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税務調査においてクレジット請求明細書は証拠として利用できる?
税務調査で大事なのは、とにかく納税者に有利な情報や証拠を保管しておくことです。特に税務調査で経費として認めてもらう為には、何かしら証拠がないと難しいです。例えば、現金で支払った外注費を経費として認めてもらうには、先方からの請求書や領収書が必要でしょう。何も証拠がないのに10万円外注費として払いましたと言われても、本当に?となってしまいます。ではクレジット請求明細書は証拠になるのでしょうか。今回は税務調査におけるクレジット請求明細書についてご紹介します。
【目次】
- クレジット請求明細書の特徴
- クレジット請求明細書は領収書にならない
- 法人税および所得税
- 消費税
- まとめ
1.クレジット請求明細書の特徴
クレジット会社から送られてくる(もしくは利用者自らがネットで確認する)クレジット請求明細書の特徴は、購入した日付、購入したお店、購入した金額(総額)という情報がリスト表示されているだけで、何を購入したかという取引内容が表示されていないはずです。例えば、9/15にカーマで2500円支払ったという事はわかりますが、マスクを購入したのか食料品を購入したのか、何を購入したか分かりません。この取引内容がわからない点が特に消費税の計算上ネックになってきます。
2.クレジット請求明細書は領収書にならない
上記の通り、クレジット請求明細書では何を購入したかがわからないので、何を購入したのかを別途証拠として残しておく必要があります。クレジット決済で食事をしたとき、工具などを購入したとき、購入したものが内訳として表示されるレシートなどをもらえるはずです。そのような購入明細が載っているものが貰えればよいですが、もらえない場合もあるかもしれません。その場合は何を購入したか但し書き部分に記載してもらったり、お客様控えしかもらえないのであればそこにご自身で何を購入したかメモ書きしておいてください。
結構有名な方が執筆している節税の本を読むと、クレジットカードの明細書は領収書の代わりになると書かれていました。その本で書かれているクレジットカードの明細書が何を意味するのか明確にはわかりませんが、カード会社から送られてくるクレジット請求明細書を指しているのであれば、その本は間違っていると思います。なぜなら何を購入したかわかりませんので。購入したお店で発行されるクレジットカード利用明細書を指しているのであれば正しいですが。
1法人税および所得税
法人税および所得税については、領収書等の保管要件が法律で明記されていません。したがって、領収書等を保管していなくてもクレジット請求明細書だけで経費として認められる可能性はあるものの、何を購入したかわからない以上、税務調査では何を購入したか納税者が説明できなければ経費として認めてもらうことは難しいでしょう。金額が大きいものであれば何を購入したか覚えている可能性が高く、認めてもらいやすいかもしれません。また、飲食店であれば食事したことが明らかなので、クレジット請求明細書だけで認めてもらうことも可能です。ただし事業に必要な飲食であることは立証する必要があります。
2.消費税
消費税については仕入税額控除の要件が明確にあり、クレジット請求明細書はその要件を満たしていないと国税庁のホームページでも明記されているので、法律を厳密に適用すれば、領収書等がない限り全く経費として認めてくれないことになります。税務調査でも、帳簿要件は目をつぶってくれても請求書の要件は許容してくれないことが多いです。つまり、領収書等が残っている経費だけ消費税の計算上経費として認めてくれるということです。
現時点では、税込3万円未満であれば請求書等の保存が求めれませんので大丈夫なことも多いですが(要件を満たした帳簿のみでOK)、インボイス制度が始まるとこの例外規定もなくなりますので、今から適切に対応していくことをお勧めます。とはいえ税理士としてもこの税込3万円未満の例外規定は残してほしいですが。
法人税および所得税については、白色申告を前提としますが、推計課税という考え方があります。税務調査でよく使われる手法で、納税者に有利な推計方法を構築できれば、納税額をかなり減らすことも可能です。ポイントは、この推計課税も消費税が対象外であることです。従って、領収書等がほとんど残っていない税務調査に立ち会うと、納税者に有利な推計課税で話を進めることで、法人税もしくは所得税はかなり税額を減らすことができたものの、消費税は残っている領収書相当しか仕入税額控除を認めてくれなかったため、消費税はかなり高額になってしまったというのは結構多いです。法律に明記されている以上、交渉がとても難しいため(国税不服審判所まで粘っても、100%負けます)。
3.まとめ