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税務調査の可能性は?法人成りした個人事業主の場合
以前のコラムで、個人事業主が法人成りを検討する際に注意することをお伝えしました。今回は、法人成り前の個人事業主の税務調査について、お伝えします。税務調査の相談を受けていると、この点誤解している方も多いので、ご注意ください。法人成りを検討する上での留意事項については、以下のコラムを参照してください。
【目次】
- 個人事業主を廃業して、法人成りすると税務調査はこない?
- 税務署は個人事業主が廃業したことをどうやって把握するのか
- 個人事業の帳簿書類等の保管はどうする
- まとめ
1.個人事業主を廃業して、法人成りすると税務調査はこない?
そんなことはありません。会社を設立して、個人事業を廃業した場合、もう税務調査は来ないのではと勘違いされている方もいるようですが、そうではありません。むしろ、廃業した後の方が税務調査にくる確率は高いと思います。それは、法人成りせずに廃業した場合でも同じです。その理由はなぜでしょうか?それは、その時に税務調査をしないと、個人事業主の期間の税務調査ができなくなってしまうためです。つまり、税務署の立場からすると、税務調査にはいる最後のチャンスであるため、税務調査の対象にしないといけないと思うわけです。以前、国税のOBから聞いた話だと、少数ではあるものの一定数が、個人事業主時代の無申告や過少申告を解消するためといった理由で法人成りをしていることもあるようなので、この点からも確率は高いと考えられます。そして、その確率は、廃業した直後が最も高く、1年過ぎるごとにその可能性は低くなり、廃業して3年経過すれば、確率は一気に下がると考えます。
3年経過すれば税務調査の対象になる確率が大きく下がると推測する点ですが、それは以下の理由からです。2017年12月末に個人事業を廃業し、2018年1月に法人成りしたと仮定します。税務調査は、直近3年分をまず調査対象としますので、それを前提にお伝えすると、以下のようになります。あくまで個人事業主に対する税務調査です。法人に対する税務調査は今回は関係ありません。
2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | |
個人事業 | ⇒ | ⇒ | ⇒ | ||||
法人 | ⇒ | ⇒ | ⇒ | ⇒ |
・2018年度に税務調査が来た場合:2015年度~2017年度の税務調査(3年分)
・2019年度に税務調査が来た場合:2016年度~2017年度の税務調査(2年分)
・2020年度に税務調査が来た場合:2017年度の税務調査(1年分)
税務署の立場からすると、たくさん税金を取りたいので、2018年に税務調査に入る確率が高くなるはずです。厳密にいうと、税金の時効は5年(偽りその他不正の行為が発覚した場合は7年)ですので、その間は税務調査の対象にはなり得ますが、現実問題として、税務署が看過できない不正等を認識しない限りは、廃業後して3年目以降は、相当確率は低くなると思います。
2.税務署は個人事業主が廃業したことをどうやって把握するのか
廃業する場合、個人事業の廃業届出書を税務署に提出しなければなりませんので、税務署は、その廃業届で把握することが一般的です。廃業届の提出を失念するケースも多いので、必ずしもこれで把握できるわけではありませんが。他にも、青色申告であれば、青色申告決算書に月次の売上を記入する欄がありますので、8月までしか売上を計上していなければ、8月で廃業したんだろうなと税務署は推測します(12月末に廃業したらわからないでしょうね)。白色申告の場合、月次の売上は記入しませんが、8月末で廃業した場合、売上が8か月分しかありませんので、税務署は申告した売上金額が少ないという事は把握できます。この場合、売上を過少に計上しているのではと別の意味で疑われる可能性もありますが…。それ以外にも、法人1期目の申告書から、判明する可能性も否定できませんが、個人課税部門と法人課税部門は必ずしも密に連携している訳ではないため、可能性は低い気がします。
3.個人事業の帳簿書類等の保管はどうする?
という事で、法人成りした場合、むしろ税務調査の対象となる可能性が高いと推測されることから、個人事業の帳簿書類等はしっかり保管しましょう。廃棄などは以ての外です。その状態で税務調査にあたった場合、消費税の仕入税額控除の問題を含め、かなり厳しい結果になってしまいます。
4.まとめ
今回は、法人成りした場合の個人への税務調査の可能性についてお伝えしました。法人成りした場合は、むしろ税務調査の対象となる可能性は高いと考えられますので、法人成りすれば税務調査に当たらないだろうと勝手に判断し、適当な申告はしないようにしてください。
税務調査については、当税理士事務所は最初の相談は無料で受けていますので、その無料相談でも可能な限りの事はお伝えします。そして、税務調査の立会いを依頼した場合の料金は広告費にお金をかけていない分、他の税理士よりも安く設定していますので、是非ご連絡ください。