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交際費と福利厚生費の区分
資本金1億円以下の中小企業で支出交際費が800万円を超えるような会社はそう多くありませんので、そのような会社であれば交際費認定されても経費処理できます。しかし、800万円を超える中小企業の場合、交際費を会議費、福利厚生費、情報提供料等に厳密に区分することで交際費の金額を減らしていく必要があります。そこで今回は交際費と福利厚生費の区分についてお伝えします。
【目次】
- 交際費等と福利厚生費の区分
- 税務調査で福利厚生費と認めてもらう為に
- 特定の従業員に限らず、従業員に概ね一律に供与されること
- 多額ではなく通常の飲食に要する費用であること
- まとめ
1.交際費等と福利厚生費の区分
国税庁HPによれば、交際費等と福利厚生費の区分について以下のように明記されています。
交際費等とは、得意先や仕入先その他事業に関係のある者に対する接待、供応、慰安、贈答などの行為のために支出する費用をいいます。ただし、専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行などのために通常要する費用については交際費等から除かれ、福利厚生費などとされます。また、社内の行事に際して支出される金額などで、次のようなものは福利厚生費となります。租税特別措置法関係通達61の4(1)-10
- 創立記念日、国民の祝日、新社屋の落成式などに際し、従業員におおむね一律に、社内において供与される通常の飲食に要する費用
- 従業員等(従業員等であった者を含みます。)又はその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給される金品に要する費用(例えば、結婚祝、出産祝、香典、病気見舞いなどがこれに当たります。)
2.税務調査で福利厚生費と認めてもらう為に
国税庁HPにて交際費と福利厚生費の区分について明示されているため、これに基づき考える必要があります。読み解くと、福利厚生費として処理するためには以下の要件を満たす必要があります。①については特に問題ないと思いますので、②と③について説明します。
①専ら従業員の慰労の為であること
②特定の従業員に限らず、従業員に概ね一律に供与されること
③多額ではなく通常の飲食に要する費用であること
1.特定の従業員に限らず、従業員に概ね一律に供与されること
従業員に概ね一律にという事なので役員しか参加できなければ福利厚生費に該当しませんし、役員でなくても特定の従業員しか参加できない場合も同様です。といっても従業員全員が参加しなければ福利厚生費として認めないという訳ではありません。大切なことは参加希望者が全員参加できるような飲み会である必要があるということです。
もう1点大事なことは概ね一律の範囲です。さすがに会社に所属する従業員全員が対象の飲み会は非現実的です。従業員が何万人もいるような大企業の場合、全員が参加できる飲み会なんてありえません。そのため工場単位、支店単位、部署単位での開催も認められるでしょう。勿論、部署単位で開催する場合、その部署に所属する全員が参加できる必要があります。私が監査法人に常勤として勤務していた際、年に1度、チーム単位で慰労会を開催していましたが、この費用は福利厚生費にはならないかなと思います。ある部署の一部の人間だけが対象になっているので。
以上から、福利厚生費として認めてもらう為にはA工場に所属する従業員が希望すれば全員参加できることが必要です。それを税務調査では立証しなければなりません。そのため対象となる従業員全員に飲み会の開催について周知したことを証拠として残しておく必要があります。
2.多額ではなく通常の飲食に要する費用であること
通常要する費用の基準が法律で明記されていないため、判断が難しいところです。基本的にケースバイケースで検討せざるを得ませんので、税理士に相談することをお勧めします。例えば、部署の新年会を開催するとして一人当たりの飲食代がどの程度であれば、常識的な金額かという視点で考えることになります。今回のコラムを執筆するにあたって、様々な税理士のホームページをチェックしましたが、通常の飲食に要する費用について具体的な金額で説明しているものは見つかりませんでした。このコラムでも明示しません。法律で規定されていないため無理もありません。
本件に近い論点として、従業員レクリエーション旅行や研修旅行について給与認定されないための要件が国税庁HPに明記されています。この論点は以下のコラムでまとめていますので併せてご覧ください。
3.まとめ
今回は、交際費と福利厚生費の区分についてお伝えしました。何度もお伝えしている通り、交際費総額が800万円を超えない場合はそれほど気にする必要もないのですが、それに近い金額の交際費支出がある会社は交際費と福利厚生費の区分をしっかりと理解しておく必要があります。当税理士事務所の顧問先の場合、800万円を明らかに超える会社はいませんが、いずれ800万円に達しそうな会社が存在します。その社長に伝えているのは800万円超えると色々と面倒ですよ⇒無駄な交際費は減らしていきましょうと。中小企業が事業継続するためには資金繰りが非常に大切なので、売上に貢献しない交際費は可能な限り削減してほしいという想いがあるので、その方向に誘導したいというのが一番の目的なのですが。