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税務調査で「事実と違う回答」をしたら必ず重加算税?回避できた名古屋の事例
以前のコラムで、個人事業主が税務調査で重加算税を課されるパターンについて解説しました。
🔗 関連コラム:個人事業主の税務調査で「重加算税」になる具体例6選
今回は、その中でも特にご質問の多い「税務調査の現場で、結果的に事実と異なる回答をしてしまったケース(虚偽答弁の疑い)」について、実際に私が対応した名古屋市の個人事業主の事例をもとにお伝えします。
【目次】
- 国税庁の指針:「うっかり忘れ」と「意図的な嘘」の違い
- 名古屋市の個人事業主:口座の言い忘れで「重加算税だ!」と言われたケース
- まとめ:税務調査で「やってはいけない発言」と適切な対応
1.国税庁の指針:「うっかり忘れ」と「意図的な嘘」の違い
国税庁が出している事務運営指針では、重加算税を課す要件の一つとして「質問に対して虚偽の答弁を行うこと」が挙げられています。
申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
第1 賦課基準(隠蔽又は仮装に該当する場合)
1⑻ 調査等の際の具体的事実についての質問に対し、虚偽の答弁等を行い、又は相手先をして虚偽の答弁等を行わせていること及びその他の事実関係を総合的に判断して、申告時における隠蔽又は仮装が合理的に推認できること。国税庁HPより抜粋。下線は、コラム作成者による。
ここで注目すべきは、単に「回答が事実と違っていた」というだけでは重加算税にはならない点です。
指針には「その他の事実関係を総合的に判断して、仮装・隠蔽が合理的に推認できること」と書かれています。つまり、「最初から隠すつもりで意図的に嘘をついた(虚偽答弁)」のか、それとも「単に忘れていて結果的に間違った回答になった(過失)」のかという点において、前者(意図的な隠蔽)であると税務署側が証明・推認できなければ、重加算税は回避できる可能性があるのです。
2.名古屋市の個人事業主:口座の言い忘れで「重加算税だ!」と言われたケース
調査官からの追及と「うっかり忘れ」の事実関係
税務調査の立会いをご依頼いただいた、愛知県名古屋市在住の個人事業主 (売上規模:年間約3,000万円)の事例です。事前面談で売上口座についてヒアリングした際、「売上が入金されている口座は2つです」と伺っていました。しかし、調査当日に以下のような出来事が起こりました。
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調査官:「売上が入金されている口座は、この2つで間違いありませんか?」
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個人事業主:「はい、この2つだけです」
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調査官:「本当に入金口座は他に一切ありませんか?」
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A個人事業主:「ありません」
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後日: 調査官から連絡があり、「反面調査等で『3つ目の別の口座』にも売上入金があることが判明した。これは虚偽答弁にあたるため、重加算税を課します」と主張。
連絡を受けた私自身も「えっ?」となりましたが、すぐに事実確認を行いました。すると本人は「あっ……!」と思い出した様子でした。詳しく事情を整理すると、以下のような状況でした。
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問題の口座に入金があったのは3年前(数回程度、合計数十万円)
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取引先は1社のみで、現在はすでに取引が終了している
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それ以降、その口座に売上入金は一切ない
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年間の取引先は20社近くあり、本気でその1社の存在を忘れていた
重加算税を回避できた反論ロジック
事実として「口では『ない』と言ったのに、実際には口座が存在した」わけですから、税務署は「嘘をついて隠そうとした(虚偽答弁=重加算税)」と強く主張してきました。
これに対し、私たちは「事実を知りながら嘘をついたのではなく、記憶から抜け落ちていたため誤った回答になっただけ(過失であり、意図的な隠蔽ではない)」と反論しました。
ここで大事なのは、先ほどの事務運営指針にある「その他の事実関係を総合的に判断する」という箇所です。
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3年も前に取引が終わった、年間20社中のたった1社(金額も全体から見ればごく僅か)のことを、人間がうっかり忘れてしまうことは十分にあり得る。
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意図的に売上を隠して税金を脱税しようとした(仮装・隠蔽)と推認するには、証拠として根拠が乏しい。
仮にこれが、「1年前の主要な取引先で、金額も数百万円規模」であれば、「覚えていないわけがない」という理屈が通ってしまうため、重加算税を回避するのは難しかったでしょう。
今回は事実関係の客観的な状況(金額の小ささ、時期の古さ)から見て、「意図的な仮装隠蔽があったとまでは言えない」と主張することで、無事に重加算税を回避(普通の過少申告加算税で決着)することができました。
💡 税理士からのワンポイントアドバイス
調査官は重加算税を確定させるために、「自分が嘘をついた」という証拠(質問応答記録書という供述書のような書面)にサインを求めようとしてくることがよくあります。内容をしっかり確認せず、言われるがままサインしてしまうと取り返しのつかないことになるため注意してください。
🔗 関連コラム:税務調査の質問応答記録書にはすぐにサインしなくていい
3.まとめ:税務調査で「やってはいけない発言」と適切な対応
税務調査の基本は「絶対に嘘をつかないこと」です。しかし、人間ですので「焦ってうっかり間違った回答をしてしまう」ことや「過去の細かい記憶があいまいなこと」は当然あります。
もし調査後に「あっ、間違えた!」「思い出した!」ということがあっても、それが「うっかり忘れ」である合理的な理由を税理士と一緒にロジカルに説明できれば、重加算税を防ぐことは十分に可能です。
⚠️ 税務調査での鉄則 記憶が少しでもあいまいな質問に対しては、その場で適当に答えないこと
「うろ覚えで答えて後から間違っていた」となると、無用な『虚偽答弁』の疑いをかけられて面倒な交渉になります。覚えていないときは、「ハッキリ覚えていないので、後で過去の資料を確認してから回答します」と伝え、一度持ち帰るのが最も安全で正しい対応です。
🔗 関連コラム:税務調査にはどのように対処すべきか。
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