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会社設立後の手続きについて。都道府県、年金事務所編
前回、会社設立後の税務署への提出資料についてお伝えしました。今回は、県税事務所、市役所、年金事務所、そして労働基準監督署等に提出する資料についてお伝えします。
【目次】
- 県税事務所及び市役所への提出
- 年金事務所への提出
- 労働基準監督署への提出
- ハローワークへの提出
- まとめ
1.県税事務所及び市役所への提出
法人設立届出書
税務署への提出資料にもありましたが、県税事務所及び市役所にも法人設立届出書を提出します。設立した法人が届出書を提出することで、県や市が法人が設立されたことを認識することができます。県や市が法人の存在を認識できないと、法人県民税や法人市民税の回収漏れにつながる可能性があります。税務署に提出する場合と同様、定款の写しの提出が必要で、謄本も必要であることが多いです。提出先によって異なる可能性があるので、確認する事をお勧めします。
2.年金事務所への提出
法人は、厚生年金保険及び健康保険の加入が法律で義務づけられています。そのため、会社設立後遅滞なく、新規適用届等を提出しなければなりません。提出資料は、基本的に以下の3点セットです。この手続きは社労士に依頼することも可能ですが、それほど難しくありませんので、手続きをおこなう時間があるのであればご自身で対応するのもありです。
健康保険・厚生年金保険 新規適用届
この届け出は、会社を設立した時に提出するものです。この新規適用届を提出することで、設立した会社に健康保険及び厚生年金保険が適用されることになります。
健康保険・厚生年金保険 新規適用届
健康保険・厚生年金保険 新規適用届(記入例)
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
役員が役員報酬を受け取る場合、社会保険の加入要件を満たす従業員がいる場合に記入します。例えば、社会保険の加入要件を満たさない非常勤役員やパートなどは記入しません。レアケースですが、役員報酬を0円に設定している場合など、社会保険の加入要件を満たす人がいない場合は提出する必要はありません。
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届
話がそれますが、役員報酬を0円にした場合、別の会社で社会保険に入っている場合などを除き、国民健康保険及び国民年金に加入する必要があるため、役員報酬は少なくてもよいので設定した方が良いと思います。個人事業でお金を稼いでいる方が、会社を設立し役員報酬を低く設定することで社会保険の負担を減らすというやり方はよくありますし、よく相談も受けます。
健康保険被扶養者異動届
上記の資格取得届を提出する役員や従業員に被扶養者がいる場合に提出します。被扶養者としては、配偶者と子供が多いですね。あとはご両親などをうまく活用することで節税を図る方もいます。
被扶養者(異動)届
新規適用届は、会社設立時に提出しますが、従業員の入退社、従業員の被扶養者の増減があると、被保険者資格取得届や被扶養者異動届はその都度、提出することになります。
今年、当税理士事務所が5年分の期限後申告を対応した法人があります。5年以上社会保険に未加入でしたが、過去に遡って保険料を徴収されることはありませんでした。しかしながら、社会保険への未加入が発覚した場合、過去2年にさかのぼって保険料を徴収される場合もあるようなので、早めに対応しましょう。
3.労働基準監督署への提出
労災保険の加入に関する手続きです。労災保険は、従業員を採用する場合に加入しなければなりません。そのため、当税理士事務所の顧問先にもいますが、社長一人の会社であれば(奥様が非常勤役員であったとしても)加入は必要ありません。そのような会社は、会社設立時には申請が不要ですが、会社が大きくなって従業員を雇うことになれば改めて手続きが必要になります。
保険関係成立届
労災保険の適用を開始する際に提出する書類です。労働基準監督署に出向かなくても厚生労働省のホームページから申請することも可能です。出向くのは時間がもったいないのでホームページからの申請をお勧めします。
労働保険の電子申告
労働保険概算保険料申告書
各従業員に支払う見込みの賃金総額(1年分)を記入します。加入条件に該当する被保険者の見込み賃金を求め、労災保険は労災保険料率を、雇用保険は雇用保険料率を乗じて、それぞれの保険料を算出します。
先ほど電子申告をお勧めしますと言いましたが、インターネットに慣れていない方もいると思います。その場合は、以下の労働基準監督署の所在地一覧を参考に、行先を把握してください。
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧
4.ハローワークへの提出
雇用保険の加入に関する手続きです。労災保険とは異なり、全ての従業員が対象という訳ではありません。加入要件は以下の通りです。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。
- 期間の定めがなく雇用される場合
- 雇用期間が31日以上である場合
- 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
- 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合 ( 注 )
[(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。]- 1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
雇用保険適用事務所設置届
雇用保険の適用を開始する際に提出する書類です。
雇用保険被保険者資格取得届
新しく従業員を雇用したときに提出します。複数人を雇用する場合は、人数分の届出が必要になるため、注意してください。
5.まとめ
今回は会社設立後に県税事務所や年金事務所などに提出する資料についてお伝えしました。保険関係は社労士の範疇なので、正直に言うとあまり詳しくはありません。そのため、わからないことがあると、連携している社労士に教えてもらっています。当税理士事務所と関連する法人の場合、公認会計士、税理士、宅地建物取引士の資格は有しますが、社会保険労務士、行政書士、弁護士の資格を有するものはいないので、その他の士業に関わる手続きはその道のプロにお願いしています。自分でできることは限られているので、信頼できる士業と連携して仕事をしていくことはとても大切だと感じます。