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フリーランスのシステムエンジニアの経費はどこまで?
公認会計士・税理士の仕事をする前に、システムエンジニアとして働いていました。私の主担当は、24時間365日稼働している工場のシステムだったため、システムを止められないというプレッシャーが半端なかったです。1つでもバグがあるとシステムが停止することもあり得ます。そして、工場は年末年始の1日しか停止しないため、その間にシステムの入れ替え等を行なっていることもあり、年末年始の休みがありませんでした。退職後、年末年始を休めるようになったため、なんだか違和感を感じた記憶があります。
その頃、私は、協力会社とチームを組んで働いていましたが、フリーランスのシステムエンジニアと働くことはありませんでした。しかし、最近は、フリーランスの方が増えているようです。上場しているIT企業の法定監査を担当していますが、実際にフリーランスを活用しています。そこで、今回は、フリーランスのシステムエンジニアの税務について紹介します。
【目次】
- システムエンジニアは税務調査で狙われやすい
- システムエンジニアの経費とは
- システムエンジニアの経費率の目安はどれくらい?
- まとめ
1.システムエンジニアは税務調査で狙われやすい
システムエンジニアが狙われているのは、令和元年の税務調査実績(1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種)をみれば明らかです。システムエンジニアは例年上位をキープしている以上、税務署も税金が取れやすい業種と認識している事になります。今後もほかの業種と比較すると、狙われやすいと考えておきましょう。
順位 | 業種 | 前年順位 |
1 | 風俗業 | 1 |
2 | 経営コンサルタント | 3 |
3 | キャバクラ | 2 |
4 | 太陽光発電 | – |
5 | システムエンジニア | 4 |
6 | 土木工事 | 13 |
7 | ダンプ運送 | 8 |
8 | タイル工事 | 20 |
9 | 冷暖房設備工事 | – |
10 | 清掃業 | – |
2.システムエンジニアの経費とは
どうして、税務調査に狙われやすいのでしょうか。理由は経費と考えます。税務署は、システムエンジニアの経費はかなり少ないと認識しています。システムエンジニアのビジネスモデルを考えれば、まぁそうだよねと私も思います。売上に対する経費率があまりに大きい申告書が見つかれば、「かなり税金取れる!」と税務署は考え、税務調査の選定対象になることでしょう。そして、多額の追徴課税を受けるというのが、上位にくる理由と考えます。
システムエンジニアの方も、税務調査で厳しい結果になりがちという事を把握しているらしく(知り合いが税務調査に入られて多額の税金をとられた等)、どこまで経費にできる?とよく聞かれます。そこで、今回はシステムエンジニアの経費について考えてみます。まずは、経費になりそうな項目を挙げてみました。
- 消耗品費・・・プリンタ、プリンターインク、事務用品全般
- 固定資産・・・パソコン(青色申告であれば、30万円未満は一括で経費処理可能)
- 旅費交通費・・・移動代
- 通信費・・・携帯代、サーバー利用料、ネット利用料
- 研修費・・・研修受講料
- 新聞図書費・・・仕事に関する書籍
- 接待交際費・・・クライアントとの打ち合わせ、接待
- 会議費・・・喫茶店等で仕事をした際の飲み物代
これらは一般的な経費ですので特に問題ないと思います(携帯などの家事按分は忘れずに)。それ以外で経費処理できそうなものを検討します。
- 交際費・・・仕事に必要な人たちとの飲食代
- 地代家賃(家事按分)
- 水道光熱費(家事按分)
- 固定資産・・・車
- 車両費・・・ガソリン代
- 旅費交通費・・・駐車場代
交際費は、税務調査でもよく論点になります。交際費は、クライアントとの打ち合わせや接待だけでしょうか。私はそのように考えていません。例えば、友人であったとしても仕事に必要であれば、経費になると考えます。今抱えているトラブルを同業の友人に相談しているのであれば、それは経費になるはずです。相談した結果、そのトラブルが解消され、クライアントの満足度が高まれば、契約継続という売上にもつながります。それ以外にも、売上を拡大するには、クライアント数を増やしていく必要があります。その営業活動として、今時点では仕事に直接関係しない人との飲食についても経費だと考えます。税務署の調査官の中には、今の仕事と関わっていない人との飲食は経費じゃないと主張する人と時々遭遇しますが、そこは必ず交渉してください。ともかく、交際費を経費として認めてもらうには、事業に必要であるという理屈が大切です。相談を受けた相手にもこの原則基づきアドバイスをおこなっています。ですので、その点を整理する際に、税理士を活用して頂くとよいと思います。また、個人事業主の経費について整理したコラムがありますのでこちらも参考にしてください。
税務調査で問題となる個人事業主の経費について。事業との直接関連性とは
地代家賃や水道光熱費も自宅で仕事をしているのであれば、家事按分をした上で経費処理できます。最近は、クラウド上で、データのやり取りは当然ですが、クライアントのシステム管理も可能となり、システムエンジニアもクライアント先に常駐することなく、自宅での作業も可能になっています。富士通は、テレワークへ移行しているというニュースもありましたし、家賃の一部を経費にしても何ら問題ないと思います。勿論、実態が伴っている必要があります。税務署の調査官は、相手の事業を理解するという視点があまりありませんので、皆さんの事業に対する調査官の理解が乏しい場合はしっかりと主張しましょう。
車をお持ちの方も仕事で使用しているケースはあるのではないでしょうか。クライアント先に車で行くこともあると思います。そういった実態があれば、車の減価償却も可能ですし、付随してガソリン代や駐車場代も経費処理が可能です。勿論、ここでも家事按分は必要です。
3.システムエンジニアの経費率の目安はどれくらい?
これもよく聞かれます。私が相談を受けたケースで考えると、かなり幅があります。理由は、自宅を経費にできる人や車の減価償却がある人などは経費率は高めだったりするので。一つ指針となるのは、消費税の簡易課税制度です。簡易課税制度の説明は割愛しますが、この制度では、システムエンジニアの経費率を50%と設定しています。ですので、50%が一つの目安になると思います。
4.まとめ
今回はシステムエンジニアの経費についてお伝えしました。収入については何ら触れていませんが、不正の意図がない限り、収入はそうそう間違えないはずです。収入については確実に正しい数値を集計し、経費は事業に必要であるという理屈がつく限り、経費処理することで、適正な納税を心がけてください。また、フリーランスのシステムエンジニアを使う側の視点ですが、システムエンジニアへの支払いが外注費になるのか給与になるのかについてもコラムを書いていますので、参考にしてください。
フリーランスのシステムエンジニアへ支払った報酬は外注費か給与か
最初にお伝えした通り、私はもともとシステムエンジニア出身です。また、現在も公認会計士としてシステム会社やゲーム開発会社に関わっています。システムがわかる税理士は非常に少ないと思います。当税理士事務所には、事務所は愛知県名古屋市ですが、東京にもシステムエンジニアの顧客がいますし、全国対応しています。是非、顧問税理士を探している方は、ご相談ください。