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2021.05.24 コラム解決事例(税務調査)

みなし役員の税務調査での留意点

オーナー企業の場合、そのオーナー(株主)の親族が、役員としてではなく従業員として給与を受け取っているケースが結構あります。もしくは、役務提供の対価として外注費を受け取っている場合もあるかもしれません。この給与や外注費については、法人に対する税務調査ではよく問題になるため、税務調査対策を予め講じておく必要があります。

【目次】
  1. 税務調査で否認される論点
  2. 役員の範囲
  3. 税務調査の流れ
  4. まとめ

1.税務調査で否認される論点

このオーナー(株主)の親族がみなし役員として認定されてしまい、支払った給与や外注費が役員報酬となってしまい、①定期同額給与を満たさない②仕入税額控除を適用できない、という指摘を受ける場合があります。これは税額への影響が大きいため避けなければなりません。

2.役員の範囲

従業員や外注先である者を役員と認定する場合、役員の範囲を明確にしなければなりません。使用人で役員とみなされる要件は次に掲げる全ての要件を満たす者で、かつ会社の経営に従事しているものとされています。

  1. 株主グループ1~3順位まで合計した場合、所有割合50%超となる株主グループに属している
  2. その使用人の所属する株主グループの所有割合が10%超
  3. その使用人(配偶者及びこれらの者で所有割合50%超の会社を含む)の所有割合が5%超

株主グループとは、その会社の一の株主等及びその株主等と親族関係など特殊な関係のある個人や法人とされており、株主等の親族(配偶者、6親等内の親族、3親等内の婚族)、株主等の内縁関係のある方などです。そして、中小企業の場合、社長が大株主である場合がほとんどですが、そのケースで配偶者、両親、子供等に払っている場合は、当然に対象になります。そのため税務調査で問題になりがちです。

3.税務調査の流れ

役員の範囲でお伝えしたとおり、株主グループという形式的な要件会社の経営に従事しているという実質的な要件の両方を満たして初めて使用人がみなし役員と認定されますので、それぞれについてみていきます。税務調査でもそれぞれについて確認されます。

1.株主グループという形式要件

役員の範囲について株主グループで判断する場合、規程が明確なので税務調査でもあまり論点になりません。注意点としては、税務署の職員によってはこの形式要件のみでみなし役員と認定してくる場合があるため、「いやそれだけで判断はできないでしょ!会社経営に従事するという実質要件を満たしているとどう判断するんですか?」と反論しなくてはいけません。つまり、税務調査では実質要件を満たすか否かで戦うことになります。

2.会社経営に従事するという実質要件

会社の経営に従事しているという点については、税法上明確な定義がありません。だからこそ税務調査ではよく問題になります。会社の事業経営の意思決定は取締役会で決議されますが、取締役会の権限(=取締役に委任できない権限)について、会社法は以下のように規定しています。

  1. 重要な財産の処分及び譲受け
  2. 多額の借財
  3. 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  4. 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  5. 第六百七十六条(募集社債に関する事項の決定)第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
  6. 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
  7. 第四百二十六条(取締役等による免除に関する定款の定め)第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条(役員等の株式会社に対する損害賠償責任)第一項の責任の免除

つまり、取締役会で決定すべき事項が列挙されている以上、その決定に使用人が関わっている場合、実質的には会社経営に従事しているといえるため、みなし役員とみなされる可能性が極めて高くなります。国税不服審判所の裁決例などをみると、やはり会社の事業経営の意思決定に関わっているか否かが重要視されているようです。例えば、会社の経営方針の決定、主要取引先(販売、仕入など)の選定、取引銀行の選定、借入計画の策定などです。そのため使用人として給与を払っている親族がいる場合、このような重要事項の意思決定に関わっているか否か、予め検討しておく必要があります。

4.まとめ

使用人がみなし役員に認定されるか否かは、会社の経営に従事しているか否かにかかっています。当然、税務署は会社の経営に従事していると認定するために、当事者にヒアリングしたり直接的な証拠を得ようとします。しかし、使用人が取締役会に参加することはありませんし(取締役会議事録にも参加者に名前はないはず)、会社経営に従事している直接的な証拠って意外とないものです。つまり、税務署側も会社経営に従事している実質的な証拠を入手することは難しいです。だからこそ税務署からみなし役員の認定をされたとしても、安易に妥協する必要はないと考えます。明らかに会社経営に従事している証拠があれば、仕方ありませんが。

 

No.5200 役員の範囲(国税庁HP)

役員とは次の者をいいます。
1 法人の取締役、執行役、会計参与、監査役、理事、監事及び清算人
2 1以外の者で次のいずれかに当たるもの
(1) 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)以外の者で、その法人の経営に従事しているもの
なお、「使用人以外の者で、その法人の経営に従事しているもの」には、例えば、丸1取締役又は理事となっていない総裁、副総裁、会長、副会長、理事長、副理事長、組合長等、丸2合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員、丸3人格のない社団等の代表者又は管理人、又は丸4法定役員ではないが、法人が定款等において役員として定めている者のほか、丸5相談役、顧問などで、その法人内における地位、職務等からみて他の役員と同様に実質的に法人の経営に従事していると認められるものも含まれます。
(2) 同族会社の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限ります。)のうち、次に掲げる全ての要件を満たす者で、その会社の経営に従事しているもの
イ その会社の株主グループ(注1)をその所有割合(注2)の大きいものから順に並べた場合に、その使用人が所有割合50%を超える第一順位の株主グループに属しているか、又は第一順位と第二順位の株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属しているか、あるいは第一順位から第三順位までの株主グループの所有割合を合計したときに初めて50%を超える場合のこれらの株主グループに属していること。
口 その使用人の属する株主グループの所有割合が10%を超えていること。
ハ その使用人(その配偶者及びこれらの者の所有割合が50%を超える場合における他の会社を含みます。)の所有割合が5%を超えていること。
(注1) 「株主グループ」とは、その会社の一の株主等及びその株主等と親族関係など特殊な関係のある個人や法人をいいます。
(注2) 「所有割合」とは、次に掲げる場合に応じて、それぞれ次に掲げる割合をいいます。
(1) その会社がその株主等の有する株式又は出資の数又は金額による判定により同族会社に該当する場合
その株主グループの有する株式の数又は出資の金額の合計額がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除きます。)の総数又は総額のうちに占める割合
(2) その会社が一定の議決権による判定により同族会社に該当することとなる場合
その株主グループの有する議決権の数がその会社の議決権の総数(議決権を行使することができない株主等が有するその議決権を除きます。)のうちに占める割合
(3) その会社が社員又は業務執行社員の数による判定により同族会社に該当する場合
その株主グループに属する社員又は業務執行社員の数がその会社の社員又は業務執行社員の総数のうちに占める割合

法人税法施行令

(同族関係者の範囲)

第四条 法第二条第十号(同族会社の意義)に規定する政令で定める特殊の関係のある個人は、次に掲げる者とする。
一 株主等の親族
二 株主等と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
三 株主等(個人である株主等に限る。次号において同じ。)の使用人
四 前三号に掲げる者以外の者で株主等から受ける金銭その他の資産によつて生計を維持しているもの
五 前三号に掲げる者と生計を一にするこれらの者の親族

会社法

(取締役会の権限等)
第三百六十二条 取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第六百七十六条第一号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第四百二十六条第一項の規定による定款の定めに基づく第四百二十三条第一項の責任の免除
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第六号に掲げる事項を決定しなければならない。

 

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