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会社を複数設立するメリットとデメリット
当税理士事務所は開業して2年も経過していない事もあり、顧問先も若い会社が多いです。ほとんどの会社が創業して3年以内の会社です。にも関わらず、その1社の社長は、去年新たな会社を設立しました。その目的は、①事業内容が異なる、②最低でも2年間の消費税の免税メリットを享受する、③インボイス制度適用後も免税メリットを享受できる業種である、の3点でしょうか。
これから会社を複数保有するメリット・デメリットをお伝えしますが、私個人としてはメリットが大きいと認識しています。だからこそ、私自身も複数の会社経営に携わりたいという気持ちはあるものの、これ以上忙しくなるのは時間的に難しいので、とりあえず現状維持になりそうです。
【目的】
- 会社を複数を保有するメリット
- 法人税の軽減税率
- 交際費を使い倒す
- 少額減価償却資産の特例
- 非常勤役員の活用
- セーフティー共済の活用
- 消費税の免税(飲食店など)
- 会社を複数を保有するデメリット
- 税理士費用などが増える
- 経理などの手間が増える
- 租税回避とみなされる
- まとめ
1.会社を複数を保有するメリット
1.法人税の軽減税率
資本金1億円以下の中小法人が対象になりますが(多くの会社が該当します)、年間所得が800万円以下については税率が15%に軽減されます。年間所得800万円を超える部分については、23.2%です。会社を複数持つことで、この制度をうまく活用することができます。つまり、年間所得が800万円を超えるような会社について、その会社を複数に分割することで、各会社の所得を800万円未満に抑えることでき、全額軽減税率を適用することが可能になります。
2.交際費を使い倒す
中小法人であれば、年間800万円までの交際費を損金処理することができます。ほとんどの会社が800万円超えないでしょうが(私の顧問先についても1社も超えていません)、もし超える会社があるのであれば、会社を分割することで交際費の枠を増やし、より多額の交際費を損金処理することが可能になります。
3.少額減価償却資産の特例
多くの企業が利用している特例です。中小法人であれば、取得価額30万円未満の固定資産を1年で償却できる制度です。1つネックがあり、それが年間合計300万円までしか認められないという点です。そこで、会社を分割することで、その枠を増やすという法人税の軽減税率や交際費と同じ効果を得られます。
4.非常勤役員の活用
私は、このメリットが結構大きいなと考えています。非常勤役員を活用することで、社会保険に追加加入することなく、自分の所得を増やすことができます。極端な例ですが、10社の非常勤役員として勤務し、各社から月10万円の役員報酬を受け取ると、月100万円分については社会保険の対象になることなく、所得を増やすことが可能です。
5.セーフティー共済の活用
セーフティー共済は、1社800万円まで積み立てることができます。会社を複数にすることで、積立額を増やすことが可能です。そして、各社から退職金を受け取るときに掛金を解約することで、より多額の退職金を受け取ることが可能になります。
6.消費税の免税(飲食店など)
例えば、私が飲食店の経営者になったとします。飲食店については、インボイス制度が始まったとしても売上が1000万円未満であれば、免税事業者を選択できる余地があります(理由は売上先が個人だから)。もし、今私が経営する会社(課税事業者)にこの飲食業を含めてしまうと、既存事業の売上と飲食業の売上どちらにも消費税がかかってしまいます。しかし、飲食業を別会社にした場合、この飲食業の売上については、免税事業者を選択できる余地があり、消費税負担を軽減することが可能になる場合があります。
2.会社を複数を保有するデメリット
1.税理士費用などが増える
顧問税理士をつけるという前提に立つと、会社を複数保有した場合、それぞれに対して顧問税理士を付けることになるので、顧問料は1社の場合と比較すると増えてしまいます。それ以外にも社労士への報酬や、様々な支払いが増えてしまう可能性があります。
2.経理などの手間が増える
会社が1つと複数では、経理や人事等の手間が違います。例えば、税務署へ提出する資料は会社数に応じて増えますし、社会保険の手続きも同様です。その結果、人件費も増えるかもしれません。
3.租税回避とみなされる
税務調査にくるまでは関係ありませんが、税務調査に来た時に問題が発生することがありえます。それは、設立した会社間で取引があると、その取引が利益の調整とみなされた場合に税務署が否認される可能性があるためです。会社間で取引がなければ(あったとしてもちょっとした取引しかなければ)、特に問題は起きません。
3.まとめ
1つの事業がうまくいきだすと、別の事業にも進出する場合があると思います。その際、同じ会社で事業を行うのか、新たに会社を設立するのかという選択が必要です。私の顧問先の場合、新たに会社を設立することを選択しましたが、ケースバイケースでしょうから、その都度、顧問税理士などの専門家に確認する事をお勧めします。