師」、「畳職」に分類する者その他これらに類する者をいう。
2 大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得区分
事業所得とは、自己の計算において独立して行われる事業から生ずる所得をいい、例えば、請負契約又はこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価は事業所得に該当する。また、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく役務の提供の対価は、事業所得に該当せず、給与所得に該当する。
したがって、大工、左官、とび職等が、建設、据付け、組立てその他これらに類する作業において、業務を遂行し又は役務を提供したことの対価として支払を受けた報酬に係る所得区分は、当該報酬が、請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのか、又は、雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのかにより判定するのであるから留意する。
この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどう
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。
色々と記載されていますが、消費税法基本通達に記載されている4要件について、一人親方用に整理したと言えます。従って、皆さんが建設業の場合、こちらの個別通達を参考に整理するとよいと思います。また、Q&Aもありますので、ここまでチェックする必要はないと考えますが、念のために情報提供します。
大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(別冊)
3.まとめ
今回は一人親方に絞って、外注費と給与の区分についてお伝えしました。とはいえ、実務における外注費と給与の区分で特に大切なのは、外注先が確定申告する事です。つまり本人自らが外注先であることを表明することです。これは建設業だろうがそれ以外の業種だろうが違いはありません。従って、最優先すべき事項は、外注先に確定申告してもらう事ですが、それに加えて、建設業の方であれば今回取り上げた一人親方に適合した要件を参考に、整理していくという流れになるかと思います。
ご自身の申告を正しくするだけでなく、それを裏付ける書類をしっかりと整備することで、反面調査を回避する可能性も高まります。反面調査は取引先に迷惑をかけてしまいますので、可能な限り避けたいはずです。その可能性を高めるためにも、是非、形式的な書類もしっかりと整備するように心がけてください。
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