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2021.07.01 コラム解決事例(税務顧問)

たまたま土地の譲渡があった事業年度の消費税の対応

単発の相談を受けていて話題になったことをお伝えします。相談を受けた会社は一般的な事業会社であり、売上のうち非課税売上はほどんどありません。非課税売上は受取利息位でしょうか。そのため、課税売上割合は常に95%以上を維持しています。そのような会社がたまたま保有する土地を譲渡した場合の注意点についてお伝えします。この会社は決算のみを税理士に依頼していたため、これから説明するような手続きを踏むことができず、大きな損をしてしまいました。顧問契約を締結していれば回避できた問題ではあります。当税理士事務所でも顧問契約を締結していなければ税務相談は受けません。諸々の事情でそもそも単発は受けていないのですが。ある程度規模が大きくなると、決算のみではなく顧問契約を締結し、その都度、相談できる体制を構築した方が良いと思います。

【目次】
  1. 消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書
    1. 提出すべき場合
    2. 提出期限等
  2. たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合とは
  3. 課税売上割合の差が5%を超えるケースは
  4. まとめ

1.消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書

課税売上割合が常に95%以上の会社が、たまたま土地を売却したらどうなるでしょうか。非課税売上の金額が一気に増え、課税売上割合が70%などに下落したとします。この場合、たまたま土地を売却しただけなのに、課税売上割合70%で消費税を計算してしまうと会社の実態が適切に反映されません。このようなケースを手当てしたのが、この消費税課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書です。

1.提出すべき場合

個別対応方式を適用する会社が、通常の課税売上割合に代えてこれに準ずる合理的な割合(課税売上割合に準ずる割合)を適用する場合に提出します。

ここでのポイントは個別対応方式を適用する会社に限定されている点です。例えば、翌期に土地を売却する予定があるのであれば、今期は一括比例配分方式を採用しない方がよい可能性が高いです。なぜなら一括比例配分方式を2年間以上継続した後でなければ個別対応方式に変更できないため、今期一括比例配分方式を採用してしまうと来期も継続して一括比例配分方式を採用せざるを得ず、課税売上割合に準ずる割合を採用できないためです。これって、会社と税理士が密に連携していない場合に生ずる問題ですので、当税理士事務所ではこのようなリスクを回避するために土地の売却等を検討している場合にはすぐに連絡しなければならないと、契約書に明文化しています。

2.提出期限等

この課税売上割合に準ずる割合は、その適用について税務署長の承認を受けた日の属する課税期間から適用できます。

ここでのポイントは、原則として期末までに税務署長の承認を受けなければならない点です。例えば、3月決算の会社があって、この申請書を3月中旬に税務署に提出しても国税が3月末までに承認手続きを終えることができず、承認が下りない可能性は十分にあります。従って、余裕をもってこの申請書を提出しなければなりません。

国税庁HP No.6417 課税売上割合に準ずる割合

2.たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合とは

適用承認申請書の提出が必要であることをご理解頂けたと思いますが、たまたま土地を売却した場合の課税売上割合に準ずる割合はどのように算定するのでしょうか。国税庁HPには以下のように記載されています。

土地の譲渡が単発のものであり、かつ、当該土地の譲渡がなかったとした場合には、事業の実態に変動がないと認められる場合に限り、次の1又は2の割合のいずれか低い割合により課税売上割合に準ずる割合の承認を与えることとして差し支えないこととします。

1.当該土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合(消費税法施行令第53条第3項《通算課税売上割合の計算方法》に規定する計算方法により計算した割合をいう。)
2.当該土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合

土地の譲渡がなかったとした場合には、事業の実態に変動がないと認められる場合とは具体的に何をさすのでしょうか。こちらも国税庁HPに記載されています。

事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内である場合

つまり、過去3年間の課税売上割合を調べ、最高低の差が5%を超えていない事を確認する必要があります。ここで5%を超えていないことが確認できて初めて、課税売上割合に準ずる割合の申請が可能になります。この点は税理士も理解しておく必要があります。

国税庁HP たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認

3.課税売上割合の差が5%を超えるケースは

当税理士事務所が単発で相談を受けた会社は、非課税売上が受取利息だけですので5%を超えることはありません。当税理士事務所の顧問先も非課税売上は小さい会社が多いです。私の経験上、注意すべき非課税売上は土地の譲渡又は貸付、有価証券等の譲渡、暗号資産(⇐課税売上割合の計算対象には含まれません。以下のリンク先参照)、住宅の貸付(⇐社宅は注意)などかなと思います。それ以外の主な非課税取引も国税庁HPから抜粋しましたので参考にしてください。

