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2021.10.21 コラム解決事例(税務調査)

税務調査で問題となりがちな家事費、家事関連費について

今回取り上げる家事費・家事関連費は、個人事業主の税務調査で必ず論点になるものです。本当はダメと理解しているか否かはわかりませんが、生活費を経費として処理している方はとても多いです。これがいわゆる家事費と言われ、必要経費として認められません。自宅兼事務所の家賃は、仕事に必要なスペースとプライベートスペースに分かれています。これが家事関連費に相当します。今回は、この家事費・家事関連費について詳しく見ていきます。

【目次】
  1. 家事費及び家事関連費とは
    1. 家事費
    2. 家事関連費
  2. 必要経費に算入できる費用は?
  3. 税務調査での注意点
    1. 税務調査の現場
    2. 税務調査で気を付けるべきこと
  4. まとめ

1.家事費及び家事関連費とは

1.家事費

事業に全く関係のないプライベート支出です。具体的には、個人事業主とその家族が消費する食費、娯楽遊行費、医療費などです。仕事で全く使用していないご自宅の家賃、水道光熱費、火災保険なども該当します。

2.家事関連費

事業にも使用しているしプライベートでも使用しているものです。つまり兼用しているもの。具体的には、自宅兼事務所の家賃、水道光熱費、火災保険などが該当します。それ以外だと、通信費、車の減価償却費などが税務調査ではよく論点になります。
以前、自宅家賃に絞ったコラムを執筆していましたので、ご参考にしてください。
自宅家賃の経費処理(家事関連費)について

2.必要経費に算入できる費用は?

家事費は必要経費に算入できません。なぜなら、事業に全く関係ないからです。当たり前と言えば当たり前ではないでしょうか。それでもこの家事費を経費処理している個人事業主はとても多いです。きっと、事業とプライベートを特に切り分けずに、一緒くたに考えている方が多いからなのでしょう。この家事費をがっつり経費処理している確定申告書は一目でわかるので、そのような方は、遠くない将来に税務調査に選定されると思った方がよいでしょう

では家事関連費はどうでしょうか。こちらは所得税法施行令でルール化されています。以下の要件を全て満たす場合のみ、必要経費にできるとされています。

1.事業をおこなう上で必要であること
2.その必要な部分を明らかにプライベートと区分することができること

3.税務調査での注意点

1.税務調査の現場

家事関連費について、税務調査の現場ではどのようなやり取りがなされているのでしょうか。私の経験上、ある程度自己否認していればそれほど問題になることはありません。一人暮らしなのか家族と暮らしているかにもよりますが、家賃については30%程度、通信費や減価償却費については80%~90%程度で申告していれば、問題になったことはあまりありません。家賃で40%で申告していたケースで否認された経験はあります。実際に40%はあり得ませんでしたので、すいませんという感じで修正申告しました。

2.税務調査で気を付けるべきこと

通常、否認される可能性はあるものの、明らかに使用していないケースを除けば、全く認めてくれないという事はありません。交渉をおこない、納税者も納得の上で修正申告することがほとんどです。しかし注意すべきことがあります。それは、納税者が納得せず修正申告に応じない場合です。その場合、税務署は更正処分をおこないますが、そこで問題が発生します。先ほど、家事関連費が認められる要件を2つご紹介しましたが、その内の1つが問題になります。
それは、”その必要な部分を明らかにプライベートと区分することができること”です。
皆さん、この”明らかにプライベートと区分することができる”という部分の要件を満たす自信はありますか?普通はないと思います。私は、賃貸マンションに住んでいる時、仕事用の部屋があったのですが、その部屋の面積が全体の何割かを計算した上で家事関連費を経費処理していました。多分、ここまでやっていらっしゃる方はほとんどいないと思います。賃貸マンションであれば、この面積按分で対処できそうですが、通信費や車の減価償却費は実質的に不可能だと思います。携帯の使用割合を算出することなど不可能だからです。従って、税務署が更正処分を行う場合は、彼らも法律を厳密に適用せざるをえないため、家事関連費が全く認められないという結論になってしまうのです。
従って、家事関連費以外で絶対に納得できない論点があるのであれば修正申告に応じないという戦略は全く問題ありませんが、論点が家事関連費のみで修正申告しないという戦略は基本的に悪手だと考えておいた方が無難です。

4.まとめ

家事費は問答無用に必要経費ではないので、強調する必要もないかもしれませんが、家事関連費については先ほどお伝えした通り、あまり知られていないリスクがありますので、この点はしっかりと覚えておかれることをお勧めします。

また、今回の論点とは少し異なりますが、住宅ローンの返済額は経費処理できますよね?と聞かれることがしばしばあります。この間も顧問先から、知り合いが住宅ローンの返済額のうち、事業割合相当を経費処理しているんだけどいいんですか?と質問がありました。答えはNOです。経費処理できるのは、利息相当です。何度か聞かれたことがあるので、経費処理している方が世の中には結構いるんだと思いますが、税務調査に選定されたら確実に否認されますのでご注意ください。

 

所得税法

第四款 必要経費等の計算
第一目 家事関連費、租税公課等
家事関連費等の必要経費不算入等
第四十五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
二 所得税(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を行う居住者が納付する第百三十一条第三項(確定申告税額の延納に係る利子税)、第百三十六条(延払条件付譲渡に係る所得税額の延納に係る利子税)、第百三十七条の二第十二項(国外転出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)又は第百三十七条の三第十四項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)の規定による利子税で、その事業についてのこれらの所得に係る所得税の額に対応するものとして政令で定めるものを除く。)
三 所得税以外の国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及び重加算税並びに印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の規定による過怠税
四 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による道府県民税及び市町村民税(都民税及び特別区民税を含む。)
五 地方税法の規定による延滞金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金
六 前号に掲げるものに準ずるものとして政令で定めるもの
七 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料
八 損害賠償金(これに類するものを含む。)で政令で定めるもの
九 国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)の規定による課徴金及び延滞金
十 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)
十一 金融商品取引法第六章の二(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金
十二 公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)の規定による課徴金及び延滞金
十三 不当景品類及び不当表示防止法(昭和三十七年法律第百三十四号)の規定による課徴金及び延滞金
所得税法施行令
(家事関連費)
第九十六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要でありかつその必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費

所得税法基本通達

(業務の遂行上必要な部分)

45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。

 

 

 

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