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2021.04.03 コラム解決事例(税務顧問)

建設国保に加入している個人事業主の法人成りについて

当税理士事務所では、建設業を営んでいる多くの個人事業主と顧問契約を結んでいますが、彼らは所得が増え始めると地域の建設国保への加入を検討します。ちょうど確定申告時期ですので顧問先の所得控除のはがきをみていくと、中央建設国民健康保険組合の全建愛知、全国建設工事業国民健康保険組合、建設連合国民健康保険組合の愛知建設組合などがありました。各組合の違いについてはよく知りませんが、保険料の計算式が年齢や就労状態などによって決まる点に大きな違いはないと思います。計算式が所得と連動しない点が重要なポイントです。今回は、このような組合に加入されている方の法人成りについてご紹介します。

【目次】
  1. 法人成りと社会保険
    1. 法人成りすると社会保険の加入が義務
    2. 社会保険の負担はかなり厳しい
    3. 法人成りしても建設国保の継続が可能?
    4. 法人成りの検討
  2. まとめ

1.法人成りと社会保険

1.法人成りすると社会保険の加入が義務

全ての法人事業所(株式会社、合同会社など)と、今回の論点とは関係ありませんが従業員が5人以上の個人事業所は、法律により、協会けんぽと厚生年金に加入することが義務付けられています。ここでのポイントは、法人は、従業員が0人で代表取締役だけであっても、加入義務がある点です。そのため一人親方が法人成りした場合も、社会保険に加入しなければなりません。

2.社会保険の負担はかなり厳しい

以前のコラムでもお伝えした通り、法人成りすると社会保険の負担額が増えてしまいます。
個人事業主が法人成りを検討する際に注意する事とは

上記のコラムでは、2つのケースでの負担額をお示ししましたが、以下の通り、社会保険負担の影響がとても大きいことがわかります。従業員の数が増えれば増えるほど社会保険の負担額も増えていく構造です。
・従業員なしの個人事業主⇒社会保険負担増15万円/年
・従業員4名の個人事業主⇒社会保険負担増260万円/年

そのため、合理的な方法で社会保険の負担を減らす手立てを考えなければなりません。

3.法人成りしても建設国保の継続が可能?

その一つの解決策が建設国保です。ある組合の資料をみると以下のように記載されていました。

~保険組合の加入者は、健康保険適用除外の申請を事実発生日より14日以内に年金事務所へ届け出ることにより、健康保険はそのままで、年金だけを厚生年金とすることが可能です。

ポイントは所定の手続きを踏むことで、法人成りしても建設国保に残ることができる点です。つまり、建設国保に加入している個人事業主は、法人成りする際に建設国保か協会けんぽを選択することができます。有利な方を選ぶことになりますが、法人成りする個人事業主は所得金額が大きい場合が多いため、法人成り後の役員報酬もそれなりの額に設定する事と思います。となると建設国保を選択した方が有利である可能性が高いでしょう。
一応お伝えすると、組合資料にも記載されていましたが年金は厚生年金に加入しなければなりません

4.法人成りの検討

このコラムを執筆したきっかけは、ちょうど今、建設国保に加入されている名古屋市の個人事業主が法人化を検討していたためです。現在、国民健康保険として30,000円/月程度支払っています。法人化した後も建設国保を継続した場合、34,000円/月程度になるようです。建設国保の組合に問い合わせると、組合員の属性によって金額が変わるとの事。従って、協会けんぽの保険料(法人負担+個人負担)が34,000円/月を超えると建設国保が有利です。

そこで協会けんぽのホームページで保険料を調べてみます。令和3年度の愛知県で調べました。
都道府県毎の保険料額表(協会けんぽのホームページ)

その結果、標準月額報酬30万円の場合、介護保険加味すると35,130円/月でした(40歳を超えると介護保険を払う必要がある)。つまり、愛知県の場合、役員報酬を30万円/月以上に設定すると建設国保が有利となります。私の顧問先で最近法人成りした方を考えると、少なくとも40万円~50万円で設定していますし、今検討している顧問先も、日々の生活費等を鑑みるとそれ位の金額は設定すると思います。従って、今回は建設国保を継続した方が有利になりそうです。

また、今回の論点とは異なりますが大事なのでお伝えします。法人化を検討する際、通常は直近の確定申告書をベースに検討しますが、2020年度の確定申告書をそのまま使用して問題ないのか?という点です。2020年度はコロナの影響で売上・利益ともに減少している方も多いですし、持続化給付金や家賃支援給付金といった1度きりの給付金が所得として計上されている方も多いでしょう。そのため、過去3年分の確定申告書それぞれで法人成りの検討した資料を作成し、有利・不利判定を行いました。
もう1つ大切な視点は将来の見込みです。有利・不利判定はあくまで過去の実績に基づくので、将来見込みが過去実績と大きく異なる場合は、過去実績で評価した資料は意味を成しません。むしろミスリードする可能性もあります。2021年4月3日現在、コロナはまだまだ収束する気配がありません。そのため将来を見通すことは至難の業です。こういった視点で顧問先と協議した結果、法人成りはちょっと様子見という判断になりました。法人成りはいつでもできますので不確実な状況で無理してやる必要は全くないと思います。

2.まとめ

今回は、建設国保に加入している個人事業主の法人成りについてご紹介しました。選択肢があるという事はとてもありがたい話です。建設国保に加入されている方が法人成りを検討する際は、必ず建設国保が有利なのか、協会けんぽが有利なのか検討しましょう。また、全ての健康保険組合が、法人成り後も継続できるかについて確認したわけではありませんので、その可否については皆様ご自身で各組合に確認してください。

 

 

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