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2021.05.17 コラム

過少申告の意図は認められるが、税務調査で重加算税が課されなかった事例

重加算税について、国税不服審判所で争われることは非常に多いです。インターネットで調べている時にたまたま見かけた裁決例や、国税OBから情報提供してもらった裁決例などを、自分なりに整理する目的もあり、コラムで取り上げています。今回は、運送業を営む個人事業主が税務調査の対象となったもので、売上の過少申告について、納税者は過少申告の意図があったと認めたものの、隠蔽や仮装行為があったとは認められないとして、重加算税を回避できた事例をお伝えします。元ネタは、以下のリンク先です。
国税不服審判所(令和元年6月24日裁決)

【目次】
  1. 重加算税について争われた事例の概要
    1. 納税者及びその妻が主張した内容
    2. 資料の保管・提出状況、その他の事実関係
  2. 国税が重加算税であると主張した理由
  3. 国税不服審判所が判断した結論
  4. まとめ

1.重加算税について争われた事例の概要

争点は6つあったようです。納税者が負けた争点もあります。例えば、仕入税額控除の適用の有無です。仕入税額控除は、要件が明確なので、納税者が負ける場合が多いです。本件でも、納税者は、法律から乖離した主張をしているため、当然ではありますが負けています。では、本題である重加算税の争点について、基本的な情報をお伝えします。

1.納税者及びその妻が主張した内容

  • 妻が1年分まとめて売上や経費を集計した上で確定申告を作成しており、納税者は関与していない(指示もしていない)
  • 運送業の事業経営が困難だったため、少しでも資金を手元に残しておきたいと考えていた
  • 売上を集計する時に広告の裏紙などにメモ書きしたが、確定申告後は必要ないため破棄した
  • 売上は、取引先から送付される支払明細書に基づき算定しているが、従業員分は除き納税者分のみを集計し、かつ会計知識がないため、集計した売上金額から諸経費を差し引いた金額を売上として申告したり、過去の申告を参考に適当な金額で申告したりした。
  • 資金繰りが厳しく税金が払えないと思い、従業員に紐づく売上は申告せず、それに応じた経費も申告しなかった。
  • 税金の知識がなく、消費税を払わないために売上を1,000万円未満で申告したわけではない

2.資料の保管・提出状況、その他の事実関係

取引先から送付された支払明細書(従業員分含む)や通帳、経費にかかる領収書等(従業員分含む)は保管しており、税務調査が始まったタイミングで、それらの資料は全て税務署の調査官に提出し、かつ、売上を過少に計上していたことも伝えている。その過少金額であるが、本来の売上の5割を下回る金額で申告していた。

2.国税が重加算税であると主張した理由

国税は、以下の事象から、「隠蔽し、又は仮装し」に該当する行為又は過少申告の意図を外部からもうかがい得る特段の行動に該当するため、重加算税を課すべきであると主張しました。

  • 過少申告の意図に基づき売上金額が1,000万円を超えないように調整した過少な売上金額を算出するためのメモ(売上メモ)を請求人の妻に作成させたこと
  • 売上メモに基づいて算定した過少な売上金額に基づき確定申告したこと
  • 所得税等の確定申告をした後に、売上メモを廃棄したこと
  • 申告した売上金額は、請求人の事業に係る総収入金額の半分以下の金額であったこと
  • 除外した売上金額に対応する経費が毎年合計600万円以上ありながら、収支内訳書に必要経費の金額として計上しなかったこと

3.国税不服審判所が判断した結論

納税者が、税負担を抑えるという動機から従業員分の売上を計上しなかったことは明らかであり、納税者は、当初から所得を過少に申告するという意図を有していたものと認められる。しかし、以下のような事実はない。

  • 架空名義の請求書を作成した
  • 取引先に架空名義の支払明細書を作成させた
  • 他人名義の預金口座に売上代金を入金させた
  • 支払明細書や領収証等の取引に関する書類を改ざんした
  • 売上メモを作成し、又はこれらの書類を意図的に破棄・隠匿した

そして、妻が、支払明細書や領収証等の書類の一部を売上金額及び必要経費から作為的に除いていたという行為についても、納税者が支払明細書や預金通帳の全てを保存し、税務調査の際には、当初から売上金額の過少計上の事実を認めつつ、これらの書類を調査官に提示していることから、当該行為をもって真実の所得解明に困難が伴う状況を作出するための隠蔽又は仮装の行為と評価することは困難である。

税務署は、税金の負担を免れるために、従業員分の売上げを除外し、売上金額が1,000万円を超えないように調整した過少な売上金額を算定するための売上メモを本件妻に作成させ、そのメモに基づいて算定した過少な売上金額に基づき申告し、その後に売上メモを廃棄したことは、隠蔽又は仮装の行為に該当すると主張するが、その売上メモが存在したという事実自体明らかではなく(納税者は、一時的な計算メモは作成したが、税務署がいうようなメモは作成していないと主張)、そこに税務署が主張する趣旨の内容が記載されていたとも認められない。また、売上メモは、あくまで集計過程の金額を備忘的かつ一時的に記載した単なる手控えにすぎないと認めるのが相当であるから、そのようなメモを請求人又は本件妻が申告後に廃棄していたとしても、これを隠蔽行為と評価することは困難である。

通則法第68条第1項に規定する重加算税を課すためには、過少申告行為そのものとは別に、隠蔽又は仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことが必要であり、本件において、納税者が従業員分の売上げや費用の存在を認識しつつこれらを計上せず、申告対象から除外したというだけでは、重加算税の賦課要件(「隠蔽し、又は仮装し」に該当する行為)が満たされるものではないというべき。

以上より、重加算税を課すべきではないと判断しました。

4.まとめ

本人は過少申告したことは認めていますし、なんとなく重加算税が課されてもおかしくないように思います。しかし、国税不服審判所が言っているように、過少申告したという事実だけでは重加算税を課すことはできません。あくまで仮装または隠蔽した行為があったことを税務署が立証しない限り、重加算税を課すことはできません。今回のケースでは、売上メモが重加算税を課すポイントでした。

当該メモは破棄しているため、実際にどのような記載だったか今となってはわからないし、納税者も明確に思い出せないため、国税は、売上金額が1,000万円を超えないように調整した過少な売上金額を算出するためのメモであったことを立証できていません。しかも、納税者はその売上メモは一時的な計算メモみたいなものと言っており、国税の主張に真っ向から反論しています。そして、手元にある資料は全て税務調査が始まってすぐに提出しています。つまり、売上の過少計上がばれないように資料を隠したりしていません。以上から、国税は、納税者が仮装または隠蔽した行為があったことを立証できなかったため、重加算税は課されませんでした。

如何でしょうか。この裁決事例は、かなり納税者にとっては有用な裁決例ですので、こんな事例があったかもと記憶しておくとよいのではないかと思います。とはいえ、売上の過少計上なんて税務調査にあたれば必ずバレますので、そもそもそんな申告はしてほしくありませんが。

 

 

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