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2023.12.16 解決事例(税務調査)

資料なしのピンチを救った「推計課税」交渉|愛知県名古屋市のメンズエステ税務調査

今回は、愛知県名古屋市においてメンズエステを2店舗経営されている個人事業主の方の税務調査をご紹介します。この事案では、確定申告自体は行われていたものの、実態とは乖離した大まかな内容になっていました。さらに、売上に関する元データや日報などの資料がほとんど残されていなかったため、「過去の正確な売上をどのように確定させるか」が最大の争点となりました。

このように、客観的な資料がない場合に登場するのが「推計課税(推計計算)」という手法です。ピンチをチャンスに変えた税務署との交渉について解説します。

【目次】
  1. 推計課税に関する法律要件
  2. メンズエステの売上の推計方法(4つのアプローチと交渉の裏側)
  3. お客様の声:どんぶり勘定からの脱却
  4. まとめ:推計の選択肢をどれだけ出せるかが、税理士の価値

1.推計課税に関する法律要件

そもそも「推計課税」とは、売上や経費の正確な記録がない場合に、周囲の状況(水道光熱費や仕入量、店舗規模など)から、税務署が所得を「推測して計算」し、税額を決める仕組みです。

所得税法 第156条(推計による更正又は決定)
税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額(その者の提出した青色申告書に係る年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額並びにこれらの金額の計算上生じた損失の金額を除く。)を推計して、これをすることができる。

条文にある通り、原則として「青色申告」を行っている場合には、推計課税を行うことはできないと明文化されています。これは納税者として持っておくべき基本知識です。

実務では「提案」として乗ってくることも

しかし、実際の税務調査の現場では、青色申告者であっても、資料が全くなければ税務署側から「この基準で推計計算(実質的な推計)をして、修正申告をしませんか?」と提案してくることがあります。 法的に争うよりも、その推計方法が納税者にとってメリット(税負担が軽くなるなど)があれば、あえて受け入れるというのも実務上の高度な経営判断です。この見極めこそが税理士の腕の見せ所となります。

2.メンズエステの売上の推計方法(4つのアプローチと交渉の裏側)

売上を推計する方法には、国税庁で「これ」と一律に決まったマニュアルはありません。「客観的かつ合理的である」と認められれば、どのような計算方法を採用しても基本的には自由です。だからこそ、ここに大きな交渉の余地が生まれます。今回の名古屋のメンズエステのケースでは、以下の4つの要素から推計が可能だと考えました。

  • a. おしぼりの消費量

  • b. マッサージオイルの消費量

  • c. 水道料金の推移

  • d. 在籍スタッフ(女性)への報酬額

このうち「d」については、過去のスタッフへの支払データが不鮮明だったため除外し、「a〜c」の中で最も納税者に有利(税額が低くなる)、かつ税務署を納得させられる合理的な方法を検討しました。

過去のデータはどうやって集めたか?

資料がない状態からデータを集めるため、税務署の権限(調査官の仕事)もフルに活用しました。

  • おしぼり消費量: 取引先が1社のみだったため、調査官がその業者へ「反面調査(確認調査)」を行い、過去の仕入金額を正確に把握。

  • オイルの消費量: ネット通販等でクレジット払いしていたため、納税者本人が過去の利用明細を遡って入手し、金額を把握。

  • 水道料金: 調査官が水道局へ確認を行い、各月の使用量を把握。

交渉結果:最善の選択肢を見つけ出す

これら集まったデータと、直近の稼働実態を掛け合わせて、a〜cの3パターンで売上のシミュレーションを行いました。 その結果、「オイルの消費量」をベースに計算することが、納税者様にとって最も納得のいく(税額が抑えられる)結果になることが判明しました。

この緻密なシミュレーション結果を武器に調査官と粘り強く交渉し、最終的に「オイル消費量に基づく推計」を認めさせることに成功しました。今回はオイルが最善策でしたが、店舗の状況によっては水道代やおしぼり代をベースにした方が有利になるケースもあります。

業種は異なりますが、資料がない状態からの「推計計算」は中古車販売業などでもよく行われます。気になる方はこちらのコラムも参考にしてください。

🔗 関連コラム:領収書なしでもレクサスの仕入原価を死守!|名古屋市の中古車販売業の税務調査

3.お客様の声:どんぶり勘定からの脱却

すべての調査が終わり、納得のいく税額で着地できた際、お客様からは本音の混ざったこのような言葉をいただきました。

「正直なところ、自分の店に税務調査なんて来ないだろうと高をくくっていました。だからこそ資料も適当に処分してしまっていたし、売上も完全にどんぶり勘定で申告していました。今回は先生に助けてもらいましたが、本当に肝が冷えました。この税務調査を良いきっかけにして、これからはプロに任せてきっちりと正しく申告していこうと思います」

経営者様が「うちは大丈夫だろう」と思ってしまうお気持ちは本当によく分かります。しかし、税務署は業種特有の動きを確実に見ていますので、適正な申告を心掛けてほしいです。

4.まとめ:推計の選択肢をどれだけ出せるかが、税理士の価値

推計課税において最も重要なのは、「計算の選択肢(切り口)をどれだけ多く思いつけるか」です。選択肢が増えれば増えるほど、その中から納税者にとって最もメリットのある(税額が低くなる)方法を提案し、交渉することができます。この引き出しの多さは、メンズエステをはじめとする店舗ビジネスへの深い理解と、現場での豊富な税務調査経験がなければ生まれません。

もし税理士が立ち会っていない場合、ほぼ100%「税務署(調査官)にとって最も都合の良い(税金が一番高くなる)推計方法」で押し切られてしまうことになります。また、税務調査に慣れていない税理士でも、相手のペースに飲まれてしまい良い結果は望めません。

実は今回の案件、売上だけでなく「時給で働いているスタッフへの支払いが外注費か給与か」という重い論点も裏に潜んでいました。しかし、売上の推計計算のロジック構築と交渉に相当な時間を費やしたため、調査官も「これ以上長引かせたくない」という心理が働き、結果的に外注費の論点はお咎めなし(不問)となりました。これは納税者様にとって非常に大きなプラスでした。

当税理士事務所は、メンズエステや風俗業、サロンといった夜職・店舗型ビジネスの税務調査対応において豊富な実績があり、国税OBとの強力な連携体制も整っています。

  • 最初の相談は無料でお受けしています。無料相談の段階でも、可能な限りのアドバイスをさせていただきます。

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ピンチを最小限の傷で切り抜け、これからの経営を安心なものにするために。まずは一度、お気軽にご相談ください。

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