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税務調査で反面調査されるケース。現金売上など
過去2年間はコロナの影響で税務調査の件数も明らかに少なかったですが、今年はその反動もあり税務調査の件数はそれなりに戻った感触です。当税理士事務所の場合も顧問先の税務調査もありましたし、新規の税務調査もリスティング広告を出していない割にはそれなりの件数に関与しました。東海地区ではない地域で税務調査の立会いを生業にしている人と話すと、7月から12月の間で20件以上立ち会ったと言っていました。私はさすがに時間的に無理です。
今年関与した税務調査でもあったのですが、税務調査では反面調査が行われる場合があります。そこで今回は税務調査に係る反面調査についてお伝えします。
【目次】
- 税務調査における反面調査とは
- 反面調査されるケース
- 現金売上があるケース
- 外注への支払いがあるケース
- 実体のある外注先か
- 外注先が確定申告しているか
- まとめ
1.税務調査における反面調査とは
税務調査において調査対象者の取引内容をより正確に把握するために、調査対象者の取引先に出向き調査することです。私が関与する税務調査でいうと反面調査される確率は2割もありませんが、反面調査されるパターンがありますので今回はそのご紹介です。
反面調査されてしまうと、取引先に税務調査が入っていることがバレてしまいます。勿論、税務署には守秘義務がありますので、調査対象者が無申告だろうが売上除外していようがその事をばらすことはありません。しかし、取引先は良い印象は抱かないでしょうし手間もかかるので、できれば反面調査は避けてほしい所です。
その結果、時々あるのがその取引先に支払った外注費は否認してもいいので反面調査には行かないでほしいと交渉するケースがあります。今後も継続して取引するためといった理由で。この場合は重加算税も追加される可能性が極めて高いです。
2.反面調査されるケース
1.現金売上があるケース
現金売上があり、かつそれなりの金額が見込まれる場合は現金売上先に反面調査される可能性があります。理由は単純で売上漏れの可能性があるためです。例えば、なぜか8月だけ売上が計上されていなければ疑いますよね。勿論、領収書が保管されていなければさらにその可能性は高まります。そして売上漏れがあれば税務署としても重加算税に導くことが容易ですので、必ずチェックされる項目です。
請求書がありかつ通帳に入金される取引先の場合、正しい数値を把握することが可能なので反面調査に行かれたことはないような気がします。少なくとも立ち会った事業者からそのような報告を受けたことはありません。
2.外注への支払いがあるケース
建設業の場合、一人親方(外注)を活用するケースは非常に多いです。その他にも運送業、システム業など外注を活用するケースは至る所にあります。私の法人顧問先で考えてみると、システムエンジニアを一人で営んでいる法人を除くと全ての会社が外注先を活用しています。
外注への支払いは税務調査では必ずチェックされる項目です。なぜ税務調査で必ずチェックされるのでしょうか?それは外注が絡む取引は不正の温床になりがちだからです。その理由を2つの視点に基づき説明します。
1.実体のある外注先か
税務署の調査官が外注費について検討する際は、支払方法(振込か現金支払か)、証憑の有無(請求書や領収書など)、支払先の素性(名前、住所、連絡先)を確認します。その結果、例えば以下のような事象が発生することがあります。
- 本当は外注先に支払っていない(架空の外注費)
- 明かせない外注先が存在する
架空の外注費は論外ですが、明かせない外注先というのは実務では結構遭遇します。どうして明かせないかというと、その外注先が確定申告をしていないからです。その外注先が確定申告していない事がバレてしまうと、今後仕事を依頼することができないため明かせないという事のようです。どちらにせよグレーゾーンでも何でもない単なる脱税ですので、経費否認されるだけでなく重加算税も課されるため明らかに誤った戦略です。税務調査に来ないだろうという甘い考えが大前提だったのでしょうが。
2.外注先が確定申告しているか
元請に税務調査が入ると、その下請けが税務調査に入られるというパターンをこれまで何度も見てきました。つまり、多額の外注費を計上している会社や個人事業主は、外注先の情報を把握するために税務調査の対象にするというのはよくある事です。従って、多額の外注費を計上している事業者は税務調査に選定されやすいという事を理解しておきましょう。
前置きが長くなりましたが、反面調査の対象になりやすい外注先はどういったケースでしょうか。私が経験した税務調査でいうと、①現金支払いの外注先、②支払額が多い外注先、③支払額が不明瞭な外注先、④証拠不十分の外注先(領収書が一部紛失している等)などでしょうか。
③は無申告の税務調査でよくあるのですが、無申告の事業者は全ての請求書や領収書を保管していない事も多いので、正しい金額を把握するために反面調査に行くケースがあります。
請求書がすべて残っていて、かつ支払も振込であれば反面調査に行かれる可能性はかなり低くなりますので、そのような取引形態を強くお勧めします。
3.まとめ
反面調査に入られてしまうとその取引先との関係が悪化する可能性も否定できません。とはいえ、正確な金額を把握するための資料が残っていない場合は反面調査を拒否することが難しいのが現状です。
従って反面調査の対象にならないように、現金売上をなくす、外注先への支払いを振込にするといった事を予め実行しつつ(要は反面調査の必要性がない状態を予め作っておく)、その状態を構築する前に税務調査に選定された場合は、主要な取引先には「税務調査に選定されたので税務署から連絡があるかもしれません」と予め伝えたり、税務署の調査官にも「もし反面調査するようでしたら事前に教えてほしい。取引先に迷惑をかけたくないので」と交渉するのは全く問題ありません。