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2021.10.29 コラム解決事例(税務調査)

税務調査では、納税者に有利な情報は教えてくれない

ある企業に税務調査が入ったあとに、税務署がその企業の外注先を矢継ぎ早に税務調査の対象にすることは良くあります。そのことは、皆さんよくご存じなので、元請に税務調査が入ったことを知ると、ちょっとやばいかもと思っている事業者は、私たちのような税理士に相談にいらっしゃいます。今回は、このように税務調査が同時進行(もしくは近い時期)で動いている状況下で、納税者に有利な情報が入ってこない点についてお伝えします。

【目次】
  1. 元請の税務調査と同時に狙われる外注先とは
    1. 売上が元請の外注費と一致しない
    2. 無申告であった
  2. 元請の税務調査の結果は教えてくれない
    1. 外注先(下請け)に不利な情報
    2. 外注先(下請け)に有利な情報
  3. キックバックの事例
  4. まとめ

1.元請の税務調査と同時に狙われる外注先とは

先日、10月に法人成りする方と会社設立の手続きを進めるために(freee会社設立を利用しています)、打ち合わせをしました。その方は数年前に税務調査に選定され、私が新規で立ち会ったのですが、彼が税務調査に選定された理由は、そのちょっと前に元請に税務調査が入ったからである可能性が極めて高いです。その理由を今からお伝えします。

1.売上が元請の外注費と一致しない

私の顧問先の場合は、これが原因である可能性が高いです。つまり、顧問先が計上した売上金額と元請が計上した外注費が一致していないことに税務調査が気づいたからです。白色申告の場合、収支内訳書において取引先上位の売上金額を記入する欄があります。その金額と一致していなかったのでしょう。当顧問先の場合、意図して過少に売上計上していた訳ではなく、売上から仕入を差し引いた純額で売上計上していたことが要因です。そのため、追徴課税もほとんどありませんでした。

同じ元請の下で働いていた他の事業者も税務調査に入られ、真実の売上3,000万円、申告売上900万円だったらしく、国税の追徴課税だけで500万円は優に超えたようです。それだけ誤魔化していれば、それ位の納税額にはなると思います。税務調査の立会いに税理士をつけなかったようなので、重加算税が課されている可能性も高いです。

2.無申告であった

元請に税務調査が入って無申告であることがバレるというのは、典型的なバレるパターンです。無申告でバレるパターンは以下のコラムで整理しましたので、参考にしてください。

無申告のままでも税務署にバレないのでは?

2.元請の税務調査の結果は教えてくれない

元請の税務調査の結果が、外注先(下請け)の税務調査にどのような影響を及ぼすのでしょうか。これからお伝えするのは、絶対という訳ではなく私の経験に基づいています。

1.外注先(下請け)に不利な情報

税務署が、元請の税務調査で得た外注先にとって不利な情報は、外注先の税務調査に当然のように反映されます。元請の税務調査の結果、この外注先に狙いを定めているという事は、不利な情報があるからこそとも言えるためです。

2.外注先(下請け)に有利な情報

不利な情報とは異なり、反映されない可能性が高いです。税務署からすると、税金が減る要因をわざわざ伝える意味がないからです。ここでは守秘義務という使い勝手の良い理屈がでてきます。私たちが、元請の税務調査の結果を税務署や国税局の担当者に聞いても、この守秘義務を盾に教えてくれません。正直、この点は仕方がないです。当税理士事務所であっても、顧問先の情報を元請などの取引先から教えてくれといわれても教えるわけがないからです。これも守秘義務です。

この不利な情報が反映されない結果、片方が収入として処理しているのに、もう片方で経費として処理しないという事が起こり得ます。本当はおかしいのですが、私たちが気づかないだけで税務調査の実務では普通にあるのだと思います。

私が過去に携わった外注先(下請け)の税務調査では、その下請けを経由して元請の税務調査の結果を得ることができたため、元請が売上処理しているなら、当然こちらは経費処理できますよね!という理屈で、多額の経費を追加計上できたことがあります。これに気づいたことで、追徴課税を大幅に減らすことができました。これは本当にレアケースだと思います。こちらが言わなければ、税務署・国是局側は何も言ってくれなかったはずですから。建前は守秘義務が理由です。実際は、わざわざ税金が減るような事実を伝えないという見方もできます。

3.キックバックの事例

電話相談で終わったので税務調査の顛末は不明ですが、こういった事例がありました。国税局の資料調査課の案件です。毎年のように同じような電話相談を受けるので、よくある話です。具体的には、元請の従業員が下請けからキックバックを受けている事例ですが、時系列は以下のような感じです。年度は事実と相違します。

1.2015年に下請けに税務調査
元請の従業員に対してキックバックしていたため、会社から多額の資金が流出していた。その資金流出について、今後も取引継続するためにもキックバックしたことは言えないので、自分で使った主張。その結果、給与認定され、相当の追徴課税を支払った。

2.2016年に元請に税務調査
従業員がキックバックしたことがバレる。調査官は、このキックバックを元請の収入として認定しようとします。このキックバックについては、元請である会社の収入か、従業員の所得かという論点と、重加算税の論点があるのですが、それは別のコラムで整理しています。

ここでお伝えしたいのは、キックバックについて元請が収入として認定された結果、下請けが給与認定を認め自らも被ったにも関わらず、それが無駄になったことです。推測するに、定期同額給与ではないので全額法人の経費として処理できず、多額の所得税も払ったはずです。まさしく踏んだり蹴ったりという訳です。従って、キックバックは、バレたときのインパクトが大きすぎるので(最終的には、取引を失う可能性が高い)、やめた方が良いのですが、業界によってはなかなか難しいようです。

仮に、税務調査の順番が元請⇒下請であれば、既に元請にバレている可能性が高いため、隠す必要もなく、キックバックした金額を給与認定ではなく交際費として処理してもらうよう交渉することができたかもしれません。といっても、交際費が経費として認めてもらえる状況であることが大前提なので、交渉の仕方はとても気を付ける必要はありますが。交際費の論点については以下のコラムをご覧ください。下請が個人事業主だったら、交際費の限度額がないので助かるかもしれません。

交際費はうまく使いこなす。飲食費について。

4.まとめ

今回はまとまりにかける文章になってしまいましたが、お伝えしたかったのは、税務署・国税局は、納税者に有利な情報は教えてくれないという事を知っていてほしいという事です。取引先との関係で微妙な事実関係(キックバックなど)があり、その事実関係によって調査結果に違いが出るような状況だったとします。その状況下で追徴課税を減らしたいのであれば、自ら情報を入手しなければなりませんが、できることは限られるので難しいのが実情です。特に下請の場合、元請の税務調査結果を知ることができるかと言われると、できない事の方が多いはずですから。

 

 

 

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