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税務調査の立会前に修正申告を提出すれば必ず重加算税を回避できるのか
当初申告で売上を除外していた方から税務調査の相談を受けると、ほぼ全員が重加算税について質問をします。そして事前に修正申告を提出した方がよいのかについても同様です。これまで重加算税については様々な視点でコラムを書いてきましたが、今回は事前に修正申告を提出することで重加算税が回避できるのかについてもう少し詳しくご説明します。
【目次】
- 修正申告書と重加算税の関係
- 税務署に否認されることが予想される状況とは
- まとめ
1.修正申告書と重加算税の関係
国税通則法によれば、更正があるべきことを予知した上で修正申告した場合、重加算税の対象と明記しています。少しわかりにくいのですが、ざっくりいうと売上除外などの税務署に否認されることが予想される状況で修正申告を提出した場合、重加算税が課されるということです。となると、この税務署に否認されることが予想される状況とはどういった状況かが問題となります。
国税通則法
(重加算税)第六十八条 第六十五条第一項(過少申告加算税)の規定に該当する場合(修正申告書の提出が、その申告に係る国税についての調査があつたことにより当該国税について更正があるべきことを予知してされたものでない場合を除く。)において、納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたときは、当該納税者に対し、政令で定めるところにより、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額(その税額の計算の基礎となるべき事実で隠蔽し、又は仮装されていないものに基づくことが明らかであるものがあるときは、当該隠蔽し、又は仮装されていない事実に基づく税額として政令で定めるところにより計算した金額を控除した税額)に係る過少申告加算税に代え、当該基礎となるべき税額に百分の三十五の割合を乗じて計算した金額に相当する重加算税を課する。
2.税務署に否認されることが予想される状況とは
実務で大事なのは、税務調査の連絡があってから、実際に税務調査の立会いまでに提出した修正申告がこの税務署に否認されることが予想される状況にあたるか否かです。その点、国税庁ホームページには以下の通り明記しています。
法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)
(修正申告書の提出が更正があるべきことを予知してされたと認められる場合)
2 通則法第65条第1項又は第5項の規定を適用する場合において、その法人に対する臨場調査、その法人の取引先の反面調査又はその法人の申告書の内容を検討した上での非違事項の指摘等により、当該法人が調査のあったことを了知したと認められた後に修正申告書が提出された場合の当該修正申告書の提出は、原則として、これらの規定に規定する「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当する。
(注) 臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として「更正があるべきことを予知してされたもの」に該当しない
つまり、税務調査の立会い等で仮装隠蔽を伴う売上の過少計上の指摘を受け、そのあとに修正申告を提出した場合は、否認されることが予想される状況(更正があるべきことを予知してされたもの)に該当するが、税務調査の連絡があった後に修正申告を提出した場合は、原則として税務署に否認されることが予想される状況に該当しないとされています。この原則としてというキーワードが気になりますが、基本的には税務調査立会前に修正申告書を提出すれば、重加算税は回避できる可能性が高いです(原則としてなので、絶対ではない)。私が関与した税務調査でも、事前に修正申告したケースで重加算税を受けた事例はありませんので、税務調査立会前の修正申告は有効な手段と考えています。
3.まとめ
もう1点の論点として、他の税理士のコラム等でもよく指摘されている点が立証責任です。過去の裁決例で納税者に立証責任があると判断されていますので、税務署に否認されることが予想される状況ではないことは、納税者が立証しなければならない点は留意事項として覚えておいてください。とはいえ、先ほど書いた通り、税務調査立会前に修正申告すれば、原則として重加算税の対象にならないとされていますので、事前に修正申告書を提出するか否かは様々な視点から検討が必要であるものの、税務調査はとにかく重加算税を避けなければならないため、事前の修正申告は有効な手段だと思います。
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