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スタイリストの立替え衣装代が論点となった税務調査
愛知県刈谷市のスタイリストの税務調査に立ち会いました。スタイリストが、撮影等で使用する洋服、小物等について、取引先が支払うべきものを立替えることが実務上よくあります。今回は、スタイリストが立替えた衣装代等を取引先に請求した場合に、取引先から入金された立替金が事業所得の総収入金額(売上)にあたるか否かについてお伝えします。
【目次】
- スタイリストの税務調査
- 立替払いした衣装代は、スタイリストの売上なのか
- 立替金が課税売上として認識されることの問題点
- 立替金は売上ではない
- 納税者が立替と主張したものは本当に立替か?
- まとめ
1.スタイリストの税務調査
スタイリストは、個人事業主として活動されている方が多いようです。スタイリストの税務調査で論点となるのは、取引先が作成した支払調書と売上金額との整合性、購入した洋服が立替なのか、仕入なのか、プライベートなのか、といったところがスタイリスト特有の論点です。それ以外には、全ての業種に共通する家事費が考えられます。今回の税務調査では、立替払いした衣装代が主要な論点で、税務署の調査官は反面調査にも行き、かなり時間がかかったこともあり、家事費などは大きな争点にはなりませんでした。実際、家事費はほとんどありませんでしたが。
2.立替払いした衣装代は、スタイリストの売上なのか
1.立替金が課税売上として認識されることの問題点
個人事業としてスタイリストのお仕事をされている場合、課税売上が1,000万円を超えない方もいらっしゃいます。その場合、立替金が課税売上として認識された場合に、課税売上が1,000万円を超えてしまい、消費税の納税義務が発生してしまいます。そのため、今回の税務調査でも、この部分が争点となりました。
2.立替金は売上ではない
同じ問題について、あるスタイリスト業の個人事業主が、税務署と国税不服審判所で争った事例があります。
国税不服審判所(平成28年9月8日裁決)
争点は5つあったようですが、争点3が同じ論点です。この争点3の結論として、立替払いしたと認められたものは、売上から除外すべきとされました。以下、一部を抜粋しました。
(ハ) 小括
以上のことからすると、本件各年分の本件事業に係る総収入金額及び本件各課税期間の課税売上高の算定に当たり、請求人の取引先の支払の立替払として除外すべき金額は、平成22年分が266,116円、平成23年分が1,432,257円、平成24年分が4,868,488円及び平成25年分が941,571円となる。
従って、税務署が、立替払いしたものまで売上として認定しようとした場合、この裁決事例を必ず活用してください。私たちの税務調査でも、この裁決事例を交渉材料として活用しました。
3.納税者が立替と主張したものは本当に立替か?
注意点もあります。取引先が支払うべきものを立替えているのであれば、領収書などは、その取引先に提出するはずですし(領収書の名義も取引先の場合があります)、かかった費用と同額を請求するはずです。請求書も、スタイリスト料とは別に、立替請求書のようなもので請求するべきです。もし、洋服等の購入費用に上乗せして請求した場合どうなるでしょうか?それは立替というより、スタイリストが役務を提供したと見なされ、売上として認定される可能性が高いです。従って、何から何まで立替と主張するのではなく、事実に基づいて申告しなければなりません。
3.まとめ
今回は、スタイリストの税務調査について、特に大きな争点となった立替払いについて、お伝えしました。担当したスタイリストの話では、別の税務調査では、立替払いについて売上として認定された方もいる様です。勿論、洋服等の購入について対価を得ている場合など、実質的に立替払いでないものは、売上として認定されても仕方がありませんが、そうではなく、今回の税務調査のように実質立替にも関わらず、売上として認定されてしまうと、ダメージが大きすぎます。このようなケースでは、やはり税理士が立ち会うと、結果も変わってきます。税務調査の連絡がきて、不安な論点があるようでしたら、まずは当税理士事務所のような専門家に相談することをお勧めします。当税理士事務所の料金等はこちらをご覧ください。
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