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イベント出展に係る支出はどこまで経費か
梁瀬会計事務所の顧問先には、絵師、漫画家や声優などの事業者がいます。以前、漫画家の税務調査に関するコラムを公開しましたが、今年もこのコラムをご覧になった個人事業主の漫画家数名から顧問契約の問い合わせがありました。
漫画家の税務調査…取材費、漫画購入、衣装代などは経費になるの?
顧問先の絵師や漫画家は、定期的にコミックマーケットのようなイベントに参加しています。そこでは自分の作品を販売したり、逆に他のクリエーターの作品を購入したりしています。仲間と会って情報交換もしているでしょう。ハンドメイドアクセサリーを制作している個人事業主に対して有料相談をしたことがありますが、その個人事業主も作品をイベントに出店していました。
そこで今回は、絵師や漫画家が参加するイベントに関連する経費についてお伝えします。
【目次】
- イベント出展に係る支出
- 出店費用
- 宿泊費
- 交通費
- その他諸経費
- イベントで販売した作品の売上
- まとめ
1.イベント出展に係る支出
1.出店費用
印刷代などと同じように、作品を販売するために直接必要な支出なので当然経費になります。勘定科目としては、広告宣伝費、販売促進費、支払手数料などで処理している方が多いです。
2.宿泊費
イベントは東京や大阪で開催されることが多いです。私の顧問先も名古屋駅から東京や大阪に移動していますので、日帰りでない限り宿泊費が発生します。この宿泊費も原則として経費処理して問題ありません。しかしながら、注意すべき点があります。顧問先から質問を受けた事項を整理しました。
例えば2泊3日の日程だとして、最後の1日はディズニーランドに友人と遊びに行くとします。そして、最後の1泊がディズニーランドに行くために宿泊している場合は、その宿泊はプライベート支出なので経費処理しないようにしましょう。
では家族と一緒に宿泊している場合はどうでしょうか。本人は完全に仕事のためで、それ以外の家族は旅行というケースです。この場合は、本人の宿泊分だけ経費処理しましょう。勿論、夜に合流して食事をした場合はそれも経費になりません。
3.交通費
当然経費です。宿泊費でもお伝えしましたが、家族と一緒に行った場合は自分の分だけ経費処理しましょう。また、最終日にディズニーランドに行ったとしても、東京駅から新浦安駅までの往復交通費は経費処理してはいけませんが、その日に東京駅から名古屋に帰宅した際の交通費は経費処理して問題ありません。
4.その他諸経費
それ以外にも様々な支出が発生します。商品を搬送するための梱包資材、ヤマト運輸の宅配便などの送料、販売サポートしてくれる人件費、差し入れなども当然経費処理して問題ありません。イベントを終えた後にスタッフや仲間と食事した場合の飲食代も経費処理してよいと思います。
2.イベントで販売した作品の売上
もれなく売上計上しましょう。そして、必ず何かしら証拠となるものを残しておきましょう。イベント売上は現金売上が多いこともあり、税務署も売上除外する可能性が高いと想定するので、しっかりと証拠を残し、適切に処理していますアピールの材料にしてください。
現金売上などの管理をエクセルなどでしっかりと管理していると、税務署もこの人はしっかりとしている方だとみてくれるので、税務調査がスムーズに進むことが多いです。
3.まとめ
今回は、絵師や漫画家が参加するイベントに関連する経費についてお伝えしました。今回は当たり前のことしか書いていませんが、経費処理できるか否かの大事な視点は、事業(今回はイベント出店)に関係しているか否かです。今回取り上げなかった支出についても、この視点に基づき判断して頂ければ問題ありません。
顧問先からイベントの実情などを聞きます。売れっ子作家でもない限り、作品がどんどん売れていくことはないそうです。そのため、今回取り上げたような経費を回収できないこともあるそうです。広告宣伝的な意味合いもかねてイベントに参加している面もあるので、赤字になる可能性が高くても参加しているとの事。
イベントにわざわざ足を運んで購入するのですから、熱狂的なファンが多いのは容易に想像できます。それはそれでありがたいことなのですが、作者を写真で撮影しようとする方も稀にいるそうです。例えば、顔出ししていない女性のBL作家の中には、写真撮影リスクも考慮してマスクを必ず着用している方もいると聞きました。今は簡単にSNSに晒されますので、本当に大変なお仕事です。