お知らせ・コラム
News & Column
資金繰り表について顧問税理士はサポートしてくれますか
前回のコラムでは、会計事務所についての書籍をご紹介しました。コラム内容は「ダメな会計事務所の特徴とは」です。当税理士事務所はその特徴に全く該当しない!とは言いませんが、私からみてもあり得ない税理士事務所がたくさんあるんだなと本書を読んで思いました。そういった税理士事務所が担当であれば、やっぱり面倒でも解約した方がよいでしょう。当税理士事務所より優れた事務所もありますので、私たちが解約されるリスクも当然あるのですが。
今回は内容ががらっと変わります。本書が強いメッセージとして伝えている資金繰り表について取り上げます。前回もリンクを張りましたが、今回も本書のリンクを張り付けておきます。税理士に不満がある方は是非読んでみてください。アマゾンのレビューもとても評価が高いので、世間の評価も高い書籍です。
社長! こんな会計事務所を顧問にすれば あなたの会社絶対に潰れませんよ!
【目次】
- 資金繰り表はとても大切
- 資金繰り表は全ての事業者に必要か
- 社内に経理担当者がいる場合
- 社内に経理担当者がいない場合
- 資金繰り表を作成するメリット
- 資金ショートを予知することができる
- 事業計画の精度を高めることができる
- まとめ
1.資金繰り表はとても大切
本書でも書かれている事ですが、会社経営で最も大切なことは、会社を永続させることです。では永続させるために必要な事はなんでしょうか?間違いなくお金(キャッシュ)です。最近はそうでもありませんが、売上を増やす事だけを考えている中小企業の社長は本当に多かったです。しかし、売上を倍々で増やしていって黒字を確保していても、倒産するケースがあります。いわゆる黒字倒産です。逆に赤字が継続しても倒産しない会社も少なからず存在します(いずれは倒産するでしょうが)。その理由は手元資金があるか否かです。従って、手元資金の管理が非常に大切であるため、その管理手法である資金繰り表がとても大切なのです。
2.資金繰り表は全ての事業者に必要か
では全ての事業者に資金繰り表が必要なのでしょうか。費用対効果という観点で、私は必ずしもそうではないという認識です。例えば、私が公認会計士として関与している上場企業などは、社内に経理担当者が複数いますので、毎月資金繰り表を作成し、上層部に報告しています。では中小・零細企業はどうでしょうか。また一人親方のような個人事業主はどうでしょうか。
1.社内に経理担当者がいる場合
社内に経理担当者がいるのであれば、一定規模の会社でしょうし、自計化もしているでしょうから、是非資金繰り表の作成にトライして頂きたいです。1から資金繰り表を作成するのはとてもハードルが高いと思いますので、そこは顧問税理士を活用してください。資金繰り表の作成に慣れるまでは、顧問税理士に追加料金を支払ってでもやり遂げて頂きたいです。
2.社内に経理担当者がいない場合
例えば、一人親方のような個人事業主などは、わざわざ顧問税理士に追加料金を支払ってまで資金繰り表を作成する必要はありません。通帳の動きで資金繰りを把握するだけで十分でしょう。では、社内に経理担当者がいない中小企業・零細企業はどうでしょうか。売上規模にもよりますが、可能な限り資金繰り表は作成した方がよいでしょう。しかし、経理担当者がいないため、顧問税理士に作成を依頼するしかありません。その追加料金との兼ね合いになります。資金繰り表の作成頻度によって(月に1回、6カ月に1回等々)支払報酬も全く異なりますし。従って、資金繰り表の作成の有無、作成頻度については、顧問税理士と相談して決めましょう。
当税理士事務所は、資金繰り表プロフェッショナルこがねむしクラブの会員で、そのクラブが提供している資金繰り表を使用することができるため、契約に応じて、資金繰り表の作成・報告をおこなっています。
一人親方のような個人事業主については、通帳の動きで資金繰りを把握するくらいでよいとお伝えしましたが、その場合、事業用とプライベート用の通帳をきっちり分けたうえで管理しなければ意味がありませんので、その点はご留意ください。私の顧問先に対しても、そこはきっちり分けるようにした方がよいと伝えています。税理士側にもメリットがあるという事もあるのですが。
3.資金繰り表を作成するメリット
1.資金ショートを予知することができる
これが一番のメリットです。資金ショートしたら倒産します。従って、資金ショートを防ぐことが何より大切で、それを予知できる可能性があることから、資金繰り表の作成はとても有用です。今後1年間の売上や経費を推計することで、1カ月後、2か月後、・・・1年後の会社の資金がどの程度あるか明確になるため、その結果次第で新たに借入が必要か、経費ももっと削減する必要があるか、などの対応策を予め検討することにつながります。
話が少しそれますが、上場企業の会計監査の中で、継続企業の前提(企業が将来にわたって無期限に事業を継続することを前提)という論点があります。細かい説明は割愛しますが、この継続企業の前提に疑義がある上場企業を監査する場合、会計士は、将来1年間の資金繰り表の妥当性を事細かく検証しなければなりません。これがとても大変なんです。この売上計画はどういう根拠ですか?、3月に10億円の借入を予定しているようですが、銀行の感触はどうですか?、人件費削減を計画していますが、本当に実行できますか?等々、私たち会計士は、事細かくチェックします。そして、資金繰り表の計画と実績に相違があれば、その要因も事細かく検証します。本当に倒産のリスクがある会社などを除けば、中小企業・零細企業が作成した資金繰り表を、金融機関等の第3者にここまで細かくチェックされることはありませんのでご心配なく。
2.事業計画の精度を高めることができる
資金繰り表は、将来の事業計画が前提となります。従って、この事業計画の精度が高くなければ、資金繰り表の精度も低くなってしまいます。その結果、精度の高い資金繰り表を作成するために、精度の高い事業計画の策定に対するモチベーションにつながります。
そして、「資金繰り表の作成」⇒「計画と実績の比較・分析」⇒「次の資金繰り表の作成」を繰り返すことで精度が高まっていけば、倒産リスクを限りなく低く抑えることが可能になります。
4.まとめ
本書では、資金繰り表を作成しない会社は生き残れない!と謳っています。絶対そうだとは言えませんが、強調するだけの理由はあります。資金繰り表を作成していない会社は是非以下の動きをしてみてください。
1.顧問税理士に資金繰り表の必要性を聞く
2.顧問税理士が資金繰り表の作成サポートをしてくれるか聞く
最終的に資金繰り表を作成するか否かは別として、資金繰り表の必要性の有無を語れない、資金繰り表の作成サポートができないと判断できた場合、顧問税理士を変更することをお勧めします。税理士がサポートできないのはまずいです。
この記事は更新日時点の情報となります。掲載の情報は法改正などにより変更になっている可能性があります。また、この記事内容は結果を保証するようなものではありませんので、掲載されている情報を利用することで生じた、いかなる問題、損害等に対しても一切の責任を負いません。自己責任において、ご活用ください。