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個人事業主の税務調査で課せられる重加算税について
税務調査の相談は、顧問税理士のいない個人事業主の方からが一番多いです。そして、個人事業主からの相談でよく聞かれるのが、自分は重加算税の対象になってしまうのかです。そこで、今回は、個人事業主の重加算税について、国税庁の指針を参考に説明します。
国税庁の実務運営指針に下線を引きましたので、それぞれについて説明しますが、そもそも仮装隠蔽は絶対にしてはいけないという事を予めお伝えしておきます。税務調査は、仮装隠蔽がみつかると一気に調査が厳しくなりますし、重加算税になってしまうと税務調査の頻度も高まるため、悪い事しかありません。
【重加算税の具体例】は
- 配偶者による不正
- 2重帳簿の作成
- 帳簿書類の破棄や隠蔽
- 帳簿書類の改ざん
- 取引先に嘘の書類を作成させる
- 税務調査で嘘をつく
- まとめ
1.配偶者による不正
よくあるのは、ご主人は仕事、奥様が経理という役割分担があり、ご主人は全く経理にタッチしていないケースです。奥様が確定申告をする際に、ご主人には相談せずに売上除外等を行い、税金を不当に削減した場合、申告者であるご主人は、不正に全く関与していませんが、配偶者が不正に関与しているため、重加算税の対象となります。本当か嘘かは別として、「俺は不正に関与しておらず、妻が勝手にやったんだ!」という論理で回避しようとしてもダメですよという事です。
そもそもの話をすると、配偶者が確定申告書の作成・提出をすることはできません。法律的には、税理士か本人しかダメというたてつけです。とはいうものの、税務調査でその点を突っ込まれたことは1度しかありません。その突っ込まれたケースも、経理の知識のある友人に確定申告書を作成してもらっていたケースであり珍しいパターンです。よくある配偶者が作成する場合については、1度も突っ込まれたことはありません。
2.2重帳簿の作成
私が実務で関与した税務調査では、今のところないです。理由としては、これまで税理士が関与していないため、そもそも帳簿を作成していない方が多いためです。2重帳簿を作成する理由は、外部公開用の嘘の帳簿と社内用の正しい帳簿を使い分けることであり、当然に仮装行為がありますので、重加算税の対象になります。
3.帳簿書類の破棄や隠蔽
よくあるのは、現金売上の領収書の破棄又は隠匿、売上が入金される銀行口座の隠匿です。売上口座がばれないようにするにはどうしたらいいですか?といった質問を時々受けますが、そもそも、税理士は不正に加担できないため、アドバイスはできません。因みに、税務署は、銀行に納税者の口座の有無を問い合わせることができるため(例えば、A銀行に問い合わせる場合、近くの支店だけでなく、全支店に紐づく口座を確認します)、バレる可能性が高いと考えておいた方がよいでしょう。
4.帳簿書類の改ざん
よくあるのは、架空経費の偽装です。例えば、外注費などの金額の大きい経費を架空計上した場合、仮に領収書等(偽装したもの)があったとしても、税務署は不正の可能性を考慮し、外注先へ反面調査に行く場合もあり、バレる可能性が高いと考えておいた方がよいでしょう。特に現金払いの外注先については、領収書の偽装は難しくないため、反面調査も行われることを想定しておきましょう。
5.取引先に嘘の書類を作成させる
元請に対しては、力関係から虚偽の帳簿書類を作成させるのは難しいため、下請けに対して虚偽の帳簿書類を作成させるケースが考えられます。これも反面調査に行かれるとバレる可能性が高いです。なぜなら、反面調査に行った際に、下請けの売上帳も確認するため、その売上帳と虚偽の帳簿書類が整合しない可能性が高いためです。下請けは、力関係から帳簿書類の偽装には協力したものの、自分の確定申告では不利になるようにはしないでしょうから。
6.税務調査で嘘をつく
虚偽の答弁等を行い、かつその他事実関係を総合的に判断して、不正が合理的に推認できたら重加算税と記載されています。不正を合理的に推認することは意外と難しいため、実務で問題となるのは、税務調査において嘘をつき、それがばれたら重加算税ですよという話です。税務調査で嘘をつくのは戦略としても誤っており、嘘をつく位なら、嘘をつかなくて良いように事前に修正申告をすることも検討してください。事前の修正申告については、以下のコラムを参考にしてください。
