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2021.09.06 解決事例(税務調査)

中古自動車販売業の税務調査

名古屋市在住の個人事業主の税務調査に途中から立ち会いました。本人は仕事の能力は高いのですが、会計に関する知識が全くなかったため、決算数値がぐちゃぐちゃでした。今回の税務調査で最も大変だったのは、このぐちゃぐちゃな状態を整理していくことだったのですが、それをお伝えしてもそれほど意味がありませんので、それ以外の論点をお伝えします。

【目次】
  1. 売上高の過少計上
  2. 中古車の仕入(原価)の把握
  3. 期末在庫の把握
  4. まとめ

1.売上高の過少申告

中古車販売業は、現金のやり取りがとても多いです。そのため、意図したものかどうかは別として、売上の過少計上は起きやすいです。しかも、今回の税務調査は、資料などが本当にぐちゃぐちゃだったので、確実に正しい売上ではないだろうと税務署も思ったでしょう。そして、このぐちゃぐちゃな状況をみて(しかも最初は税理士が立ち会っていなかった)、①重加算税とれそうだな(やったー!)、でも②資料整理に時間がかかりそうで面倒だな、という相反する感情だったのではないかなと。

今回の税務調査で問題になったのは、現金売上の領収書がそれなりの数あったのですが、明らかに抜けている期間があることから領収書が1冊なくなっている状況でした。この状況だと、重加算税であったり、偽りその他不正行為に該当するでしょうか?必ずしもそうではありません。なぜなら、売上を過少計上するために意図的に領収書を破棄したかどうかわからないためです。調査官は、領収書が1冊ないだけで重加算税を主張するケースもありますが、意図して破棄していないのであれば、戦わなければなりません。税金を減らすために領収書を破棄したのであれば諦めてください。

2.中古車の仕入(原価)の把握

中古車販売のビジネスを単純化すると、オークションや個人などから中古車を購入⇒整備⇒販売という流れです。今回の税務調査で問題となったのは、中古車の購入の証跡がなかったことです。特に個人から購入した場合、現金支払いが多いため領収書等を紛失していると、何も証拠が残っていない状況でした。その結果、レクサスを売った実績はわかるんだけど、その車をいくらで購入したかが不明・・・という取引が多数検出されました。

この場合、証拠がないから原価は0円で修正申告してください・・・だとかなり辛いです。この個人事業主は青色申告者でした。過去のコラムでお伝えしていますが、青色申告の場合、推定計算はできないので原価0円で更正しますと主張されても仕方がありません。しかし、調査官は、調査の交渉過程でさすがにそこまで厳しい主張をすることはなく、合理的な推定計算をおこない、一定額の原価を認めてくれました。推定計算の方法としては、仕入と売上のデータが残っている取引のうち、近似する取引を参考にしました。例えば、レクサスの販売資料は残っているものの、仕入代金が不明な取引があった場合、同じレクサスを売買した複数の取引を参考に数値を作っていきました。

3.期末在庫の把握

今回の税務調査では、期末在庫については大きな論点にはなりませんでした。突っ込まれたら危なかったと思いますが、最初にお伝えした通り、ぐちゃぐちゃな状態を整理するのにとても時間を要したこと、多額の売上の過少計上が検出されたことから、調査官として一定程度のノルマ達成ができたからだと思います。しかし、中古車販売の税務調査は、在庫は大事なポイントです。在庫は自社でいかようにでも調整できるため、税務署も不正が行われている可能性が高いと考えています。そのため、在庫管理は適切に行う必要があります。適切な在庫管理は利益にもつながりますので、その点からも大事です。

4.まとめ

今回は中古車販売の個人事業主の税務調査についてお伝えしました。これまで様々な業種の税務調査についてご紹介しましたが、共通するのは、税務調査は売上と原価(仕入や外注費)は必ずチェックされ、エラーや不正が検出される可能性も高いということです。そして、売上と原価はグレーゾーンというものがほとんどありません。だからこそ、より慎重にミスがないように申告しなければなりません。そして、業種的に現金売上がある場合は、調査官も必ずその有無は確認しますので、漏れなく売上計上してください。

 

 

 

 

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