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2022.03.31 コラム

個人事業主が法人成りした際の手続

確定申告シーズンが終わりました。厳密にはまだ残っていますが本当に疲れました。この時期は2月決算の上場企業の期末監査真っ只中であり、忙しい日々が続いています。このコラムの公開日が3月31日なので3月決算の棚卸立会に行っている会計士も多いです。棚卸立会は現場によってはかなり過酷です。10分も居続けられないような冷凍庫にある在庫を数えたりとか。しかも不正が起きやすいので慎重にやらないといけないですし。

話がそれてしまいました。2021年に法人成りした顧問先が結構あるのですが、彼らの個人事業としての最後の確定申告を終えた後に、個人事業の廃業届等を提出しました。今回は個人事業主が法人成りした際の税務的な手続きについてお伝えします。

【目次】
  1. 税務署への提出資料
    1. 廃業届出書
    2. 所得税の青色申告の取りやめ届出書
    3. 消費税の事業廃止届出書
    4. 給与支払事務所等の廃止の届出書
  2. 個人事業税などの経費について
  3. まとめ

1.税務署への提出資料

1.廃業届出書

個人事業を開業した際、開業届を提出した人も多いのではないでしょうか。その逆で法人成り等で廃業した場合は廃業届を提出する必要があります。ルールでは廃業した日から1カ月以内に税務署に提出する必要があるのでご注意ください。忘れやすいという事もあり私も失念したことがありますが。

例えば、10月1日に法人成りした場合、9月30日に廃業するイメージがあると思いますが、それほど厳密に考える必要はありません。個人事業主は12月31日が区切りなので、12月31日基準で廃業すればよいと思います。また、廃業届を提出しないといつまでたっても税務署から確定申告書が届いてしまうので、必ず廃業届は提出しましょう。

法人成り(個人事業の廃業)した際の所得税の予定納税については別のコラムでまとめていますので、そちらをご覧ください。

個人事業を廃業しても所得税の予定納税は必要か?

2.所得税の青色申告の取りやめ届出書

青色申告で確定申告していた場合は、青色申告の取りやめ届出書の提出が必要です。この届出書も廃業届と同じタイミングで提出してしまえばよいでしょう。

3.消費税の事業廃止届出書

所得税に対する廃業届の消費税版というイメージです。一定以上の消費税を支払っている場合、翌年度に中間納税が必要になりますが、この届出書を提出しないと廃業後であっても中間納付しなければなりません。そしてその中間納付を取り戻すためにわざわざ消費税の確定申告が必要になります。そのような手間を回避するためにも、必ず事業廃止届出書を提出しましょう。事業廃止届出書を提出することで、中間納付を回避することができますので。

4.給与支払事務所等の廃止の届出書

個人事業主の中には、事業専従者や従業員を雇っている方がいます。その場合は給与支払事務所等の届け出を提出されていたと思いますので、それを廃止する手続きが必要です。こちらも廃業届と一緒に提出しましょう。

5.所得税等の減額申請書

こちらが一番忘れやすい手続きです。一定以上の所得がある場合、翌年度に予定納税が必要になります。廃業した場合も同様で、この所得税等の減額申請書を提出しないと廃業したにもかかわらず予定納税が発生しますので必ず提出してください。注意点としては提出時期です。予定納税の1期分と2期分どちらも回避したい場合は、7月1日から7月15日の期間で提出する必要がありますのでご注意ください。

2.個人事業税などの経費について

事業を廃止した場合の必要経費の特例が所得税法63条に明記されています。詳細は国税庁ホームページを確認いただきたいのですが、実務でよくあるのは個人事業税の処理です。個人事業税は経費として処理できますが、実際に支払った際に経費処理します。つまり翌年度に経費処理することが可能です。

となると、例えば2021年に廃業した場合、2021年の所得にかかる個人事業税は2022年に確定します。いつも通りの方法で経費処理すると、2022年に発生する個人事業税が経費処理できなくなってしまうので、特例として2021年に経費処理することが認められています。計算方法については、ネットで検索すると出てきますので参考にしてください。

(事業を廃止した場合の必要経費の特例)
第六十三条 居住者が不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を廃止した後において、当該事業に係る費用又は損失で当該事業を廃止しなかつたとしたならばその者のその年分以後の各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額が生じた場合には、当該金額は、政令で定めるところにより、その者のその廃止した日の属する年分(同日の属する年においてこれらの所得に係る総収入金額がなかつた場合には、当該総収入金額があつた最近の年分)又はその前年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する

3.まとめ

今回は、個人事業主が法人成りした場合の諸手続きについてお伝えしました。これらの手続きは失念していても大きな問題はないのですが、個人事業を廃業したのに確定申告書の書類が届き続けるのは嫌でしょうし、予定納税も回避したいはずです。実際に予定納税したとしても確定申告することで戻ってきますが面倒ですよね。従って、顧問税理士がいる場合は全て代理でやってくれますが、顧問税理士がいない方は、これらの手続きはやっておきましょう。分からなければ税務署に行って相談すればその日に終わらせることも可能です。

 

 

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