7.まとめ
国税庁が出している事務運営指針に基づき、重加算税の対象となるような事例を取り上げました。納税者が、今回取り上げたことをもし行っているのであれば、税務調査ではバレると思ってください。最初にお伝えしましたが、不正はダメです。そもそもダメですが、費用対効果的にもダメな戦略です。不正はバレるものと考え、不正のない確定申告をするよう心掛けてください。また、過少申告の意図はあったものの、重加算税が課されなかった事例がありますので、その事例については以下のコラムをご覧ください。
重加算税が課される可能性がある案件は、最終的に税理士に依頼しなかったとしても、事前に相談はしておいた方がよいです。当税理士事務所は最初の相談は無料で受けています。そして、税務調査の立会いを依頼した場合の料金などはこちらをご覧ください。広告を出していない分、他の税理士よりも価格を安く設定しています。
申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)
標題のことについて、国税通則法(以下「通則法」という。)第 68 条第1項若しくは第2項又は第4項の規定の適用に関し留意すべき事項等を下記のとおり定めたから、今後処理するものからこれにより取り扱われたい。
(趣旨)
申告所得税及び復興特別所得税の重加算税の賦課に関する取扱基準の整備等を図ったものである。第1 賦課基準
(隠蔽又は仮装に該当する場合)
1 通則法第68条第1項又は第2項に規定する「国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し」とは、例えば、次に掲げるような事実(以下「不正事実」という。)がある場合をいう。なお、隠蔽又は仮装の行為については、特段の事情がない限り、納税者本人が当該行為を行っている場合だけでなく、配偶者又はその他の親族等が当該行為を行っている場合であっても納税者本人が当該行為を行っているものとして取り扱う。
⑴ いわゆる二重帳簿を作成していること。
⑵ ⑴以外の場合で、次に掲げる事実(以下「帳簿書類の隠匿、虚偽記載等」という。)があること。
① 帳簿、決算書類、契約書、請求書、領収書その他取引に関する書類(以下「帳簿書類」という。)を、破棄又は隠匿していること。
② 帳簿書類の改ざん、偽造、変造若しくは虚偽記載、相手方との通謀による虚偽若しくは架空の契約書、請求書、領収書その他取引に関する書類の作成又は帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装を行っていること。
③ 取引先に虚偽の帳簿書類を作成させる等していること。
⑶ 事業の経営、売買、賃貸借、消費貸借、資産の譲渡又はその他の取引(以下「事業の経営又は取引等」という。)について、本人以外の名義又は架空名義で行っていること。ただし、次の①又は②の場合を除くものとする。
① 配偶者、その他同居親族の名義により事業の経営又は取引等を行っているが、当該名義人が実際の住所地等において申告等をしているなど、税のほ脱を目的としていないことが明らかな場合
② 本人以外の名義(配偶者、その他同居親族の名義を除く。)で事業の経営又は取引等を行っていることについて正当な事由がある場合
⑷ 所得の源泉となる資産(株式、不動産等)を本人以外の名義又は架空名義により所有していること。ただし、⑶の①又は②の場合を除くものとする。
⑸ 秘匿した売上代金等をもって本人以外の名義又は架空名義の預貯金その他の資産を取得していること。
⑹ 居住用財産の買換えその他各種の課税の特例の適用を受けるため、所得控除若しくは税額控除を過大にするため、又は変動・臨時所得の調整課税の利益を受けるため、虚偽の証明書その他の書類を自ら作成し、又は他人をして作成させていること。
⑺ 源泉徴収票、支払調書等(以下「源泉徴収票等」という。)の記載事項を改ざんし、若しくは架空の源泉徴収票等を作成し、又は他人をして源泉徴収票等に虚偽の記載をさせ、若しくは源泉徴収票等を提出させていないこと。
