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2021.10.11 コラム

税務調査で問題となりがちな外注費と給与の区分について

今回は税務調査で問題となりがちな外注費と給与の区分についてお伝えします。私が担当した案件を思い出すと、意外と建設業ではあまり論点になったことはありませんが、運送業、ホステスさんなどが働いている夜のお店、システム会社などでは、頑張って交渉した記憶があります。全ての案件で、外注費認定を勝ち取った訳ではありませんが。

【目次】
  1. 外注費と給与の判定基準-理論
  2. 外注費と給与の判定基準-実務
  3. 給与認定されないためには
  4. まとめ

1.外注費と給与の判定基準-理論

まず、実務でよく使われる基準の元となる消費税法基本通達をご紹介します。国税庁ホームページより抜粋しましたが、以下の記載した4要件がベースとなります。

消費税法基本通達

(個人事業者と給与所得者の区分)
1-1-1 事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。

(1) その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
(2) 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
(3) まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
(4) 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。

2.外注費と給与の判定基準-実務

消費税法基本通達の例示をベースにより詳細に確認してみます。税務調査の現場では、以下の項目に基づき総合的に判断することになります。この総合的という点が交渉の余地となります。

1.その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか

仕事を依頼された事業者が、他の事業者に仕事を代替することができるのであれば外注費であり、できないのであれば給与とされています。

2.役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか

仕事を依頼された事業者が、仕事を依頼した側(元請)の指揮命令に属しなければ外注費であり、属していれば給与とされています。

3.まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか

仕事を依頼された事業者が、完成品を引き渡さないと報酬を請求できない場合は外注費であり、請求できる場合は給与とされています。

4.役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか

仕事を依頼された事業者が、作業用具の提供を受けていない場合は外注費であり、受けている場合は給与とされています。

3.給与認定されないために

1.外注先に確定申告を必ずしてもらう

実務ではこれが一番大切です。勿論、実態と形式を外注認定されるように整理することも大切なのですが、確定申告さえしていれば、給与認定を避けられる可能性が極めて高くなります。なぜなら、外注先が「私は給与所得者ではなく事業所得者である」と自ら宣言しているためです。私が関与した税務調査の経験からもそういえますし、複数の著名な税理士も同じように言っています。是非、この点は理解してください。

2.外注費認定されるように形式を整える

当税理士事務所の顧問先にお伝えしているのは、1.業務委託契約書を作成し、その中で確定申告の義務があること、4要件を意識した事項を明記する、2.請求書を発行させる。という2点は必ずお伝えしています。

実質的に外注先と認定される状況であればそれほど心配する必要はありませんが、得てしてどっちともとれるケースが多いはずです。例えば、運送業であれば、下請けとして働いてもらっている個人事業主がお金がなく車を買う事ができないため、いったん会社の車を貸してあげるといった事はよくある話です。その場合、役務の提供に係る用具を提供していると認定され、給与ねと言われかねません。だからこそ、それ以外の部分で実質的に外注先の認定されるように整える必要がありますし、それ以前に必ず確定申告を指導することが何より大切なのです。

4.まとめ

外注費として処理していたものを給与認定されてしまうと、消費税及び源泉所得税の追徴課税が発生してしまいます。源泉所得税は相手が払うべきものですが、得てして回収できないため自己負担になりがちです。そして金額も大きくなる傾向があります。以上より、とにかく給与認定は避ける必要があるため、何よりも外注先に確定申告をしてもらうこと、そして4要件で外注費認定されるように形式・実質ともに整理することを強くお勧めします。当税理士事務所の顧問先と面談する際、税務調査で問題となりそうな外注先がいる場合、毎回のように確定申告指導してくださいね!と伝えています。

 

 

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