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会社設立後の法人口座開設の注意点
当税理士事務所の顧問先のうち、個人事業主だった方が法人成りするケースが継続的に発生しています。法人化する理由は、以前は節税目的が多かったのですが、最近は事業拡大のために法人成りする方が増えています。とてもいい傾向だと思いますし、頑張ってほしいです。去年後半に、創業したての会社を2件紹介いただいたのですが、その際サポートした法人口座の開設で色々と苦労したことがありましたので、今回はその事についてお伝えします。
【目次】
- 法人成り後のお勧めの銀行口座は
- 法人口座を開設できないケース
- 本店所在地がバーチャルオフィス
- 定款の事業目的がよくわからない
- 資本金が少なすぎる
- 本店所在地から離れた銀行の支店
- まとめ
1.法人成り後のお勧めの銀行口座は
法人成り後に開設する銀行口座についてまとめたコラムが別にありますので、基本的な部分は以下のコラムをご覧ください。
2.法人口座を開設できないケース
今回お伝えしたい点はこの注意点です。今、法人口座を開設するハードルがとても高くなっています。その理由は、マネーロンダリングなどの犯罪に銀行口座が悪用されるケースが多発していることが挙げられます。そこで、法人口座が開設できないケースについてお伝えします。
1.本店所在地がバーチャルオフィス
私の顧問先が苦労したのはこの点です。①自宅を本店所在地にしたくない(自宅の住所がバレるから)、②事務所を借りる必要もないという理由から、本店所在地をバーチャルオフィスに登録していました。その結果、1社は地方銀行の法人口座を開設できましたが、もう1社は開設できませんでした。
私が懇意にしている地方銀行の担当者によれば、本店所在地がバーチャルオフィス(空間を借りているレンタルオフィスでも同じらしい)の時点で、銀行本店の審査対象となり、9割は開設不可という結論になるとの事でした。これはルールだから文句を言っても仕方ありません。
1社開設できた理由は、税理士経由の申し込みという事もあったのですが、それ以上に、その地方銀行が顧問先の主要な取引先のメイン行で、取引実態を具体的に把握できたことが大きかったようです。運よく1割の中に入ったという事だと思います。
全ての地方銀行や信用金庫が厳しいとは限りませんが、事務所の実態がない場合は、相当厳しくなっている事は理解しておいた方が良いでしょう。
2.定款の事業目的がよくわからない
事業目的があいまいだったり数が多いと、結局マネーロンダリングなどの目的で使用されるのではと疑われることになります。ですので事業目的はしっかりと具体的に記載するべきですし、何でもかんでも入れることも避けた方がよいでしょう。また、事業目的によってはNGになりやすい業種もあります。貸金業だったり夜のお店関係などが典型です。そういった業種でもしっかりとした会社もたくさんある訳ですから、銀行側が単にリスクを負いたくないという意識が強いのだと思います。仕方ないです。
3.資本金が少なすぎる
今は資本金1円で会社を設立することが可能です。銀行視点で考えると、資本金1円の会社は社会的な信用があるのか、持続可能なのかという点で不審に思うのかもしれません。当税理士事務所の顧問先に資本金1円の会社が存在しますが、問題なく複数の銀行口座を開設できましたし、絶対にできないという訳ではありません。私の顧問先では、資本金が理由で口座開設を断られたことはありませんが、一般的には50万円位はあった方が良いと言われているようです。
4.本店所在地から離れた銀行の支店
これはかなり厳しいです。近くの支店に行ってくださいと言われます。私としては、信頼している銀行員が担当してほしいので、私が懇意にしている銀行員の支店で口座を開設したいのですが、各支店には担当エリアがあるので難しいといわれてしまいます。ですので、本店所在地の近くの支店に行ってください。
3.まとめ
今回は法人口座の開設に絞って解説しました。法人口座は必ず開設しなければならないという訳ではないものの(最悪、個人口座で代用することもできなくはない)、ないと不便である事は間違いありません。従って、会社設立を検討されている方は、法人口座の開設は意外とハードルが高いという事を理解して頂いた上で、会社設立の準備を進めておくとよいと思います。