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個人事業主の税務調査。生活費という観点で。
法人・個人事業主に限らず、税務調査は申告した内容をチェックするものです。従って、納税者のプライベートは直接的には関係ないはずです。しかし、特に個人事業主の税務調査では、プライベートの事を聞かれることがあります。今回は、個人事業主の税務調査でプライベートの話がでてくる理由についてお伝えします。
【目次】
- 個人事業主の税務調査(実地調査)の流れ
- プライベートを聞いてわかる事とは
- まとめ
1.個人事業主の税務調査(実地調査)の流れ
個人事業主の実地調査は、基本的に1日で終わります。ここでの実地調査とは、税務署の調査官が、会社や個人事業主の事務所だったり、個人事業主の自宅に出向いて調査を行うことです。実地調査後に税務署との交渉や税務署による調査結果報告などがありますので、1日の実地調査だけで税務調査が終わることはありませんが。
個人事業主の実地調査の流れは、概ね以下の通りです。以下の流れで進みつつ雑談があるのですが、この雑談に対する対応が結構大事だったりします。具体的には、プライベートの質問に対してどのように対応するのかという事です。
1.事業内容のヒアリング⇐調査官が個人事業主の事業を理解するため
2.確定申告書の作成方法のヒアリング
3.納税者が保管する資料の確認
4.確定申告書の金額と保管資料の相互チェック
5.確定申告書の金額と保管資料に差があればその理由をヒアリング
2.プライベートを聞いてわかる事とは
では、なぜ調査官は確定申告書とは直接関係のないプライベートについて質問するのでしょうか。理由は明確で、納税者の所得を推計できるからです。具体的には以下のようなことを聞かれます。
・毎月、奥様にいくら渡していますか?⇒毎月に生活費が把握されます
・趣味はありますか?⇒例えばゴルフと答えると、お金に余裕があると思われます
・家族での外食は多いですか?⇒これは生活費を把握されるだけでなく、経費処理している飲食費が多ければ家族と行っているのではと疑われます
雑談の中でこのようなプライベートの事を質問し、調査官なりに納税者の所得を推計した上で、確定申告書との整合性を確認します。以下、具体的に説明します。
Aさん | Bさん | |
売上 | 1,000万円 | 1,000万円 |
経費 | 900万円 | 500万円 |
所得 | 100万円 | 500万円 |
年間の生活費 | 480万円(40万円/月) | 480万円(40万円/月) |
どちらが違和感がありますか?
明らかにAさんは違和感があります。理由は明確です。所得と生活費が全く整合しないためです。個人事業主の場合、売上から経費を差し引いた所得が、生活費に使えるお金です。Aさんの場合、生活費に使えるお金が年間100万円しかないのに、実際は480万円の生活水準を維持している訳です。可能性として、過去に稼いだお金を切り崩して生活している可能性もありますが、それが真実か否かは通帳を見れば一目瞭然です。私がこれまで関与した税務調査で、過去に稼いだお金を切り崩して生活しているという理屈が通じたケースは1回だけです。このケースでは、過去からの通帳残高を推移から推測しても、その納税者の回答は嘘とは言えないと認定されました。経費にプライベート支出が紛れていたので、一部否認されましたが、生活費から所得を推計されることはありませんでした。
逆にBさんは、所得500万円に対して年間の生活費が480万円であるため、概ね整合しています。この場合、税務署の調査官は、確定申告の内容がそれほど誤っていることはないだろうという心証を得ることができます。
3.まとめ
以下のコラムでもお伝えした通り、Aさんのような確定申告を継続的に提出している場合、高い確率で税務調査の対象に選定されます。事業とプライベートの切り分けが難しい部分は、納税者や税理士の立場でも変わってきますので、同じ仕事、同じ売上の個人事業主の間で所得水準が違うのは普通にあり得ますが、個人事業主の所得100万円は明らかにおかしいので、これまでそういった確定申告を継続的に提出されている方は、早めに税理士に相談することをお勧めします。いつになるかはわかりませんが、税務調査にはいずれ選定されます。なぜでしょうか?税務署が税金をたくさんとれそうだ!と考えるためです。
税務調査の対象になりやすい個人事業主とは
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