お知らせ・コラム
News & Column
税務調査で修正申告しないと納税者は不利になるの?
【目次】
- 修正申告とは
- 税務調査で修正申告しないと不利になるのか
- 税務署が修正申告しないと不利になる主張する訳
- 修正申告しないと納税者が不利になる例
- 税務署の調査官は、脅してはならない
- 納得いかないなら修正申告しない
- 更正の手続きが難しいケース
- 重加算税が課されるケース
- まとめ
1.修正申告とは
修正申告とは、申告期限後に売上の計上漏れや経費の過大計上などにより税金を少なく納税していたことに気づいた場合に、改めて確定申告をおこなう手続きです。同じような手続きとして、訂正申告というものもありますが、こちらは申告期限内に改めて確定申告をおこなう手続きです。実務でも、確定申告書を期限内に提出したものの、その後に納税者から追加資料の提出があった場合などに訂正申告することは意外とよくあります。
2.税務調査で修正申告しないと不利になるのか
税務調査の状況によって有利にも不利にもなります。この点をお伝えします。
1.税務署が修正申告しないと不利になると主張する訳
納税者が修正申告しない場合、最終的に税務署が更正という手続きをおこないます。修正申告と更正の大きな違いは、修正申告は納税者がおこなうもの、更正は税務署がおこなうものという点です。この違いがかなり重要です。
ではなぜ税務署は、修正申告をしないと不利になるというのでしょうか?その理由は、税務署が更正の手続きを行う場合、法律に則ってがちがちに固めた上で更正せざるを得ないので、修正申告すればこの論点は妥協してあげるよといった事が全くできないからです。
2.修正申告しないと納税者が不利になる例
実務で最も多いのは、仕入税額控除を認めるか否かです。当税理士事務所が税務調査に立ち会う場合、顧問税理士のいない法人や個人事業主が多いため、帳面などはつけていない場合がほとんどです。その場合、法律にきっちりと則ると仕入税額控除を認めることができません。しかし、税務調査の実務では、今後税理士が関与した上で適切に納税することを前提に、仕入税額控除について目をつぶってくれる調査官も結構いたりします(最近はそうでもない事例も出てきているのですが)。そのため、このような状況で、修正申告に応じないと、仕入税額控除はほぼ負けることになります。
3.税務署の調査官は、脅してはならない
今回の相談のケースでは、どちらかというと、調査官は、脅し文句として不利になるよと言っていたようです(少なくとも、本人はそのように感じた模様)。でもこれって本当はダメです。税務署の調査官は、修正申告に応じなかったからと言って不利益な取り扱いをしてはならないのです。そのため、今回の相談のケースでは、本当にそのような脅しがあったのであれば、「行政手続法違反だから、上司を呼んでくれ!」と逆に反論したらよいと思います。とはいえ、私自身、このようなひどい脅しを経験したことがないので、本当にあるんだという感じです。税務署から納税者を説得してくれないかと言われることはよくあります。そうなると、こちらにメリットがあるように交渉することができるので、うまく事が進むことも多いです。納税者にも一定の妥協が必要になりますが。
国税通則法
(調査の終了の際の手続)第七十四条の十一 税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等(第三十六条第一項(第二号に係る部分に限る。)(納税の告知)の規定による納税の告知を含む。以下この条において同じ。)をすべきと認められない場合には、納税義務者(第七十四条の九第三項第一号(納税義務者に対する調査の事前通知等)に掲げる納税義務者をいう。以下この条において同じ。)であつて当該調査において質問検査等の相手方となつた者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。2 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。3 前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。
行政手続法
(行政指導の一般原則)第三十二条 行政指導にあっては、行政指導に携わる者は、いやしくも当該行政機関の任務又は所掌事務の範囲を逸脱してはならないこと及び行政指導の内容があくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるものであることに留意しなければならない。2 行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかったことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
3.納得いかないなら修正申告しない
修正申告をしない場合のリスクをお伝えしました。そのリスクを加味した上でも納得できない場合には、修正申告なんてする必要はありません。得てして、税務署の調査官が修正申告を強く推すのは、調査官が更正手続きをしたくないことの裏返しである可能性が高いからです。お伝えした通り、税務署が更正の手続きを行う場合、法律に則ってがちがちに固めた上で更正せざるを得ないので、とても大変な作業です。そんな面倒なこと誰もやりたくないですよね。だから脅しみたいなことになるのです。
例えば、以下のようなケースであれば、必ずしも修正申告に応じる必要はないでしょう。とはいえ、この判断自体が難しいという問題があるため、税理士と相談するしかありません。
1.更正の手続きが難しいケース
1つの例を挙げると、法人の節税対策の王道として、出張日当の支払いがあります。そして、その日当の金額が大きいと、税務調査で問題になるのですが、日当額がどの程度であれば合理的なのか法律には何も書かれていません。このようなケースでは、合理的な水準を決めることが難しいため、税務署は更正を打つのは非常に難しいと思います。日当10万円といった極端な例は除きますが。
2.重加算税が課されるケース
重加算税は、国税不服審判所でよく争われ、納税者が勝つケースもそこそこあります。重加算税の要件である仮装又は隠蔽は、納税者に故意があったか否かという王道の論点だけでなく、様々な角度で認定されています。つまり、税務署は、この視点で重加算税であると主張しても、納税者は別の視点で重加算税ではないという主張も可能だったりします。勿論、勝てない可能性も高いですが、必ずしも修正申告に応じる必要はないかなと思います。そもそも重加算税は本当に避けるべきなので、安易に妥協すべきではないということもあるのですが。
4.まとめ