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法人成り後に開設する銀行口座について
10月はインボイス制度を見据えた法人成りがとても多かったです。その結果、9月決算の顧問先が一気に増えました。これまで9月決算の会社がなかったのでちょうどよかったのですが、一気に増えたので来年の申告がちょっと不安だったりします。今回は法人成り後に開設する銀行口座についてお伝えします。銀行口座は目的に応じて使い分けることも大切だったりしますので、どの銀行・信用金庫の口座を開設するかは慎重に検討する必要があります。
【目次】
- 金融機関の種類
- 都市銀行
- 地方銀行
- 信用金庫
- ネット専業銀行
- 法人にお勧めの銀行は
- 取引先とのお金のやり取りのため
- お金を借りるため
- 地方銀行や信用金庫と付き合う際の注意点
- まとめ
1.金融機関の種類
今回は、あくまで中小零細の新設会社が銀行口座を開設することを念頭に入れているので、信託銀行などは対象にしていません。ざっくりとした区分で説明します。
1.都市銀行
全国に拠点がある銀行です。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行、りそな銀行、埼玉りそな銀行が該当します。開設するとしたら、当税理士事務所のある愛知県であれば三菱UFJ銀行がいいでしょうし、首都圏であればいずれでもよいでしょう。長崎県だとどうでしょうか。みずほ銀行が多いような気がします。
2.地方銀行
地方を拠点とする銀行です。愛知県であれば、名古屋銀行、愛知銀行などが該当します。長崎県の場合、私が子供の頃は親和銀行が身近にありましたが、今は十八銀行と合併して十八親和銀行になっていました。最近の地方銀行のよくある話ですね。
3.信用金庫
地方銀行と比較すると、より地域限定の金融機関というイメージでしょうか。より地域に根差したサービスを提供してくれます。愛知県だと岡崎信用金庫がとても大きいです。その辺りの地方銀行よりも規模感は大きかったりします。信用金庫は、良くも悪くも理事長(銀行でいうと頭取)の影響力が強いので、特徴がそれぞれ大きく違ったりします。
4.ネット専業銀行
楽天銀行、PayPay銀行、住信SBIネット銀行が有名どころでしょうか。ネット銀行の特徴は何といっても振込手数料が安い点です。ネット専業なので、ATMの場所や手数料は予め気にしておく必要があります。
2.法人にお勧めの銀行は
法人が銀行口座を開設する目的に沿って銀行を選ぶとよいのではないでしょうか。その目的を2点取り上げたうえで、それぞれについて考えてみます。
①取引先とのお金のやり取りのため
②お金を借りるため
1.取引先とのお金のやり取りのため
取引先とのお金のやり取りは、銀行口座間で行うケースがほとんどです。そのため、取引先が保有する銀行口座であれば相手が喜びます(振込手数料が安くなるので)。こちらが振り込む場合は、振込手数料が安い銀行が便利です。
この点から、その地域で一番使われている都市銀行(東海地区であれば三菱UFJ銀行)は持っておいた方がよいでしょう。しかし、審査がとても厳しく通らない可能性がある点は注意が必要です。また、振込手数料についてはネット専業銀行がとても安いので、振込の多いビジネスをやっている法人であれば、楽天銀行やGMOあおぞらネット銀行など、1行は持っておいた方がよいです。私の場合、振り込みはほとんどないので、ネット専業銀行の口座は開設していません。
2.お金を借りるため
私は明確にこちらを重視しています。企業が継続するために一番大切なのは資金繰りです。どれだけ売上を拡大しても資金繰りに窮してしまうと倒産します。黒字倒産だってあります。そのため、資金繰りはとても大切なのです。そこで活用すべきが銀行の借入です。この視点で考えると、地方銀行や信用金庫が選択肢に上がります。都市銀行は基本的に相手してくれません。私が開設している都市銀行の場合でも、私の法人に対しては何も言ってきませんが、個人口座にお金が入っていると、投資信託やりませんか~とか言ってきます。そういうのがむかつくので当然やりませんが。手数料も高いし。
地方銀行や信用金庫は、地域経済に貢献するという大切な使命があり、こちらにお金があるなしに関わらず銀行員は積極的に連絡をしてくれることが多いです。お金を借りたいと言えば、積極的にサポートしてくれますし、その点はうまく活用する必要があります。
3.地銀や信用金庫と付き合う際の注意点
とはいえ、銀行もビジネスですから、銀行にメリットを提供できなければあちらも親切にしてくれません。だからこそ、資金繰りに問題がなくても、銀行から一定額お金を借りておくことを私は強く勧めています。金融機関の特徴を表す表現として、”晴れの日に傘を貸して雨の日に傘を取り上げる”というフレーズがあります。金融機関は、お金が必要でないとき(業績が良い時)にお金を貸すけど、お金が必要なとき(業績が悪い時)にはお金を貸してくれない事を揶揄したものです。これは本当にそうなので、だからこそ、業績が良い時から定期的にお金を借りることで、業績が悪化した時に助けてもらえるように実績を積み上げておく必要があります。
もう1つ注意点です。それは銀行員のレベルです。びっくりする位レベルの低い行員もいます。そのような行員が担当になってしまうと非効率なので、お金を借りるときなどは必ず顧問税理士に同席してもらうようにしましょう。税理士がついていると、あちらも下手なことができませんので一定の牽制効果を発揮することができます。
半年以上前ですが、信用金庫の担当者に対してとてもむかついたことがあります。3月に顧問先である個人事業主に対して、カードローンを提案していました。その後、私がこのローンに気づいて、すぐに解約してくださいと伝えましたが。ここでのポイントは2点です。①その顧問先は特に資金繰りに問題がないこと、②3月であること。この2点だけでも銀行都合でしかなく、顧問先には何のメリットもないサービスを提案したことが明確です。資金繰りに問題がない以上、相対的に利息の高いカードローンを申し込む必要性がない事(一般的な借入であれば私も文句は言いません)、3月は銀行の決算月なのでノルマ達成に利用されたのでしょう。このままだと今後も雑に扱われる可能性があるので、この担当者(+上司)に理屈で文句を言わなければなりません。ダメだと思えば、口座を解約すればいいだけですし。
4.まとめ
銀行借入を目的として、事務所近くの地方銀行もしくは信用金庫の口座開設をお勧めします。そして、2口座は作っておいた方がよいでしょう。地銀と地銀の組み合わせでも地銀と信用金庫の組み合わせでも良いと思いますので、便利な場所にある銀行をピックアップしてください。そして、取引先との兼ね合いで必要であれば都市銀行を開設したらよいでしょうし、振込件数が多いのであればネット専業銀行を開設したらよいと思います。
私の場合、法人と個人事業主どちらも、都市銀行1行と地方銀行1行を開設しています。都市銀行を開設している理由は、クライアントからお金を振り込んで頂く時に、多くの方が開設している都市銀行を指定すると振込手数料が安くなるためです。地方銀行の目的は、銀行借入を目的としています。実際に法人も個人事業主でもお金を借りています。本当はもう一つ、地方銀行か信用金庫の口座を開設する予定でしたが面倒でそのままです。新たに金融機関と働いている方と仲良くなったら、その銀行or信用金庫で開設しようかと思っています。