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2021.05.21 解決事例(税務調査)

税務調査で青色申告取り消すよと指摘されたら

顧問税理士がついていなかった個人事業主の税務調査に立ち会うと、青色申告に関して65万円の特別控除を否認されることはしばしばあります(10万円の控除に減額されます)。複式簿記していない事が多いので、こちらとしても争わないケースが多いです。また、それほど多くはありませんが、青色申告そのものを取り消される場合もあります。その中には、税務調査の交渉過程で、調査官が交渉で優位に立つために?青色申告を取り消しますよ!と言ってくるケースがあります。だからこそ、青色申告の取消要件を予め理解しておく必要があります。

【目次】
  1. 青色申告の承認の取り消しについて
    1. 帳簿書類の備付け、記録又は保存が行われていないこと
    2. 税務署長の指示に従わないこと
    3. 隠ぺい、仮装等が行われていたこと
  2. まとめ

1.青色申告の承認の取り消しについて

法律では、法人税法127条及び所得税法150条において、取り消しの要件が規定されていますが、この法律だけを知っていても、税務調査の交渉では役に立ちません。この法律をより詳細に規定したものが、国税庁のホームページに実務運営指針として整理されていますので、実務運営指針をしっかり把握しておく必要があります。以下、青色申告の取消要件をご説明します。

1.帳簿書類の備付け、記録又は保存が行われていないこと

単に物理的に帳簿書類が存在するだけではだめで、その帳簿書類を税務職員に提示するところまで求めています。従って、税務調査において調査官が帳簿書類の提出を求め、その提出を拒否してしまうと、青色申告の承認が取り消される可能性があります。実務では、存在する帳簿書類を調査官に提出しないという選択肢はないため、私の経験上、この理由で青色申告の承認が取り消されたことはありません。

2.税務署長の指示に従わないこと

帳簿書類の備付け等についての税務署長の指示に従わない場合、青色申告の承認が取り消される可能性があります。基本的には、1.と同じと考えてよいと思います。

3.隠ぺい、仮装等が行われていたこと

実務ではこちらが大切です。税務署の調査官から青色申告を取り消すぞ!と言われたら、こちらの要件を本当に満たしているか確認する必要があります。私は、この要件を満たしていないにもかかわらず、否認されそうになった事例を知っているので、注意してください。その事例では、下記の数値基準を満たしていないことを説明することで事なきを得ましたが。特に大事な要件を2つ取り上げます。

大事な要件①
イ 無申告のために所得金額の決定をした場合又は所得金額の更正をした場合において、その事業年度の当該決定又は更正後の所得金額(以下「更正所得金額」という。)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく所得金額(以下「不正所得金額」という。)が、当該更正所得金額の50%に相当する金額を超えるとき(当該不正所得金額が500万円に満たないときを除く。)。

ケース1
・当初申告の所得金額:1,000万円
・更正後(正しい)の所得金額:2,000万円
・隠ぺいまたは仮装した所得金額:600万円
⇒更正後の所得金額2,000万円×50%=1,000万円>隠ぺいまたは仮装した所得金額600万円
⇒要件を満たさないため、青色申告を取り消されません。

ケース2
・当初申告の所得金額:300万円
・更正後(正しい)の所得金額:700万円
・隠ぺいまたは仮装した所得金額:400万円
⇒更正後の所得金額700万円×50%=350万円<隠ぺいまたは仮装した所得金額400万円
⇒上記要件は満たしますが、そもそも隠ぺいまたは仮装した所得金額が500万円未満なので、青色申告を取り消されません。

このように数値基準がありますので、本当に数値基準を満たしているのか確認する必要があります。調査官は、税理士が立ち会っていないと、このような数値基準を無視するケースもあるようなので、本当に注意してください。

大事な要件②
ハ 帳簿書類への記載等が不十分である等のため、法第131条(法第147条において準用する場合を含む。)の規定による推計によらなければ適正な所得金額の計算ができないと認められる状況にある場合

推計による所得金額の算出は青色申告では認められていませんので、推計による所得金額を算出する場合は、青色申告は取り消しますという事です。推計課税については、以下のコラムをご覧ください。
売上の推定計算が論点となった税務調査-名古屋市のメンズエステ経営

2.まとめ

不当な青色申告の取り消しは、税務調査に税理士が立ち会っている場合はほとんど発生しません。少なくとも、私が税務調査に最初から立ち会ったケースでは、不当な青色申告の取り消しを主張されたことはありません。しかし、税理士がついていない場合、不当な青色申告の取り消しが発生してしまう恐れがあります。従って、青色申告の取り消しについて、数値基準というものが存在することを頭の片隅に置いて頂き、実際に税務調査に選定され、青色申告の取り消しを指摘されたときは、その数値基準について思い出していただきたいです。

 

法人税法

(青色申告の承認の取消し)

第百二十七条 第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡つて、その承認を取り消すことができる。この場合において、その取消しがあつたときは、当該事業年度開始の日以後その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書(納付すべき義務が同日前に成立した法人税に係るものを除く。)は、青色申告書以外の申告書とみなす。

一 その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が前条第一項に規定する財務省令で定めるところに従つて行われていないこと 当該事業年度
二 その事業年度に係る帳簿書類について前条第二項の規定による税務署長の指示に従わなかつたこと 当該事業年度
三 その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること 当該事業年度
四 第七十四条第一項(確定申告)の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかつたこと 当該申告書に係る事業年度

 

所得税法

(青色申告の承認の取消し)

第百五十条 第百四十三条(青色申告)の承認を受けた居住者につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に掲げる年までさかのぼつて、その承認を取り消すことができる。この場合において、その取消しがあつたときは、その居住者の当該年分以後の各年分の所得税につき提出したその承認に係る青色申告書は、青色申告書以外の申告書とみなす。

一 その年における第百四十三条に規定する業務に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が第百四十八条第一項(青色申告者の帳簿書類)に規定する財務省令で定めるところに従つて行なわれていないこと。 その年
二 その年における前号に規定する帳簿書類について第百四十八条第二項の規定による税務署長の指示に従わなかつたこと。 その年
三 その年における第一号に規定する帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること。 その年

 

 

 

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