お知らせ・コラム
News & Column
妻への給与は不相当に高額で否認?税務調査の実例と防衛策
「同族企業で、役員になっていない社長の妻(配偶者)に『従業員給与』を払っているが、税務調査で否認されないだろうか?」
多くのオーナー企業で節税策として活用されている親族への給与支払いですが、法人税法第36条(過大な使用人給与の損金不算入)により、「職務内容に対して不相当に高額である」と判定された部分は、会社の経費(損金)として認められません。
もし過大と判定されると、超えた部分の経費が否認され、過去数年分に及ぶ法人税や過少申告加算税が課されることになります。
今回は、親族従業員への給与が「不相当に高額」とされる判定基準と、実際の税務調査で調査官から追及された際の防御策について分かりやすく解説します。
【目次】
- なぜ親族への「高額給与」は法律で制限されているのか?
- 税務調査で「不相当に高額」とされる4つのチェック要件
- 月20万円の妻への給与でATMカメラまでチェックされた税務調査
- まとめ:親族給与の金額設定に不安があれば事前の作戦構築を
1.なぜ親族への「高額給与」は法律で制限されているのか?
法人税法上、役員の親族や事実婚関係にある者などを「特殊関係使用人(法人税施行令第72条)」と規定しています。
会社のお金を身内へ自由に給与として吐き出させると、実態のない不当な税金逃れ(利益調整)が横行してしまうためです。
そのため、親族従業員に支払う給与のうち「業務の対価として相当と認められる金額」を超えた不相当な部分は、全額損金不算入(経費化不可)とするルールが設けられています。
2.税務調査で「不相当に高額」とされる4つのチェック要件
税務調査において、親族給与が「適正か・過大か」を判定する際、調査官は以下の4つの項目(法人税施行令第72条の2)から総合的に判断します。
① 従業員の職務内容(仕事の実態)
経理や書類整理などの事務作業しか行なっていない妻に対して「月100万円」を支払っている場合、同等の作業を行う他社社員(月20〜30万円程度)と比較して職務内容と給与が見合っていないため、一発で否認対象となります。
② 法人の収益状況(赤字か黒字か)
会社が継続して赤字に苦しんでいる中で、親族にだけ高額な給与を払い続けている場合、正当な経済合理性がないとして強く追及されます。
③ 他の一般従業員への給与水準
同等の職務を行っている他人の従業員には月20万円しか払っていないのに、社長の親族という理由だけで月80万円を支払っている場合、その差額は否認されます。
④ 同規模・同業他社の給与相場
地域や業界の平均的な人件費相場から大きく乖離している場合もターゲットとなります。
▼親族給与の過大判定基準と税務調査の防衛ポイント表
| チェック項目 | 税務調査で否認されるリスクが高いケース | 否認を防ぐ防衛ポイント |
|---|---|---|
| ① 職務内容との均衡 | 経理・書類整理程度の手伝いに対し、月50万〜100万円などの高額給与を支給。 | 世間の事務職求人相場(月20〜30万等)に合わせた設定にする。 |
| ② 他の社員との比較 | 同じ業務を行う一般社員には月20万円、親族にだけ月60万円を支給。 | 仕事量や責任の重さに応じた合理的な差額であることを説明する。 |
| ③ 勤務実態の証明 | タイムカードや出勤簿がなく、実際には働いていない(架空人件費)と疑われる。 | 出勤簿・振込履歴・業務日報など「実態の証拠」を残しておく! |
3.月20万円の妻への給与でATMカメラまでチェックされた税務調査
当事務所が立ち会った名古屋市の建設業法人(税務調査)の事例をご紹介します。
この会社では、社長の奥様に「月20万円」の給与を支払っていました。主な業務は領収書の整理や備品購入、外注先への振り込み作業などです。
調査官が銀行の「ATM防犯カメラ」まで調査に行った理由
調査官は「本当に奥様が働いている実態があるのか」「単なる名義貸し(架空人件費)ではないか」を疑い、週何日働いているか、どこで振込作業をしているかを根掘り葉掘りヒアリングしました。
さらに、「本当に奥様が銀行のATMで振り込みを行ったか確認するため、銀行へ反面調査に入り、防犯カメラの映像データまでチェック」を行いました(※重加算税を課すための証拠探しのためです)。結果的には嘘ではなかったようです。
当事務所が調査官の否認要求を跳ね返したポイント
当事務所は調査官に対して「否認されたいようですが、ではこの仕事内容で『いくらが妥当なのか』の明確な根拠を提示してください」と毅然と追求した結果、最終的に月20万円の給与は1円も否認されずに満額認められました。そもそも月20万円と金額が小さかったことも認められた要因ですが。
🔗 関連コラム:架空人件費に重加算税?理不尽な主張を退けた交渉|名古屋市の建設業の法人税務調査
4.まとめ:親族給与の金額設定に不安があれば事前の作戦構築を
今回は、親族従業員への給与が「不相当に高額」とされるリスクと税務調査の防衛策について解説しました。
実務上、月20万円程度の給与であっても、調査官(および統括官)によっては調査のターゲットとして厳しく突っ込んでくるのが税務調査の現実です。
「親族に支払っている給与額が相場より少し高いかもしれない」と懸念される場合は、税務調査の連絡が入る前段階から、勤務実態の記録(出勤簿や業務日報)を残し、根拠ある金額設定へ見直しておくことが不可欠です。
梁瀬会計事務所では、同族企業・オーナー企業向けに親族給与の適正診断や、税務調査時の論理的な否認回避交渉を行っております。
「親族給与の金額設定が妥当か相談したい」「税務調査で妻の給与を否認されそうで困っている」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。
今回のコラムでは役員ではない奥様への給与支払額に焦点を当てましたが、もう1つ重要な論点があります。今回のように形式上は役員ではなかったとしても、実質的には役員であると認定されるケースです。このケースについては以下のコラムで取り上げましたので参考にしてください。
🔗 関連コラム:社長の親族への給与はみなし役員で否認?税務調査の防衛策