お知らせ・コラム
News & Column
運送業における税務調査
当税理士事務所にも運送業の顧問先がいますが、業績は好調です。そのうち1社の直近の決算は売上高倍増でした。来期も50%増くらいは見込めそうとの事でありとても素晴らしいです。他の顧問先もここまで売上を増やしているわけではありませんが、外注単価を上乗せしつつ利益を増やしており、外注先とともに成長しています。とても素晴らしいです。基本的に、小規模零細企業の業績は社長次第なので、私の顧問先の運送業の社長がとても有能という事だと思います。そして、皆さん私よりも若いので、刺激になります。
とはいえ、世間的に見ると運送業の倒産は増えているので、とても厳しい業界ではあります。顧問先を見ていると、売上拡大については、会社の置かれている状況だったり社長の個性だったりが強く反映されていますが、うまくいっています。しかし、もう1つの課題である人材確保は本当に苦労しています。ある会社は九州に住んでいる方を採用するケースもありました。
顧問先の運送業はとても稼いでいるので、そろそろ税務調査に選定される可能性もあるかなと思っていますが、かなりしっかりとした会社なので(グレーな経費もほぼない)、顧問税理士としてはいつでも来てよいよという感じです。
とはいえ、運送業にも税務調査でのよくある論点がありますので、今回はその点をお伝えします。
【目次】
- 個人事業主の運送業の税務調査
- 通帳に入金される収入の内訳
- 車の売却(下取り)は譲渡所得と消費税に影響
- 軽油税
- 自宅兼事務所など
- 法人の運送業の税務調査
- 外注か従業員か
- 車両の売買
- まとめ
1.個人事業主の運送業の税務調査
1.通帳に入金される収入の内訳
元請からの請求書を確認すると、内訳は運送料(収入)だけではない事が多いです。つまり、元請によって色々ですが、運送料から保険料、ガソリン代、高速代、制服代といった経費相当が引かれて通帳に入金されるケースです。
この問題点は、別のコラムでもお伝えしましたが、消費税の課税事業者の判定に大きな影響を及ぼします。つまり、入金額を集計しても1,000万円を超えないが、運送料を集計すると1,000万円を超えるパターンがありうるからです。そして税務調査の対象期間で消費税を支払うことになれば税務署の調査官はガッツポーズでしょうね。消費税の負担は大きくなりがちなので。今まで複数回同じ状況のご相談を受けたことがあります。
2.車の売却(下取り)は譲渡所得と消費税に影響
数年に一度、事業用の車を売買されると思います。車を売却(下取り)すると、その売却代金について、譲渡所得の対象になりますし、消費税の課税売上にも反映されます。この点は、顧問税理士がいない個人事業主の大部分は抜けていると思いますので、税務調査では必ず指摘されるでしょう。とはいえ、軽貨物の事業者などであれば、売却代金はそれほど大きくならないと思いますので、譲渡所得は発生しない可能性が高いです。課税事象者であれば、消費税は必ず発生しますが。
3.軽油税
これは法人でも同様です。トラックの場合、ガソリンではなく軽油を利用している場合も多いです。その場合、料金の内訳が軽油と軽油引取税に分かれているはずです。問題となるのは、消費税の課税事業者です。軽油引取税は消費税が課されませんので、仕訳を入力する際に分けて入力しなければなりません。課税事業者でも簡易課税を選択している人や、免税事業者はそういった面倒なことは無視して問題ありません。
4.自宅兼事務所など
個人事業主として活動しているドライバーの経費は種類も金額も小さいです。最もわかりやすい経費は、車の減価償却費、ガソリン代、パーキング代、高速代、車の保険代などでしょうか。働き方によっては、他のドライバーとの打ち合わせ等が多ければ、打ち合わせ時に発生する飲食代なども経費処理が可能です。仕入も外注費も基本的にありませんので、税務調査では、売上と車の売買関連のチェックが終わると、細かい経費までチェックされてしまいます。先に挙げたような経費はわかりやすいので、特段問題になることは多くありませんが、例えば自宅兼事務所はどうでしょうか?
運送業の方が自宅で仕事をすることはほどんどないでしょうし(請求書を作成する位)、建設業のように倉庫代わりに自宅の一部を活用することも少ないはずです。しかしながら、自宅家賃の30%から50%経費処理している方がまぁ多い。基本的に否認されてしまいます。
とはいえ、消費税の影響もなく、売上も正しく申告していれば、自宅兼事務所の一部を否認されたところで多額の追徴課税にはならないでしょうから、この点からも売上の過少計上は絶対にダメです。そもそも不正ですし。勿論、説明できない自宅兼事務所の経費もダメではありますが。
2.法人の運送業の税務調査
従業員や外注業者が下にいることを想定しています。
1.外注か従業員か
税務調査ではよくある論点です。別のコラムでも同じ論点を説明していますのでそちらをご覧ください。当税理士事務所の顧問先の場合は、外注先が法人のケースも多いため、そこは問題になりませんし、個人事業主の場合は、業務委託契約を締結することは勿論ですが、各外注先がしっかりと確定申告しているようなので、基本的には問題ないかなと思います。
今回のコラムの内容とは異なりますが、当税理士事務所の顧問先にはいないものの、キャバクラなどの夜のお店は、働き方が給与に近い方が多いので(時給1万円といった給与形態)、税務署に本気を出されてしまうと負け戦になりがちかなと思います。
2.車両の売買
運送業である以上、車の売買は多いです。弊社の顧問先も車の売買は多いです。ある顧問先は、中古を安くで購入し、使えなくなったら廃棄という流れなので、車を売るという行為はほとんどなかったり、ある顧問先は、使えなくなる前に売却(下取り)するので売却損益が発生したりなど、法人によって車の売買に対するスタンスは異なります。基本的に法人の場合は顧問税理士がついていますので、大きなエラーが発生することはないでしょうが、固定資産売却損益(特別損益)が発生していますので、税務調査では一応チェックされるでしょう。
3.まとめ
今回は運送業の税務調査についてお伝えしました。どの業種でも同じですが、まずは売上と外注費(仕入がある業者は仕入)が大事です。売上の過少計上、外注費の架空計上は論外ですが、期ズレなども発生しないように注意しましょう。
その次に影響が大きいのが、「外注費か?給与か?」という王道の論点です。この点は形式的な面よりも実際の外注先の働き方が大事ですので、事前の準備がとても大切です。
当税理士事務所は、運送業の顧問先も多く、税務調査の経験も豊富です。そして、税務調査の立会いを依頼した場合の料金は広告費にお金をかけていない分、他の税理士よりも安く設定しています。今後、税理士をつけて、節税しながら適正に納税したいという方にはとてもメリットがあると確信しています。詳細はこちらをご覧ください。