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予告なしに税務調査(無予告調査)が来た場合の対処方法
税務調査は、事前に連絡があったうえで税務調査が行われる場合と予告なしに税務調査を行おうとする場合があります。私が相談を受けたケースであれば8割以上は事前に連絡がある税務調査です。予告がないケースは多くはありませんが、対応を誤ると本来払うべき以上の税金を払う可能性もあるため、今回は予告なしに税務調査を行うケース、いわゆる無予告調査について取り上げます。
【目次】
- 無予告調査の要件
- 無予告調査のより具体的な要件
- 無予告調査に対する具体的な対策
- まとめ
1.無予告調査の要件
実は、無予告調査については税務署が勝手にやることはできず、国税通則法において要件が明記されています。要件をざっくりと申し上げると、事前通知してしまうと証拠隠滅を図る可能性がある場合など税務調査の遂行に支障をきたす場合には事前通知する必要はないということになっています。
国税通則法
(事前通知を要しない場合)第七十四条の十 前条第一項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第三項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第一項の規定による通知を要しない。
2.無予告調査のより具体的な要件
事前通知を要しない場合があることがわかりましたが、これだけではよくわかりません。ではより具体的にどういった場合に事前通知が不要なのでしょうか。この点は法令解釈通達に明記されています。下線部分に注目して頂きたいのですが、この具体的な要件はかなりハードルが高く感じないでしょうか。例えば「調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合」ですが、税務署はどうやって合理的に推認できると主張できるのでしょうか。過去にそのような行動をおこなった納税者でもなければ、なかなか該当しないと思います。そのほかの要件も同様です。この点こそが無予告調査の対策につながります。また、別のコラムでも現金商売の法人や個人事業主が無予告調査の対象になりやすいとお伝えしましたが、実は現金商売しているだけの理由で事前通知してはいけないと明記されています。この点も無予告調査の対策につながります。
国税通則法第7章の2(国税の調査)等関係通達の制定について(法令解釈通達)
第2節 事前通知に関する事項5-7 法第74条の10に規定する「その営む事業内容に関する情報」には、事業の規模又は取引内容若しくは決済手段などの具体的な営業形態も含まれるが、単に不特定多数の取引先との間において現金決済による取引をしているということのみをもって事前通知を要しない場合に該当するとはいえないことに留意する。
5-8 法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為」には、事前通知をすることにより、事前通知前に行った違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、事前通知後は、このような行為を行わず、又は、適法な状態を作出することにより、結果として、事前通知後に、違法又は不当な行為を行ったと評価される状態を生じさせる行為が含まれることに留意する。
5-9 法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(5)までに掲げるような場合をいう。
(1) 事前通知をすることにより、納税義務者において、法第128条第2号又は同条第3号に掲げる行為を行うことを助長することが合理的に推認される場合。
(2) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合。
(3) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、又は偽造することが合理的に推認される場合。
(4) 事前通知をすることにより、納税義務者において、過去の違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、質問検査等を行う時点において適正な記帳又は書類の適正な記載と保存を行っている状態を作出することが合理的に推認される場合。
(5) 事前通知をすることにより、納税義務者において、その使用人その他の従業者若しくは取引先又はその他の第三者に対し、上記(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、又は調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収し又は共謀することを含む。)ことが合理的に推認される場合。5-10 法第74条の10に規定する「その他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(3)までに掲げるような場合をいう。
(1) 事前通知をすることにより、税務代理人以外の第三者が調査立会いを求め、それにより調査の適正な遂行に支障を及ぼすことが合理的に推認される場合。
(2) 事前通知を行うため相応の努力をして電話等による連絡を行おうとしたものの、応答を拒否され、又は応答がなかった場合。
(3) 事業実態が不明であるため、実地に臨場した上で確認しないと事前通知先が判明しない等、事前通知を行うことが困難な場合。
3.無予告調査に対する具体的な対策
無予告調査に来た場合、その理由と根拠を必ず確認しましょう。ただし顧問税理士がいる場合は、そういった話も全くせずに、「税務署です。調査させていただけますか。」と最初に話があれば、「ちょっと待ってください。まずは税理士に連絡します」と答え、税務職員との会話は全て税理士に委ねるべきです。税理士が無予告調査の理由と根拠を聞いた方が絶対に良いからです。例えば、「現金商売だから予告なしに来ました」なんてことを言ったきたら、それはルール違反ですよねと問いただすことが可能になります。さすがにそんなことをいう調査官はいないと思いますが。また色々な理由を言ってきたとしても、上の具体的な要件を満たすことは通常難しいと推測されるので、税務署の職員が合理的な根拠を提示するのはかなりハードルが高いはずです。また仮に当日税務調査を受けることになったとしても税理士が来るまでは事務所にも入れず外で待ってもらいましょう。
顧問税理士がいない場合はなかなかそういった交渉事は難しいと思いますが、とにかく当日税務調査を受けずに日程を改めてもらうよう交渉してください。そもそも1日全く予定がないという事はないでしょうから、予定がある旨をお伝えすればよいと思います。そして日程は1週間から2週間後に設定することをお勧めします。税務調査は準備が大切ですので、私たちのような税理士に相談する時間や税務調査対策に要する時間などを確保する必要があるためです。
顧問税理士がいない事業主の方がこのような対応をするためには、今回取り上げた知識を予め持っていく必要があります。是非、無予告調査の対象になりがちな現金商売の方などは無予告調査の要件について理解しておいてください。この理解があれば税務調査の交渉を優位に進めることも可能です。
4.まとめ
今回は無予告調査について取り上げました。以前は今回取り上げたルールがなかったため税務署側も容易に無予告調査を行っていたようですが、今はルールがあるため安易に無予告調査ができなくなっています。とはいえ、無予告調査の対応を誤るとかなり不利な状況にも陥るので、予め無予告調査に来た場合の決まり事などを整理しておくことをお勧めします。また顧問税理士がいる場合、どのように対処すべきか予め確認しておきましょう。
税理士がいない場合はとりあえず何とかその場を乗り切って頂き、当税理士事務所のような税理士にご相談ください。当税理士事務所は最初の相談は無料で受けています。そして税務調査の立会いを依頼した場合の料金は広告費にお金をかけていない分、他の税理士よりも安く設定していますので是非ご連絡ください。