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リスキリングで会計士を目指す?
3月28日の日経新聞”ANA、50代にリスキリング 会計士など専門資格取得も”という記事を読みました。社内のコンサルタントが半年間併走し専門資格も取れるよう支援するそうです。専門資格の一例として、社会保険労務士、応用情報技術者、会計士が取り上げられていました。
応用情報技術者試験については、私がもともとシステムエンジニアなのでその頃の難易度は何となくわかるものの最近の難易度はわかりません。社会保険労務士は全く分かりません。という事で会計士だけ話をすると、50代の方が働きながら合格するのは難易度がけた違いに高いです。以下のリンク先から過去の合格者状況を確認できるのですが、令和4年の論文式試験の合格者は、50歳以上55歳未満が1名(合格率0.1%)、55歳以上60歳未満が1名(合格率0.1%)、60歳以上は0名(合格率0%)ですよ。もしこの2名が専念ではなく働きながら合格しているのであれば凄すぎです。ANAで働いている方たちなので優秀であることは間違いないとはいえリスクは高いかなと。ちなみに、私の周りで働きながら合格した人は1名しか知りません。その方は当時30代でしたが、ある程度時間をかけて合格に至っています。また、専念だと9か月で合格した人が上司にいました。2人とも仕事も超絶優秀でしたし尊敬しています。
勿論、会計の知識は大切ですし学ぶ価値はあるのですが、今回の記事は50歳から会計士を目指すのは現実的ではないよ!という事ではなく、リスキリングやキャリアについて色々と考えさせられました。
ある程度年配の方が会計士試験に合格して監査法人で働いている実例を知っていますが、非常に素晴らしい経歴の持ち主であるものの監査法人ではとても苦労していました。まず過去の経歴をそれほど生かすことができません。私もシステムエンジニア出身でしたが、その経歴はそれほど生かせませんでした。IT企業の会計監査をする場合は、業界のことをよく理解しているのでクライアントとの会話はスムーズでしたし、IT監査も理解しやすいくらいでしょうか。また、そもそも監査法人に入所することができなかった方も知っています(当時、完全な買い手市場だったことも影響しています。私自身も合格年次が30歳を過ぎていたので、大手からは見向きもされませんでしたので)。
このように、リスキリングで今働いている仕事と全く関係のない知識を得たとしても、50歳とか60歳からではなかなか活躍するのは難しいと考えます。従ってリスキリングはとても大切ですが、どのようにキャリアを構築していくかという視点を自分でしっかりと考えながら年齢を重ねないと、いざ60歳になったときに使い勝手の悪い人材になってしまうかもしれません。単に組織に依存して何も考えずに働いてもダメですよねという感じでしょうか。税理士として中小零細企業や個人事業主の方と関わっていると、会社員よりも試行錯誤しつつ苦しみながらも前を向いて働いている方が多いので、60歳以降に違いが出てくるような気もします。母集団が少ないので一般論としては言えませんが。
私たち税理士業界や会計士業界も、AIに取って代わられるといわれています。現時点ではその気配は全くありませんが(freeeやマネーフォワードの出現により、むしろ仕事の効率化という点でプラスに働いていますし、自分で会計ソフトを操作したものの、うまくいかず税理士に相談するパータンも急増しています)、最近だとCHAT GPTなども出現していますし、いずれは私たちの業界にも大きな変革が迫られるのでしょう。
この大きな変革が訪れるまでに、ある程度顧問先を確保して事務所の体制を整えておく必要があると考えています。従って、いつまで今の集客方法(HPのSEO対策)が通用するかわかりませんが、顧問先獲得に注力しつつ人材を確保しつつ、その時に備えます。