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一人親方の税務調査の事例
下記のコラムで、一人親方の税務調査では、売上、外注費、交際費、家事按分が調査の対象になりやすいとお伝えしました。今回は、売上と外注費について、税務調査について指摘を受けた具体的な事例をお伝えします。交際費及び家事按分については、下記のコラムで解説した内容で十分だと思いますので今回は取り上げません。
一人親方の税務調査のポイントは?売上、外注費、交際費などについて
【目次】
- 売上高
- 入金した月で売上集計(重加算税可能性低)
- 入金した金額で売上集計(重加算税可能性低)
- 毎年売上を過少に集計(重加算税可能性低~高)
- 住宅ローンを組む時だけ正しく売上集計(重加算税可能性高)
- 外注費
- 現金で支払ったが領収書がない(重加算税可能性低~中)
- 支払実績がない、つまり架空経費(重加算税可能性低~高)
- 支払ったのに経費処理していない(重加算税可能性低)
- まとめ
1.売上高
1.入金した月で売上集計(重加算税可能性低)
私が税務調査から初めて関わった一人親方の場合、9割以上の確率で入金ベースで売上を集計しています。一般的には、仕事をした月の翌月もしくは翌々月にお金が入金されるケースがほとんどです。この場合、仕事をした月の売上として処理しなければなりませんが、入金された月に売上計上される方がとても多いのが実情です。このエラーは、売上の一部を計上しなかったといった意図した不正ではなく、単純な知識不足でしかないので、税務署の調査官から怒られることもありません。
2.入金した金額で売上集計(重加算税可能性低)
元請からの支払通知書だったり、一人親方が発行した請求書を確認すると、売上から諸経費(外注費、ガソリン代、旅費交通費等)を差し引いた金額が入金されている場合があります。この場合、諸経費を差し引く前の金額で売上計上しなければなりませんが、入金額で売上計上しているケースが散見されます。売上と経費を両建て処理するか売上として差額で処理するかの違いでしかなく、所得金額に違いはありませんが、この処理の違いで売上1,000万円超えてしまうと、消費税の課税対象になってしまうので、一気に追徴税額が増えてしまいます。また、簡易課税を採用していた場合、売上が増えてしまう為、その分だけ消費税の支払いが増えてしまいます。特に、売上1,000万円を超えるケースでは、消費税負担を回避するために、意図して差額を売上計上していたのではと疑われる可能性がありますが、私が立ち会った税務調査では、単純に知識不足の方ばかりでした。この場合、重加算税は課されません。
3.毎年売上を過少に集計(重加算税可能性低~高)
当税理士事務所に限らず、税務調査に強い税理士に依頼するのは、売上を過少に計上しているなど、何かしらやばい!と納税者が考えているからです。従って、私に相談にくる一人親方についても、毎年のように売上を過少に申告しているケースは多いです。そして、この売上を過少に申告するパターンをより細分化すると、その細分化されたパターンで重加算税の可能性がかわってきます。
重加算税の可能性が低い例としては、私が関与した案件であれば、本人が超絶適当なパターンです。請求書も発行していないし、売上入金口座も定期的に記帳していないような場合、そもそも正しい売上を集計できないので、税務調査に慣れた税理士が立ち会い、やり方を間違えなければ重加算税が課される可能性は低いです。それ以外のパターンについては、無料相談時にお伝えします。
4.住宅ローンを組む時だけ正しく売上集計(重加算税可能性高)
相談で終わるケースも含めると、結構多い事例です。住宅ローンを組む時は、ある程度所得がないと取組できないので、その時だけ正しい売上で申告するパターンです。これは、売上を正しく集計する能力があるにも関わらず、他の年は過少な売上で申告しているので重加算税が課される可能性が高いです。このケースでは、税務調査の実地調査前に修正申告を提出することをお勧めします。私が関与した案件も、事前に修正申告書を提出することで、重加算税を回避することができました。
2.外注費
1.現金で支払ったが領収書がない(重加算税可能性低~中)
実際に現金で払った事は間違いないんだけど、領収書を入手できないケースが散見されます。誰にいくら払ったかを言える場合、その情報を調査官にお伝えし、反面調査などに行ってもらう事で何とか認めてもらう交渉をしますが、誰にいくら払ったかを言えない場合が問題となります。計上した外注費は当然に認めてもらえないものの、私が立ち会ったケースでは重加算税を課されたことはありません。しかし、言えないではなくそもそも架空の可能性もあるので、重加算税が課される可能性が低いとは言えないというのが私の見解です。
2.支払実績がない、つまり架空経費(重加算税可能性低~高)
例えば、毎月人工代を支払っていると思い込んでいる外注先があって、ある月の領収書がなかったとします。本当はその月に仕事を依頼していなかったが、この外注先は毎月仕事を依頼しているという思い込みから、適当な金額で経費処理した場合はどうでしょうか。これは意図して架空の外注費を計上したわけでなく、誤った思い込みで計上しているので(本人は正しいと思っている)、重加算税の可能性は高いとは言えません。しかし、支払実績のない外注費の経費処理はそもそも架空経費ですので、重加算税のリスクは慎重に検討する必要があります。
3.支払ったのに経費処理していない(重加算税可能性低)
納税者に不利なことを自らするの?と疑問に思うかもしれません。これには理由があります。その理由とは、売上を過少に申告するために、外注費も併せて過少に申告したという事情がある点です。税務署の調査官は、売上の過少計上を見つけたら、重加算税を課そうと躍起になります。しかし、売上の過少申告について、納税者が意図してやったと言ってくれず、直接的な証拠も見つけられない場合、本来は重加算税を課すことが難しくなります(税理士がついていなければ重加算税が課される可能性が高いですが)。しかし、優秀な調査官であれば、売上に係る金額や資料から直接的な証拠を入手する戦略をいったん停止し、外注費の申告方法から間接的な証拠を入手し、重加算税を課すための糸口を探す可能性もあります。とはいえ、ハードルはかなり高いのですが。
岐阜県の一人親方の税務調査に立ち会った時、まだ2年目か3年目位の調査官でしたが、重加算税に関する直接的な証拠は入手できなかったものの、外注先への反面調査等をおこない、間接的な証拠から何とか重加算税を課そうとしていました。結果的には、重加算税を回避できましたが、とても優秀な調査官でした。
2.まとめ
今回は、一人親方の税務調査における売上と外注費の事例についてお伝えしました。一人親方は、確定申告を作ることを面倒だと感じる方も多く、適当な申告をしてしまう方が多いです。税務署もそれがわかっているので、税務調査に選定されやすいです。一人親方は税務調査の対象に選定されやすいという点はしっかりと理解しておいてください。当税理士事務所は、一人親方の税務調査の経験はとても豊富です。税務調査に関与した一人親方の大部分は、その後顧問先になっています。税務調査対応に満足して頂いたからだと自負しています。税務署から連絡があった方で、ちょっとやばいかもという思いがあるようでしたら是非ご相談ください。また、税務調査に来る前に、過去の申告書を訂正したいというニーズにも対応できます。