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売上の推定計算が論点となった税務調査-名古屋市のメンズエステ経営
愛知県名古屋市においてメンズエステを2店舗経営している、個人事業主に対する税務調査でした。確定申告はしていたものの適当な申告であったこと、売上に関する資料も残っていなかったことから、売上をどのように確定させるかが主要な論点となりました。
【目次】
- 推計課税に関する法律要件
- メンズエステの売上の推計方法
- まとめ
1.推計課税に関する法律要件
所得税法156条では、以下の通り、青色申告の場合には推計課税できないと明文化されています。ですので、基本知識として、青色申告の場合には推計計算ができないことを覚えておいてください。
所得税法(推計による更正又は決定)第百五十六条 税務署長は、居住者に係る所得税につき更正又は決定をする場合には、その者の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその者の各年分の各種所得の金額又は損失の金額(その者の提出した青色申告書に係る年分の不動産所得の金額、事業所得の金額及び山林所得の金額並びにこれらの金額の計算上生じた損失の金額を除く。)を推計して、これをすることができる。
とはいえ、実務では、青色申告者であっても税務署が推計課税を提案してくることもありますので、それが納税者にメリットがあれば受け入れたらよいと思います。その判断がとても難しいのですが…
2.メンズエステの売上の推計方法
売上の推計方法には決まった方法はありません。そのため、推計方法が合理的であるとみなされれば、どのような方法を採用しても基本的には問題ありません。この点に交渉余地がでてきます。今回のケースでは、a.おしぼりの消費量、b.オイルの消費量、c.水道料金、d.店舗で働く女性への報酬が採用可能と考えました。先に申し上げると、d.については過去の女性への支払額がよくわからなかったため除外し、a.~c.から納税者に都合がよく、かつ合理的に説明可能な方法を検討しました。因みに、過去のデータについては、以下の方法で把握しています。税務署にしかできないこともあるので、それは調査官にどんどん依頼しましょう(それが調査官の仕事でもありますし)。
- :取引先が1社だったので、調査官がその業者に反面調査し金額を把握
- :クレジット払いしていたため、納税者が過去のクレジット明細を入手し、金額を把握
- :調査官がその水道業者に反面調査し金額を把握
これらのデータに加え、直近の売上やおしぼり消費量等の金額に基づき、推定計算しました。結果的には、オイルの消費量に基づき計算することが、納税者も納得できる税額に落ち着くことがわかったため、その方法を採用するよう調査官と交渉しました。今回は、オイル消費量を採用することが最善策でしたが、案件によっては、それ以外の方法を採用した方が最善である場合もありますので、その点はご留意ください。
中古自動車販売業の税務調査でも推定計算が行われましたので参考にしてみください。
中古自動車販売業の税務調査
3.まとめ
今回は、オイルの消費量に基づく推定計算を採用しましたが、今回はたまたまオイルの消費量を選択しただけであって、推定計算で大切なのは、推定方法を可能な限りたくさん思いつくことです。選択肢が増えれば増えるほど、納税者にとってメリットのある方法を採用できる可能性が高まります。この選択肢を増やすには、納税者の事業を理解する力と税務調査の経験が大切です。税理士が立ち会っていない場合は、ほぼ間違いなく調査官の都合のよい推定計算が採用されることになります。また、税務調査に慣れていない税理士が立ち会ってもあまり良い結果にはなりません。だからこそ、税務調査に強い税理士が立ち会う事が大切です。当事務所は、税務調査の経験も豊富であり、国税OBとの連携も可能です。料金についても、税務調査後に顧問契約を締結して頂くことを前提としてかなり抑えています。税務調査後は、顧問税理士を付けて適正な申告をしたいとお考えの方には、とてもメリットがあると確信しています。やや値段は高くなってしまいますが、顧問契約を前提としない税務調査立会も、勿論可能です。詳細はこちらをご覧ください。
税務調査の料金やご利用の流れなど
また、今回の案件では、売上だけでなく、外注費と給与の論点などもあったのですが、売上の推定計算に相当時間を要したことから、調査官としてもそれ以上時間をかけたくなかったようで、不問となりました(納税者にとっては助かりました)。