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個人経営の学習塾に関する税務調査のポイントとは
愛知県名古屋市で学習塾を経営されている個人事業主の方から相談がありました。面談で申告の状況を確認したところ、大きな問題点はなく、税理士が税務調査に立ち会っても費用対効果がないと判断し、立ち会いませんでした。これからご説明する税務調査の方法なども伝えましたので、悪い結果にはなっていないと思います。今回は、学習塾の税務調査のポイントについてお伝えします。
【目次】
- 学習塾は現金商売であること
- 売上の内訳
- 現金商売に関する税務調査の方法
- 人件費など、その他注意すべきポイント
- まとめ
1.学習塾は現金商売であること
私が相談をうけた学習塾の場合、月謝袋でお金を頂くのが基本でした。私の娘は個人で経営しているピアノ教室に通っていますが、そこも月謝袋でお金を支払っていますので、個人経営の場合はまだまだ月謝袋(現金払い)が多いのだと思います。従って、税務調査のポイントは現金売上です。
1.売上の内訳
学習塾の売上にはどういったものがあるでしょうか。毎月支払う塾代、教材の販売、夏休み等に行う合宿代などだと思います。税務署は、現金で受け取っている以上、ごまかしている可能性は高いという前提で税務調査を行います。では、税務署はどのように調査を行うのでしょうか。
2.現金売上に関する税務調査の方法
塾代の計算式は、単価✖生徒数です。単価は生徒によって違いはないでしょうから、生徒数さえ把握できれば、塾代の売上金額はある程度推測できます。そのため、調査官は名簿をしっかりとチェックします。その名簿から塾代を推定し、実際の申告金額と整合していなければ、問い詰められることになります。
教材の販売の計算式は、単価✖注文数です。業者から教材を購入する際、現金払いではなく、先方から受け取った請求書に基づき、振り込みで支払うケースが多いと思います。その請求書で注文数は把握できますので、その注文数が把握できれば、教材の販売売上は推測できます。もう1つポイントがあります。それは、生徒数と注文数は整合するという点です。つまり、生徒数が100人であれば、教材の注文数も100件のはずです。生徒数が100人にも関わらず、教材の注文数が200件だと明らかに違和感ありますよね。そのため、この注文数と生徒数が整合していない場合、やはり問い詰められます。名簿を改ざんしたんじゃないの?と。名簿の改ざんがばれると重加算税が課されますので、改ざんなどは絶対にやらないでください。
夏休みの合宿代など、不定期に発生するイベントに係る売上についても、同じような方法で調査されますので、もれなく売上を計上するようにしてください。
2.人件費など、その他注意すべきポイント
現金売上以外で調査される事項は何でしょうか。まずは人件費です。例えば、大学生をアルバイトとして雇っている場合、現金で払う事が多いと思います。ここでのポイントは、そのアルバイトが実在するのか、本当に支払っているのかです。調査官は、この点を把握するために、履歴書、シフト表、給与所得者の扶養控除等申告書などを確認し、実態と申告書が整合しているか確認します。扶養控除等申告書は意外と入手していない場合も多いようなので、しっかりと入手するようにしてください。学生のアルバイトは所得税がかからない場合が多いのですが、扶養控除等申請書を入手していないと、税務調査にて過去の源泉所得税の徴収を乙欄で再徴収するように!と指導される可能性もあり、非常に面倒な作業になってしまいます。そして、連絡が取れない場合は、経営者が実質的に負担することになってしまいます。大学生の場合、就職などで連絡が取れない方が多いはずです。
人件費以外であれば、自宅で塾を経営している場合は、家事按分の問題がありますし、個人事業主の税務調査で必ず問題となる家事費・家事関連費がチェックされます。この辺りは他のコラムでも取り上げていますので、今回は割愛しますが、これらの経費は事業との関連性をしっかりと説明できることが大切です。
3.まとめ
今回は、個人経営の学習塾について取り上げました。売上も経費も現金が絡むことが多い業種ですので、税務調査ではその点をしっかりと調査されます。不正しないことが大前提ですが、単に誤っただけでも重加算税を課そうとする調査官もいますので、そういったリスクを未然に防ぐためにも、売上も経費ももれなく集計し、証憑をしっかりと残すようにしてください。再度お伝えしますが、アルバイトの扶養控除等申請書は必ず入手しましょう。
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