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2021.05.12 コラム

社長個人の飲食費を交際費として処理したら重加算税か

交際費の重加算税について調べていたら、参考になりそうな事例がありましたのでご紹介します。国税不服審判所で争われ、重加算税が取り消された事例です。社長の個人的な飲食費が交際費に計上されているケースはよくありますし、税務調査でもよく問題となりますので、参考になるかと思います。

【目次】
  1. 事例の概要
  2. 国税が重加算税と主張した根拠
  3. 社長の主張
  4. 顧問税理士の対応
  5. 国税不服審判所の判断
  6. まとめ

1.事例の概要

会社の代表取締役が、個人名義のクレジットカード等を用いて、飲食店で飲食したことについて、税務調査を受けて、交際費等に計上した費用は損金の額に算入されないなどとして法人税等の修正申告を提出したところ、国税庁は、当該費用は代表取締役の個人的な飲食等の費用であることを認識しながら損金の額に算入したという隠ぺい又は仮装の事実があったとして法人税等の重加算税を課したことについて、代表者がそのような認識をしていたとは認められないと主張し、国税不服審判所で争う事となった。
国税不服審判所(平成30年9月21日裁決)

2.国税が重加算税と主張した根拠

以下の理由から、国税は仮装又は隠蔽の事実があったと主張した。

1.社長個人名義のクレジットカードを使用して、飲食店で飲食をし、
2.社長は、その飲食について一人で行ったり、友人と言ったと回答し、
3.その回答が質問応答記録書に記録されていることから
4.社長は、費用として計上できないと認識していたはずだ

3.社長の主張

社長は、以下のように反論しました。

1.法人名義のクレジットカードがなったため、個人名義のカードを使用したに過ぎず、
2.一人分の飲食も取引先との飲食で自分の分のみ負担したものや、
3.得意先の飲食店を利用したものである
4.重加算税の根拠が質問応答記録書のみであり、しかもその内容も事実と異なる

4.顧問税理士の対応

私が今回一番気になった点です。そのまま転記しました。E代表とは社長の事です。

E代表の答述
E代表は、平成30年1月25日、当審判所に対し、本件記録書は内容が全く違う旨本件調査担当職員に対し反論したが、当時の顧問税理士からもサインするように言われて署名及び押印したもので、その内容は全て真実に反しており、実際には、本件各飲食等代金は、個人的な飲食等に係る金額ではなく全て交際費である旨答述した。

社長は、反論しているにも関わらず、当時の顧問税理士がサインするように言ったとの事です。あり得ないです。顧問税理士は、顧問先が不正をしていないという大前提はあるものの、当然に会社の味方であるべきにも関わらず、国税に肩を持っているわけです。かなりひどいです。私の周りの税理士は、税務調査に強い税理士が多いのでこのような事象は発生しませんが、このように顧問先を味方しない税理士って結構いるんですかね。税理士を変更する理由をネットで検索すると、税務調査で味方してくれなかったからというのはよく記載されていますので、結構いるのかもしれません。また、当時のと書いていますので、社長が納得せず、税理士を変更して、今回戦ったのだと推測されます。正しい判断です。

5.国税不服審判所の判断

国税不服審判所は、以下の観点から、重加算税を課すべきではないと判断しました。

①社長は、飲食の大部分は取引先との飲食であり、1名と記載された飲食も、得意先との飲食での自己負担分や得意先の飲食店を利用したものと主張している。

②質問応答記録書に記載された、社長が個人的な支出であると回答したものは、個々の支出について回答したものではなく、概括的に述べたものであり、具体性が乏しい上、客観的な証拠もない。

③社長は、質問応答記録書は署名押印したものの、事実に反していると回答している。

④証拠書類がないため、飲食費の全てが交際費であるとは認定できないものの、社長の答弁を直ちに信用性がないとは言えない

⑤飲食費が、個人的な飲食であると推認させるに足りる証拠もない⇐国税が立証していない

⑥社長が、個人的な飲食であると認識しながら、交際費に計上したという仮装の事実を認める証拠がない⇐国税が立証していない

国税が重加算税を課す理由として、拠り所としてた質問応答記録書の信頼性が乏しく、加えて、国税が、社長が仮装隠蔽を行ったという事実関係を立証できなかったということです。

6.まとめ

今回は、重加算税を課すための直接的な証拠がないことから、質問応答記録書に社長の署名押印をもとめ、その記録書を直接的な証拠として、重加算税を課しました。税務調査で本当によくあるパターンです。そして、その質問応答記録書が、納税者が納得していないにもかかわらず、署名押印してしまうという事も本当によくあります。別のコラムで説明しましたが、質問応答記録書への署名押印は義務ではないです。私が途中から立ち会ったケースでも、質問応答記録書のうち、事実でない部分を修正してもらっています。それで重加算税を回避しました。このような対応は、税理士がついていないと難しいです。特に顧問税理士がいない場合は、税理士に相談することを強くお勧めします。当税理士事務所の料金等については、以下参照してください。顧問契約を締結することが前提になりますが、かなり安い金額で対応させていただきます。
税務調査の料金やご利用の流れなど

 

 

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