国税庁HP 非課税となる有価証券の範囲と課税売上割合の関係

主な非課税取引

  1. 土地の譲渡及び貸付け
    土地には、借地権などの土地の上に存する権利を含みます。
    ただし、1か月未満の土地の貸付け及び駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は、非課税取引には当たりません。
  2. 有価証券等の譲渡
    国債や株券などの有価証券、登録国債、合名会社などの社員の持分、抵当証券、金銭債権などの譲渡
    ただし、株式・出資・預託の形態によるゴルフ会員権などの譲渡は非課税取引には当たりません。
  3. 支払手段(注)の譲渡
    銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、約束手形などの譲渡
    ただし、これらを収集品として譲渡する場合は非課税取引には当たりません。
    (注) 支払手段に類するものとして、資金決済に関する法律第2条第5項に規定する暗号資産(令和2年4月までは「仮想通貨」という名称が用いられていました。)の譲渡も非課税となります。
  4. 預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等
    預貯金や貸付金の利子、信用保証料、合同運用信託や公社債投資信託の信託報酬、保険料、保険料に類する共済掛金など
  5. 日本郵便株式会社などが行う郵便切手類の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡及び地方公共団体などが行う証紙の譲渡
  6. 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
  7. 国等が行う一定の事務に係る役務の提供
    国、地方公共団体、公共法人、公益法人等が法令に基づいて行う一定の事務に係る役務の提供で、法令に基づいて徴収される手数料
    なお、この一定の事務とは、例えば、登記、登録、特許、免許、許可、検査、検定、試験、証明、公文書の交付などです。
  8. 外国為替業務に係る役務の提供
  9. 社会保険医療の給付等
    健康保険法、国民健康保険法などによる医療、労災保険、自賠責保険の対象となる医療など
    ただし、美容整形や差額ベッドの料金及び市販されている医薬品を購入した場合は非課税取引に当たりません。
  10. 介護保険サービスの提供等
    介護保険法に基づく保険給付の対象となる居宅サービス、施設サービスなど
    ただし、サービス利用者の選択による特別な居室の提供や送迎などの対価は非課税取引には当たりません。
  11. 社会福祉事業等によるサービスの提供等
    社会福祉法に規定する第一種社会福祉事業、第二種社会福祉事業、更生保護事業法に規定する更生保護事業などの社会福祉事業等によるサービスの提供など
  12. 助産
    医師、助産師などによる助産に関するサービスの提供等
  13. 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
  14. 一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け等
    義肢、視覚障害者安全つえ、義眼、点字器、人工喉頭、車椅子、身体障害者の使用に供するための特殊な性状、構造または機能を有する自動車などの身体障害者用物品の譲渡、貸付け、製作の請負及びこれら身体障害者用物品の修理のうち一定のもの
  15. 学校教育
    学校教育法に規定する学校、専修学校、修業年限が1年以上などの一定の要件を満たす各種学校等の授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、在学証明手数料など
  16. 教科用図書の譲渡
  17. 住宅の貸付け
    契約において人の居住の用に供することが明らかにされているもの(契約において貸付けの用途が明らかにされていない場合にその貸付け等の状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかなものを含みます。)に限られます。
    ただし、1か月未満の貸付けなどは非課税取引には当たりません。

4.まとめ

今回は、たまたま土地の譲渡があった事業年度の消費税の対応についてお伝えしました。この案件は税理士とスムーズに連携していないとミスしてしまうよくある事例です。顧問先と電話すると、いつもと異なる事をやるとか、高額なものを購入したいとか、そういった日々のルーチンから逸脱したことをやるのであれば、予め連絡くださいねと伝えています。

消費税法

(仕入れに係る消費税額の控除)

第三十条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行う課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下この条及び第三十二条から第三十六条までにおいて同じ。)若しくは特定課税仕入れ又は保税地域から引き取る課税貨物については、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める日の属する課税期間の第四十五条第一項第二号に掲げる課税標準額に対する消費税額(以下この章において「課税標準額に対する消費税額」という。)から、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れに係る消費税額(当該課税仕入れに係る支払対価の額に百十分の七・八を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)、当該課税期間中に国内において行つた特定課税仕入れに係る消費税額(当該特定課税仕入れに係る支払対価の額に百分の七・八を乗じて算出した金額をいう。以下この章において同じ。)及び当該課税期間における保税地域からの引取りに係る課税貨物(他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。以下この章において同じ。)につき課された又は課されるべき消費税額(附帯税の額に相当する額を除く。次項において同じ。)の合計額を控除する。

