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2024.05.16 コラム

令和7年1月以降、紙で申告書を提出しても受領印がもらえない

今年の確定申告において、独立して初めて書面で確定申告書を提出しました。顧問先の親族の譲渡所得を申告しました。その方が会社員であり常にetaxで確定申告するわけではない点や、私は今回しか関わらないにもかかわらず利用者識別番号を管理するのは面倒だからというのが理由です。数年後、伝えているにも関わらず「利用者識別番号を教えてほしい」という連絡が来ることもありがちなので。無料で対応せざるを得ない状況を作らないようにすることはとても大切です。

確定申告書の正本と控え、返信用封筒を同封して郵送すると、2週間後には受領印が押印された控えが返送されました。その中には1枚の紙が同封されていました。「令和7年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押なつを行いません」という紙です。そこで今回は、令和7年1月以降に紙で申告しても受領印がもらえない事についてお伝えします。

【目次】
  1. 受領印を廃止する理由とは
  2. 申告書が受領されたことを確認するためには
  3. 紙で申告書を提出するのはリスクが高くなる
  4. まとめ

1.受領印を廃止する理由とは

国税庁のHPをみると以下のように明記されていました。

国税庁においては、納税者の利便性の向上等の観点から、「あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会」を目指し、申告手続等のオンライン化、事務処理の電子化、押印の見直し等、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直し(税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(DX))を進めているところです。

こうした中、e-Tax利用率は向上しており、今後もe-Taxの利用拡大が更に見込まれることや、DXの取組の進捗も踏まえ、国税に関する手続等の見直しの一環として、令和7年1月から、申告書等の控えに収受日付印の押なつを行わないこととしました。

要は「紙ではなく電子申告してほしい」という事だと思います。従事した無料相談会でも税務署の職員の方がスマホ申告をサポートしていましたし、今のetaxはとても使いやすいですし、様々な面から電子申告をサポートしていることは理解しています。それでも結構酷だなと考えています。

2.申告書が受領されたことを確認するためには

受領印のある確定申告書を利用する機会は結構あります。お金を借りるために金融機関に提出する時、住宅を購入する時などがよくあるケースでしょうか。コロナの時に様々な補助金がありましたが、その補助金の申請にも必要でした。

今までは受領印のある控えがあれば対処できましたが、今後はその控えはありません。ではどのように対応すればよいのでしょうか。同様に国税庁HPにて明記されています。

1.e-Taxによる申告・申請手続
申告・申請手続は、e-Taxで行うことができます。
e-Taxで申告等データの送信が完了した後、送信されたデータの受信通知がメッセージボックスに格納されます。受信通知では、申告書等を提出した者の氏名又は名称、受付番号、受付日時等を確認することができます。
また、受信通知から電子申請等証明書の交付を請求することもできます。
なお、個人の利用者が受信通知の内容を確認する場合、マイナンバーカード等の電子証明書が必要です。

2.申告書等情報取得サービス(オンライン請求のみ)
所得税の確定申告書、青色申告決算書及び収支内訳書について、書面により提出している場合であっても、パソコン・スマートフォンからe-Taxを利用してPDFファイルを無料で取得することができます。
なお、利用に当たっては、マイナンバーカードが必要です。

3.保有個人情報の開示請求
税務署が保有する個人情報に対する開示請求により、提出した申告書等の内容を確認することができます(写しの交付の場合は1か月程度かかります)。
手数料は300円(オンライン申請の場合は200円)です。
法人の申告書等には利用できません。
保有個人情報の開示請求について、e-Taxを利用したオンライン請求及び手数料の電子納付をすることができます。

4.税務署での申告書等の閲覧サービス
税務署の窓口で、ご自身が過去に提出した申告書等を閲覧することができます。

5.納税証明書の交付請求
納税証明書の交付請求を行うことにより、確定申告書等を提出した場合の納税額、所得金額又は未納の税額がないことの証明書を取得することができます。
手数料は、税目ごと1年度1枚につき400円(オンライン申請の場合は370円)です。
納税証明書の交付請求について、e-Taxを利用したオンライン請求及び手数料の電子納付をすることができます。

まず1と2についてはe-Tax利用が大前提です。そもそも電子申告できるのであれば電子申告していますので、代替案としては酷です。という事で実質的な代替案は3~5となります。こちらは金銭的な負担もしくは時間的な負担(税務署に行く)を払って情報を取得してくださいという事です。国としては電子申告を推奨しており、それができないのであれば何かしら負担してくださいねという事になりますが、理解できなくはないです。

3.紙で申告書を提出するのはリスクが高くなる

しかし、受領印をなくすという税務署側の対応は、納税者にとってあまりに大きなリスクが内在しています。可能性は相当低いですが、提出した紙の申告書類が万が一税務署内で行方不明になった場合、提出されていないと認定される可能性がある点です。私は今まで経験したことはありませんが、税務署側が申告書を紛失したものの受領印のある控えがあったことで事なきを得たという事例は実際にあるようです。

公務員は責任を回避する方向に流れることが多いので、彼らが紛失したことが事実だったとしても、納税者がそれを証明することが難しいことが分かっているので紛失した事実は認めないでしょう。

4.まとめ

国税庁の趣旨は分かるのですが、納税者には酷すぎるなというのが私の印象です。税理士に依頼できる納税者は電子申告してもらえるので問題ありませんが(無駄にリスクを負いたくないので、私も来年からは必ず電子申告します)、税理士に依頼しない納税者はどうするのでしょうか?若い方でも電子申告できない人は本当に多いですよ。どこかで紙から電子に変更する必要があり、それが今だと判断したのだと思います。色々と事情もあるのでしょう。

このコラムを公開してすぐにQ&Aが2024年6月に更新されました。かなり反対意見が出たのでしょうね。

令和7年1月以降、当分の間の対応として、窓口で交付する「リーフレット」(今般の見直しの内容と申告書等の提出事実等の確認方法をご案内するもの)に申告書等を収受した「日付」や「税務署名」を記載したものを、希望者にお渡しいたします。

 

 

 

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