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事業主貸や事業主借が多いとダメなのか。税務調査で問題になる?
先月、顧問先が銀行借入の借り換えしようとしたところ、銀行側から連絡がありました。事業主貸と事業主借が多いのはどうしてでしょうか?という質問です。銀行担当者に対して電話で説明したのですが、あまり理解してもらえなかったため、顧問先の了承を得たうえで総勘定元帳を送りました。その後、銀行担当者からは連絡もなかったこともあり、問題なく借り換えができました。そこで今回は、個人事業主の特有の事業主貸と事業主借についてお伝えします。
話が少しそれますが、銀行員で仕訳の概念を理解していない人は普通にいます。今回の銀行担当者も同じです。なぜなら、銀行員が確認するのは仕訳を集計して出来上がる財務諸表(貸借対照表や損益計算書)しか見ないからです。つまり、この財務諸表がどのように出来上がっているのかを知る必要がないのです。という事実を今回改めて確認しました。
【目次】
- 事業主貸と事業主借とは
- 事業主貸とは
- 事業主借とは
- 税務調査に影響するのか
- まとめ
1.事業主貸と事業主借とは
1.事業主貸とは
そのまま読むと個人事業主本人に対する貸付となりますが、これだけではよくわかりません。実際の仕訳では、個人事業主の生活費といった事業と関係のない支出をした場合などに使います。例えば、以下のようなケースです。
ケース1:事業用の銀行口座から保険の支払いをした。
仕訳:事業主貸 10,000円 普通預金 10,000円
2.事業主借とは
上記と同じように読むと個人事業主本人からの借入となりますが、これもまたはよくわかりません。実際の仕訳では、個人事業主の本業以外の収入が事業用の口座に入金された場合などに使います。
例えば、以下のようなケースです。
ケース2:事業用の銀行口座にATMでお金を入金した。
仕訳:普通預金 10,000円 事業主借 10,000円
2.税務調査に影響するのか
税務調査の立会いでは影響しませんが、税務調査の選定には影響するかもしれません。2パターン考えてみました。
1.所得に対して事業主貸が多すぎるケース
事業主貸は基本的にプライベートの支出の時に使うとお伝えしました。そこで、所得は小さいのに事業主貸が多いと、それだけプライベート支出があるにも関わらず所得が少ないのはおかしくないか?例えば売上を除外しているのではないかと疑われるかもしれません。
2.事業主借が単純に多すぎるケース
事業主借は銀行口座にお金が入った時に使う事が多いので、本当は売上なのに事業主借で処理しているのでは?と疑うかもしれません。
この2ケースはかなり単純化しています。例えば、会計ソフトfreeeにはプライベート資金という概念があります。このプライベート資金の説明は割愛しますが、現金ではなくこのプライベート資金を活用した場合、事業主貸、事業主借の出現回数が一気に増えるので、よりこの両者が膨らみがちになります。今回、銀行員から問い合わせがあった件もこれが原因です。今回問い合わせがあったので、少し使い方を変更しようかと思いました。このように事業主貸・借の使い方は個人事業主によっても違いますし、税理士事務所によっても違います。その事は税務署側もわかっているはずなので、この事業主貸・借の動きで選定されることはよっぼどないと思います。相当違和感がある場合は除きますが。
3.まとめ
今回は、事業主貸・借についてお伝えしましたが、個人的にはそれほど気にする必要はないという考えです。世の中にはそれ以外の理由で怪しい個人の確定申告書はいくらでもあります。よくあるパターンは以下のコラムでまとめています。少なくとも税理士が関与する確定申告書であれば、事業主貸・借に多少違和感があったとしても税務調査に選定されることはないでしょう。
個人事業主の場合、顧問税理士がついている場合、税務調査に選定される可能性はかなり低くなります。なぜなら、顧問税理士がついていない個人事業主はとても多く、そちらの方が不適切な確定申告書を作成している可能性が高いからです。この点も顧問税理士をつけるメリットです。当税理士事務所は最初の相談は無料で受けていますので、税務顧問に少しでもご興味があればご連絡ください。