一 国内において課税仕入れを行つた場合 当該課税仕入れを行つた日
二 国内において特定課税仕入れを行つた場合 当該特定課税仕入れを行つた日
三 保税地域から引き取る課税貨物につき第四十七条第一項の規定による申告書(同条第三項の場合を除く。)又は同条第二項の規定による申告書を提出した場合 当該申告に係る課税貨物(第六項において「一般申告課税貨物」という。)を引き取つた日
四 保税地域から引き取る課税貨物につき特例申告書を提出した場合(当該特例申告書に記載すべき第四十七条第一項第一号又は第二号に掲げる金額につき決定(国税通則法第二十五条(決定)の規定による決定をいう。以下この号において同じ。)があつた場合を含む。以下同じ。) 当該特例申告書を提出した日又は当該申告に係る決定(以下「特例申告に関する決定」という。)の通知を受けた日
2 前項の場合において、同項に規定する課税期間における課税売上高が五億円を超えるとき、又は当該課税期間における課税売上割合が百分の九十五に満たないときは、同項の規定により控除する課税仕入れに係る消費税額、特定課税仕入れに係る消費税額及び同項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額(以下この章において「課税仕入れ等の税額」という。)の合計額は、同項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める方法により計算した金額とする。
一 当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び特定課税仕入れ並びに当該課税期間における前項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、課税資産の譲渡等にのみ要するもの、課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等(以下この号において「その他の資産の譲渡等」という。)にのみ要するもの及び課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要するものにその区分が明らかにされている場合 イに掲げる金額にロに掲げる金額を加算する方法
イ 課税資産の譲渡等にのみ要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額
ロ 課税資産の譲渡等とその他の資産の譲渡等に共通して要する課税仕入れ、特定課税仕入れ及び課税貨物に係る課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算した金額
二 前号に掲げる場合以外の場合 当該課税期間における課税仕入れ等の税額の合計額に課税売上割合を乗じて計算する方法
3 前項第一号に掲げる場合において、同号ロに掲げる金額の計算の基礎となる同号ロに規定する課税売上割合に準ずる割合(当該割合が当該事業者の営む事業の種類の異なるごと又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類の異なるごとに区分して算出したものである場合には、当該区分して算出したそれぞれの割合。以下この項において同じ。)で次に掲げる要件の全てに該当するものがあるときは、当該事業者の第二号に規定する承認を受けた日の属する課税期間以後の課税期間については、前項第一号の規定にかかわらず、同号ロに掲げる金額は、当該課税売上割合に代えて、当該割合を用いて計算した金額とする。ただし、当該割合を用いて計算することをやめようとする旨を記載した届出書を提出した日の属する課税期間以後の課税期間については、この限りでない。
一 当該割合が当該事業者の営む事業の種類又は当該事業に係る販売費、一般管理費その他の費用の種類に応じ合理的に算定されるものであること。
二 当該割合を用いて前項第一号ロに掲げる金額を計算することにつき、その納税地を所轄する税務署長の承認を受けたものであること。
4 第二項第一号に掲げる場合に該当する事業者は、同項の規定にかかわらず、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れ及び特定課税仕入れ並びに当該課税期間における第一項に規定する保税地域からの引取りに係る課税貨物につき、同号に定める方法に代え、第二項第二号に定める方法により第一項の規定により控除される課税仕入れ等の税額の合計額を計算することができる。
5 第二項又は前項の場合において、第二項第二号に定める方法により計算することとした事業者は、当該方法により計算することとした課税期間の初日から同日以後二年を経過する日までの間に開始する各課税期間において当該方法を継続して適用した後の課税期間でなければ、同項第一号に定める方法により計算することは、できないものとする

消費税法施行令

(課税売上割合に準ずる割合に係る税務署長の承認等)
第四十七条 法第三十条第三項第二号に規定する承認を受けようとする事業者は、その用いようとする同項に規定する課税売上割合に準ずる割合(次項、第三項及び第六項において「課税売上割合に準ずる割合」という。)の算出方法の内容その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない
2 税務署長は、前項の申請書の提出があつた場合には、遅滞なく、これを審査し、その申請に係る課税売上割合に準ずる割合を用いて法第三十条第二項第一号ロに掲げる金額(次項、第五項及び第六項において「共通仕入控除税額」という。)を計算することを承認し、又はその申請に係る課税売上割合に準ずる割合が合理的に算出されたものでないと認めるときは、その申請を却下する。
3 税務署長は、前項の承認をした後、その承認に係る課税売上割合に準ずる割合を用いて共通仕入控除税額を計算することを不適当とする特別の事情が生じたと認める場合には、その承認を取り消すことができる。
4 税務署長は、前二項の処分をするときは、その処分に係る事業者に対し、書面によりその旨を通知する。
5 第三項の処分があつた場合には、その処分のあつた日の属する課税期間以後の各課税期間における共通仕入控除税額の計算についてその処分の効果が生ずるものとする。
6 課税売上割合に準ずる割合を用いて共通仕入控除税額を計算しようとする課税期間の末日までに第一項の申請書の提出があつた場合において、同日の翌日から同日以後一月を経過する日までの間に第二項の承認があつたときは、当該課税期間の末日においてその承認があつたものとみなして、法第三十条第三項の規定を適用する。

 

 

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