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個人事業主がやるべき事前の税務調査対策
税理士業界は、1月は年末調整や償却資産税の申告、それが終わると個人の確定申告の作業が始まるので、これからは最も忙しい時期です。さすがに今年の確定申告は3月中旬が申告期限でしょうから、本当に間に合うのか不安ではあります。記帳代行を受けている顧問先の多くは、皆様の協力の下、概ね9月から10月分までは集計できているのが救いですが。
これまでのコラムでは、税務調査対策について、法人、個人事業主に限らず税務調査の対象に選定された後にやるべきことを様々な視点で取り上げてきました。今回は少し視点を変えて税務調査前にやるべき対策について取り上げます。今回のコラムは、顧問税理士がいない個人事業主を前提に整理しました。
【目次】
- 最も確実な税務調査対策
- より実践的な税務調査対策
- 売上は必ず正しく申告する
- 外注費は必ず正しく申告する
- 仕入先や外注先への現金払いは必ず領収書を入手する
- 経費のグレーゾーンをしっかりと攻める
- 単純なミスは心配しなくていい
- 資料を漏れなく保管する
- まとめ
1.最も確実な税務調査対策
正しく申告する事です。売上も正しく、経費も正しく、プライベート支出入れず、保守的な申告書を作成していれば何ら問題ありません。しかしそんなことは当たり前の話ですので、より実践的な税務調査対策についてこれからお伝えします。
2.より実践的な税務調査対策
1.売上は必ず正しく申告する
兎にも角にも売上は必ず正しく申告してください。これまでの税務調査の経験上、売上を正しく申告しているか否かで税務調査官の心証は大きく変わってきます。基本的に売上が間違っていると重加算税を課そうとするので交渉も困難になりますし、売上は正しくです。必ず正しくです。発生ベースと入金ベースで売上金額が異なるのは特に問題ありませんが(このミスで重加算税が課される可能性はかなり低いので)、売上除外は論外ですのでご注意ください。
2.外注費は必ず正しく申告する
売上と同じ理由です。外注費も不正が多い項目なので必ず税務調査ではチェックが入ります。架空外注費は必ずバレると思っておいた方がよいでしょう。架空外注費でよくみるのは、①年に8カ月程度仕事を依頼している外注先があり、12カ月仕事を依頼したという前提で架空計上、悪い人はさらに架空の領収書も併せて作成、②とりあえずテキトーな金額(100万円とか)を追加して架空計上などでしょうか。
領収書の偽造なんてバレれば重加算税ですし、調査期間も7年になる可能性が高いです。テキトーな金額で架空計上しても、請求書や領収書、通帳履歴を見ればすぐにバレます。費用対効果も低いので、こういった方法は止めましょう。
3.仕入先や外注先への現金払いは必ず領収書を入手する
税務調査では、現金払いについてはより慎重にチェックを受けます。領収書があったとしても必要に応じて反面調査されますし、領収書がないと基本的に経費として認めてくれません。100%確実に払っていたとしてもです。勿論、認めてもらう為に交渉するものの、かなりタフな交渉になります。時間もかかりますし良いことありません。必ず領収書は貰ってください。領収書を貰えない場合、実務で問題がなければその外注先や仕入先は使わないくらいのスタンスが大切です。
4.経費のグレーゾーンをしっかりと攻める
売上や外注費が正しいことを前提とした場合、税務調査で揉めるのは経費のグレーゾーンです。この経費のグレーゾーンを合理的に説明できる準備をした上で、しっかり攻めることが税務調査対策になると私は考えています。理由は、納税者にとっても税務署の調査官にとってもメリットがあるからです。
・納税者のメリット
節税できることに尽きます。当初申告でグレーゾーンを全く攻めなかった場合とそれなりに攻めた場合とでは税額が大きく異なります。しかも所得税だけでなく、消費税、市県民税、個人事業税、国民健康保険の金額にも影響する訳です。従って、認められる可能性のある経費を当初申告で経費として処理しないのはもったいないです。
・税務署の調査官のメリット
全くグレーゾーンを攻めていない潔白の申告書の場合、指摘事項を探すのがとても大変です。しかも見つからない可能性も高い。しかし、グレーゾーンの経費があるケースでは、そのうちの一部を否認することができれば一応の成果を上げることができます。このグレーゾーンに関する納税者と調査官の戦いにこそ、税務調査に強い税理士が活躍できる場となります。
グレーゾーンを否認された場合、過少申告加算税や延滞税が発生するため、正しく申告していた場合よりもペナルティーが発生する分だけ不利になります。しかし、多くのグレーゾーンが是認されさえすれば、ペナルティーなんて簡単に回収できます。
最後に一番大事なことをお伝えします。勝負するのはあくまでグレーゾーンです。そして自信をもって経費であると説明できるものに限定すべきです。明らかに経費として認められないもの、家族との飲食代、旅行など、そういったものは必ず経費処理しない事もとても大切です。明らかに経費として認められないものが多数発見されると、これまた調査官は厳しい対応にシフトしますので。
5.単純なミスは心配しなくていい
売上除外や外注費の架空計上は絶対にやったらダメ!とお伝えしました。しかし、単純ミスであれば大きな問題にはなりません(わざとじゃないとしっかり主張する必要はあります)。問題がないというのは重加算税が課されず、粛々と修正するだけで終わるようなものです。特に経費などはプライベート支出を誤って経費処理することもあると思います。そういった単純ミスが少しある位はそれほど問題になりませんので、それほど気にする必要はありません。勿論、過少申告加算税や延滞税は発生するので、単純なミスもないことに越したことはありません。私のような税理士自身の申告だって1つや2つはミスがあるかもしれませんし。
6.資料を漏れなく保管する
特に経費に掛かる資料は漏れなく保管してください。税務調査では、資料の有無が結果に大きな影響を及ぼします。特に消費税の課税事業者の場合、ダメージが半端ないです。資料の保管方法はルールがないので、整理する必要は全くありません。とにかく保管だけは必ず忘れないでください。電子帳簿保存法も2年間の猶予期間が設けられましたし。資料の保管方法については別のコラムでまとめていますのでご確認ください。
3.まとめ
今回は、税務調査前の対策についてお伝えしました。仮装隠蔽は絶対にしない(=売上や仕入、外注費などグレーゾーンにもならない事項は正しく申告)ことを前提に、自信をもって説明できるグレーゾーンを攻めることが大切だという事をお伝えしました。
グレーゾーンの攻め方について具体的な内容をコラムで公開することは控えますが、税理士に相談することなくご自身で判断してやってしまうのは避けた方がよいかなと思います。多少税理士報酬を払ってでも、税理士に相談することをお勧めします。また、顧問税理士がいる場合は、経費にできそうな事項を税理士に相談してみてください。きっと是認率をアピールしている税理士事務所の場合、ダメ!って言われることが多いと思いますよ。
私のコラムでは、グレーゾーンについてよく話題にします。従って、当税理士事務所の顧問先はグレーゾーンを積極的に攻めているかというとそうではありません。税務調査で色々いわれることは嫌だという方はものすごく固く処理していますし、人それぞれです。納税者本人が自信をもって説明できるのであれば、グレーゾーンも攻めていいのではというスタンスです。
売上や外注費などについて意図的に誤った申告をしている方は、税務調査に選定されるとかなりのダメージを受けてしまいます。重加算税を課されるのは本当に税負担が大きいですので。もしこのコラムを読んでいる方で該当する方は、修正申告することを検討してください。当税理士事務所は、広告にお金をかけていない分、安く設定していますので、是非ご相談ください。