⑻ 調査等の際の具体的事実についての質問に対し、虚偽の答弁等を行い、又は相手先をして虚偽の答弁等を行わせていること及びその他の事実関係を総合的に判断して、申告時における隠蔽又は仮装が合理的に推認できること。(帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合)
2 次に掲げる場合で、当該行為が、相手方との通謀による虚偽若しくは架空の契約書等の作成等又は帳簿書類の破棄、隠匿、改ざん、偽造、変造等によるもの等でないときは、帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない。
⑴ 収入金額を過少に計上している場合において、当該過少に計上した部分の収入金額を、翌年分に繰り越して計上していること。
⑵ 売上げに計上すべき収入金額を、仮受金、前受金等で経理している場合において、当該収入金額を翌年分の収入金額に計上していること。
⑶ 翌年分以後の必要経費に算入すべき費用を当年分の必要経費として経理している場合において、当該費用が翌年分以後の必要経費に算入されていないこと。第2 重加算税を課す場合の留意事項
(通則法第68条第4項の規定の適用に当たっての留意事項)
通則法第68条第4項の規定の適用に当たっては、次の点に留意する。
⑴ 通則法第119条第4項の規定により無申告加算税又は重加算税の全額が切り捨てられた場合には、通則法第68条第4項に規定する「無申告加算税等を課され、又は徴収されたことがあるとき」に該当しない。
⑵ 源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税とこれ以外の所得税及び復興特別所得税は同一税目として取り扱わない。第3 重加算税の計算
(重加対象税額の計算の基本原則)
1 重加算税の計算の基礎となる税額は、通則法第68条及び国税通則法施行令第28条の規定により、その基因となった更正、決定、修正申告又は期限後申告(以下「更正等」という。)があった後の所得税及び復興特別所得税の額から隠蔽又は仮装されていない事実のみに基づいて計算した所得税及び復興特別所得税の額を控除して計算するのであるが、この場合、その隠蔽又は仮装されていない事実のみに基づいて計算した所得税及び復興特別所得税の額の基礎となる所得金額は、その更正等のあった後の所得金額から不正事実に基づく所得金額(以下「重加対象所得」という。)を控除した金額を基に計算する。
(重加対象所得の計算)
2 第3の1の場合において、重加対象所得の計算については、次による。
⑴ 必要経費として新たに認容する経費のうちに、不正事実に基づく収入金額を得るのに必要な経費と認められるものがある場合には、当該経費を不正事実に基づく収入金額から控除する。ただし、簿外の収入から簿外の必要経費を支出している場合において、簿外の収入に不正事実に基づく部分の金額とその他の部分の金額とがある場合には、当該簿外の必要経費は、まず、不正事実に基づく部分の金額から控除し、控除しきれない場合に限り、当該控除しきれない必要経費の金額を当該その他の部分の金額から控除する。
⑵ 過大に繰越控除をした純損失の金額又は雑損失の金額のうちに、不正事実に基づく過大控除部分とその他の部分とがあり、当該損失の金額の全部又は一部が否認された場合における重加対象所得の計算に当たっては、まず、不正事実以外の事実に基づく損失の金額のみが否認されたものとして計算することに留意する。すなわち、不正事実に基づく過大の純損失又は雑損失から順次繰越控除していたものとすることに留意する。なお、純損失の金額又は雑損失の金額は正当であっても、その損失を生じた年分の翌年分以後の年分において、不正事実に基づき所得金額を過少にすることにより、当該所得金額を過少にした年分の翌年分以後の年分に繰越控除した損失の金額を否認した場合には、不正事実に基づく純損失又は雑損失を繰り越していたものとみなして重加対象所得の計算を行うこととする。国税庁HPより抜粋。下線は、コラム作成者による。
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