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税理士の視点での自計化の是非
最近、色々なところで自計化の精度がとても低い申告書が増えているという話を聞きます。私も同じ印象を持っています。これは、事業者、税理士、税務署といった関係者にとって不幸でしかありません。税理士の立場からすると、自計化の精度の低い方から「自計化できます!だから報酬安くしてください!」と言われたとしても受けません。精度の低い会計データをチェックするのは苦痛でしかありませんので、それを安くでやってと言われても、多くの税理士は受けないと思います。今後数年で監査難民ではなく税理士難民が増える気がしてなりません。
【目次】
- 税理士にとって自計化はリスクもある
- 自計化の実態
- 適当すぎる自計は仕事を受けない事も
- freeeの自計化で実際に困った事
- 精度の低い自計化の行く末
- まとめ
1.税理士にとって自計化はリスクもある
1.自計化の実態
税理士が関与していない、かつ自分で会計システムに入力しています!という方からの顧問契約の問い合わせや、税務調査の相談をうけることがあります。そして、その入力内容をみると衝撃を受けることも少なくありません。現預金がマイナスなんてのはよく見ますし、現預金が2千万円というケースもありました。実際は百万円もない方です。勿論、それなりの精度で自計化している方もいるのですが、現預金がマイナスといった印象が強すぎて記憶に残ってしまいます。
2.適当すぎる自計は仕事を受けない事も
当税理士事務所の場合、これまでハチャメチャな会計処理をされていたとしても、基本的な簿記の知識があるといった自計化できそうな方であれば、自計化前提の顧問契約を締結しています。その大前提としては、freeeでもマネーフォワードでも良いのですが、事業用の銀行口座やクレジットカードをシステムに登録して頂くこと、こちらがお願いしているルールに従ってもらう事です。大雑把な自計になってしまうと、こちらのチェックにものすごい時間を取られてしまい、ビジネスとして成り立たなくなるためです。
その結果、今の自計化の顧問先はみな精度がとても高いです。自計化が成功するか否かは最初の1年目にかかっているので、その期間はこちらもかなりの工数をかけていますが、その効果が出ているのだと思います。
3.freeeの自計化で実際に困った事
当税理士事務所の場合、自計化される顧問先の大部分がfreeeです。マネーフォワード、弥生会計を採用している方もいますが、割合的には少ないです。そのfreeeですが、自計化に関してリスクもあるような気がしています。
それは高度に自動化されている点です。これはメリットにもデメリットにもなり得ます。デメリットとしては、高度に自動化されているため、税理士がミスに気付いて訂正しようとしても、その訂正が色々なところに派生する可能性があり、訂正がとてもやりにくい点です。その影響度を本人に伝えないといけないし、この点がfreeeのデメリットです。普段使っている分には大きな効率化につながっているのでメリット面しか気づきませんでしたが、自計化チェックをして初めてこのデメリットを痛感しました。
2.精度の低い自計化の行く末
今はフリーランスなども増えており、freeeやマネーフォワードを使って自計化している方が増えているという実感があります。それはそれで良いのですが、以下のコラムでも少し取り上げましたが、簿記の知識がなさ過ぎて自分で自計化した決算書類が正しいかどうかも判断できず、ハチャメチャな申告書を提出する法人や個人事業主が増えている印象です(法人はさすがに少ないか)。ハチャメチャな申告書を提出してしまうと、税務調査を誘引しますのでデメリットしかありません。運よく税務調査前にやばいことに気付いたとしても、「自計化はします!チェックだけお願いします!」と税理士に依頼しても、集客に困っていない限り税理士は受けないです。報酬も安いでしょうし、全く割に合わないためです。
3.まとめ
事業者にとって自計化のメリットは大きいので、freeeやマネーフォワードのような素晴らしいシステムを活用して自計化に突き進むのはとても良いと思います。リアルタイムに自社の業績を判断することができるのですから。しかし、一定の簿記の知識は必要だというのが私の見解です。簿記の知識がないと、BSやPLが正しいのか否かという判断がとても難しい気がします。例えば、銀行口座とクレジットカードを登録すればあとはAIが何でもやってくれると誤解している人がいることからもそのように感じてしまいます。
また、自計化したくても自分でやると時間がかかってしまうのであれば自計化は諦めて税理士に依頼することをお勧めします。その時間が無駄だし、その時間を使って売上を上げた方が効率的です。