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一括償却資産の償却方法について
実務ではそれほど活用するケースは少ないのですが、今回は一括償却資産についてご紹介します。活用するケースが少ない理由は、当税理士事務所が関与するような中小企業(青色申告で、資本金の額が1億円以下)は、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、取得価額の全額を取得した年度の経費にすることができる制度があるためです。少額減価償却資産と呼ばれるものです。詳細は国税庁ホームページをご覧ください。
No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
このような事情もあるため、活用するケースがそれほどありませんが、ちょっとした注意点もありますので今回ご紹介します。
【目次】
- 一括償却資産とは
- 一括償却資産の償却方法ー法人の場合
- 一括償却資産の償却方法ー個人の場合
- まとめ
1.一括償却資産とは
一括償却資産とは、取得価額が20万円未満の減価償却資産を事業供用後、耐用年数によらず一律3年間で減価償却することができる制度をいいます。この3年間というのは法人と個人で微妙に異なるので、その点は後ほど説明します。
中小企業の場合、30万円未満の減価償却資産は一括で償却できるとお伝えしました。そのため、当税理士事務所の顧問先も大部分がこちらを選択します。しかし、一括償却資産を選択する場合もあります。そのケースは以下の通りです。
- 少額減価償却資産は1事業年度300万円が限度なので、それを超える場合
- 少額減価償却資産と異なり、一括償却資産は償却資産税の対象外なので、償却資産税の負担を減らしたい場合
2.一括償却資産の償却方法ー法人の場合
法人税法施行令には、各事業年度の所得の計算上、取得価額を36で除した金額に対象事業年度の月数を乗じて計算すると規定されています。この施行令からわかるのは、少なくとも購入した事業年度については、購入した時期によって経費にできる金額が異なるという事になります。経費にできる金額の合計は変わらないので大した事ではありませんが。
法人税法施行令
(一括償却資産の損金算入)第百三十三条の二 内国法人が各事業年度において減価償却資産で取得価額が二十万円未満であるもの(第四十八条第一項第六号及び第四十八条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの並びに前条の規定の適用を受けるものを除く。)を事業の用に供した場合において、その内国法人がその全部又は特定の一部を一括したもの(適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(以下この条において「適格組織再編成」という。)により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この項において「被合併法人等」という。)から引継ぎを受けた当該被合併法人等の各事業年度において生じた当該一括したものを含むものとし、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配(適格現物分配にあつては、残余財産の全部の分配を除く。以下この条において「適格分割等」という。)により分割承継法人、被現物出資法人又は被現物分配法人(以下この条において「分割承継法人等」という。)に引き継いだ当該一括したものを除く。以下この条において「一括償却資産」という。)の取得価額(適格組織再編成により被合併法人等から引継ぎを受けた一括償却資産にあつては、当該被合併法人等におけるその取得価額)の合計額(以下この項及び第十二項において「一括償却対象額」という。)を当該事業年度以後の各事業年度の費用の額又は損失の額とする方法を選定したときは、当該一括償却資産につき当該事業年度以後の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入する金額は、その内国法人が当該一括償却資産の全部又は一部につき損金経理をした金額(以下この条において「損金経理額」という。)のうち、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除しこれに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額(適格組織再編成により被合併法人等から引継ぎを受けた当該被合併法人等の各事業年度において生じた一括償却資産につき当該適格組織再編成の日の属する事業年度において当該金額を計算する場合にあつては、当該一括償却資産に係る一括償却対象額を三十六で除し、これにその日から当該事業年度終了の日までの期間の月数を乗じて計算した金額。次項において「損金算入限度額」という。)に達するまでの金額とする。
3.一括償却資産の償却方法ー個人の場合
所得税法施行令には、各事業年度の事業所得の計算上、取得価額を3で除した金額を必要経費として算入すると規定されています。この施行令からわかるのは、どの時点で購入したとしても、取得価額/3を3年に渡って経費処理することになります。
所得税法施行令
(一括償却資産の必要経費算入)第百三十九条 居住者が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の用に供した減価償却資産で取得価額が二十万円未満であるもの(第百二十条第一項第六号及び第百二十条の二第一項第六号(減価償却資産の償却の方法)に掲げるもの並びに前条の規定の適用があるものを除く。)については、その居住者が当該減価償却資産の全部又は特定の一部を一括し、その一括した減価償却資産(以下この条において「一括償却資産」という。)の取得価額の合計額をその業務の用に供した年以後三年間の各年の費用の額とする方法を選択したときは、第四款(減価償却資産の償却)の規定にかかわらず、当該一括償却資産につき当該各年分の不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上必要経費に算入する金額は、当該一括償却資産の取得価額の合計額(以下この条において「一括償却対象額」という。)を三で除して計算した金額とする。2 前項の規定は、一括償却資産を業務の用に供した日の属する年分の確定申告書に一括償却対象額を記載した書類を添付し、かつ、その計算に関する書類を保存している場合に限り、適用する。3 居住者は、その年において一括償却対象額につき必要経費に算入した金額がある場合には、その年分の確定申告書に、第一項の規定により必要経費に算入される金額の計算に関する明細書を添付しなければならない。
4.まとめ
今回は、一括償却資産についてお伝えしました。法人と個人では少し計算方法が異なることがわかります。間違ったとしてもトータルで見れば経費にできる金額に差異はありませんが、間違いやすい事項ではあるのでご注意ください。当税理士事務所では、少額減価償却資産の限度額(300万円)と償却資産税の負担額を考慮した上で、顧問先とどちらを選択するか決めています。私の経験上、税務調査では一括償却資産が論点になったことはないので、仮に間違っていてもスルーされるような気がしますが。