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税務調査で外注費を認めてもらうのは大変ー愛知県小牧市の建設業
建設業の税務調査では、外注費が必ず論点になります。別のコラムでも取り上げていますが、現金払いの外注費(しかも領収書もない)、実質的には給与である外注費等々、損益計算書に外注費を計上している場合、調査官は必ず確認を行います。そこで、今回は、誰にいくら払ったかは把握しているが、直接的な証拠がない外注費が問題となった税務調査を取り上げます。別のコラムでも、外注費について紹介していますので、合わせてご覧ください。
一人親方の税務調査のポイントは?売上、外注費、交際費などについて
【目次】
- 確定申告の状況
- 税務調査での論点
- まとめ
1.確定申告の状況
愛知県小牧市の個人事業主の税務調査です。確定申告書を提出したり提出しなかったりという状況でした。多くの業界に共通する事ですが、3月は元請の予算消化のために仕事が忙しくなりがちです。そのため、確定申告書を作成する時間を確保できず、確定申告の提出期限が過ぎてしまい、その後どうしていいかわからず、放置してしまうというパターンは、税務調査の相談を受けていると時々聞きます。この方もこのパターンに陥っていました。
2.税務調査での論点
無申告だった事業年度は、上記の理由を正直にお伝えし、調査官にも一応納得してもらいました。確定申告した事業年度については、売上は、期ズレの問題はあったものの、不正を疑うような売上除外等はなかったため、特に問題にはなりませんでしたが(事実に応じて修正するだけ)、外注費の証拠(領収書など)があまり残っていなかったため、外注費が問題となりました。
外注費に関する事実関係
- ほどんど現金で払っている
- 領収書がないものが結構ある
- 請負工事単位で工事代金や外注先への支払いをメモしたノートがある
- 元請発行の支払明細書が残っている
当たり前ですが、領収書等の証拠がない外注費は、経費として認めてもらえません。得てして、証拠がない外注費は、外注先である相手方が売上として確定申告していない可能性が高く、税務署としても経費だけ認めるわけにはいきません。
今回の税務調査では、領収書といった直接的な証拠はなかったのですが、本人が書いた外注先への支払実績をメモしたノートがありました。このノートは間接的な証拠でしかなく、本人が書いたものである以上、客観的な証拠でもないため、証拠力としては弱いです。しかし、このノートしか残っていないため、ノートを拠り所に外注費として認めてもらうよう交渉しました。その一部をお伝えすると、例えば以下のような対応をおこないました。
- 元請の支払明細書とノートを突き合わせて、ノートの信頼性を担保する
ノートに記載した情報が元請が発行した支払明細書と整合していれば、ノートは事実に基づいて書いていると調査官に主張できます。
- とにかく領収書を探す
この税務調査に限らず、必ずやることではあります。ここでお伝えしたいのは、例えば、A社へ5回支払ったというメモ書きがあったとして、その内1つでも領収書が見つかれば、残り4回も払っているだろうとの心証を得られるのではないかという話です。
- 外注先を探す
ノートには、誰々にいくら払ったとしか記入しておらず、数年前の取引先だと電話番号も変わっている場合があります。すぐに連絡がとれない外注先もいましたが、様々な手段を講じて、可能な限り外注先を探しました。
その結果、それでも探しきれない外注先がいましたが(どうも、九州にいるようだ位の情報しか得られなかったなど)、そのノートの信頼性は相当程度高いと認定され、かつ納税者が今回調べた事実関係を整理し、証拠を入手できなかった先についても必ず払いましたという宣誓書を税務署に提出することで認めてもらう事ができました。ここまで行きつくまでに、納税者は、ものすごい労力を費やしていることはお伝えしておきます。仕事にも支障をきたしているはずです(取引先に迷惑をかけます)。税務調査でこのような苦労をしなくても済むように、日々の対応がとても大切です。
3.まとめ
上記のような対応を行うことで、直接的な証拠がない外注費についても認めてもらう事が出来ました。今回は、うまくいった事例ですが、その要因として、売上除外等の不正行為を行っていなかったこと、納税者本人が税務調査に対して真摯に対応したこと、今後は税理士が関与した上で適正に申告すると約束したことではないかと推測しています。領収書等の適切な証拠がない限り、経費として認めてもらうことは非常に難しいです。しかし、直接的な証拠を提示できなくても、調査官が「まぁ払っているよね」という心証を得ることができるだけの材料を提示できれば、認められる可能性があります。だからこそ、どうしても外注先から領収書等が貰えない場合は、支払った事実をしっかりとノートに記入し、証拠として残しておく必要があります。ノートに記入していれば、必ず経費として認められるわけではないことはご留意ください(むしろ可能性としては低い)。調査官がその外注先に反面調査しても、そんな仕事はしていないと嘘をつく可能性もあるためです。あくまで、交渉材料として使えるという意味です。そもそも、このような面倒な交渉はしたくないと思います。だからこそ、外注先に対しては、例えば、以下の対応をお願いしてください。
- 請求書を発行してもらい、振込形式にする
- 現金払いが良いといわれれば、必ず領収書を発行してもらう
- 確定申告してもらう
当税理士事務所は、外注費に問題を抱えた個人事業主など多数の調査経験があります。当税理士事務所は最初の相談は無料で受けていますので、その無料相談でも可能な限りの事はお伝えします。そして、税務調査の立会いを依頼した場合の料金は広告費にお金をかけていない分、他の税理士よりも安く設定していますので、是非ご連絡ください。