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2021.03.29 解決事例(無申告・期限後申告)

無申告はいつから解消するのか…岐阜県在住のせどり業

岐阜県でせどり業を営んでいる個人事業主からの相談でした。アパレルが大好きな方で、主に洋服を扱っていました。私が東京にいた頃、ジョンローレンスサリバンだとかKSUBIというブランドが好きで、そのブランドを取り扱っていた原宿にあるCANNABISというお店がありました(今もあります)。そこで、そのお店のこと知っていますか?と聞いたらご存じでしたので、相当アパレルが好きな方だと思います。最初は、ご自身で来ていた服を売っていたのですが、予想よりもうまくいったらしく、その後は販売のために仕入を開始して今に至るという状況だったようです。今回は、いつから申告すべきかという点を中心にお伝えします。話を分かりやすくするため、相談内容を変更しています。

【目次】
  1. 私服や子供が着ていた服を売ると申告は必要か
  2. 転売目的の洋服や子供服を売ると申告は必要か
    1. 事業所得として申告するメリット
    2. 事業所得か雑所得か
  3. 申告のタイミングは?

1.私服や子供が着ていた服を売ると申告は必要か

最近は、メルカリなどで不要になった自分の洋服や子供服などを売却するケースが増えています。その場合は確定申告は不要です。所得税法という法律で、生活の用に供する衣服(自分や家族、子供などが普段使用していた服など)を販売しても、所得税は発生しないと明記されているためです。しかし、生活用動産であっても、貴金属などについては1点が30万円を超えてしまうと、課税対象になってしまいますが、今回は洋服ですので関係ありません。

所得税法

(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない
九 自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゆう器、衣服その他の資産で政令で定めるものの譲渡による所得
所得税法施行令
(譲渡所得について非課税とされる生活用動産の範囲)
第二十五条 法第九条第一項第九号(非課税所得)に規定する政令で定める資産は、生活に通常必要な動産のうち、次に掲げるもの(一個又は一組の価額が三十万円を超えるものに限る。)以外のものとする。
一 貴石、半貴石、貴金属、真珠及びこれらの製品、べつこう製品、さんご製品、こはく製品、ぞうげ製品並びに七宝製品
二 書画、こつとう及び美術工芸品

2.転売目的の洋服や子供服を売ると申告は必要か

では、プライベートで使用していたものではなく、転売目的の洋服はどうでしょうか?当然、申告は必要です。申告が必要であることは問題ないと思いますが、所得の区分が問題となります。具体的には、事業所得なのか雑所得なのかです。事業所得として申告した方が基本的にはメリットがあるのですが、どちらに該当するかはグレーな部分ですので、税理士に相談して頂いた方が良いと思います。

1.事業所得として申告するメリット

事業所得として申告するメリットの一部を挙げてみました。事業所得で赤字になることはそれほどありませんが、65万円の控除を受けられる点や、専従者給与として経費処理できる点は、大きなメリットです。余談になりますが、事業所得として赤字申告が続くと、税務調査に入られる可能性が一気に高まりますので、不正を伴う赤字申告は絶対ダメです。よくあるのは、副業を赤字にして、給与所得と相殺して税金逃れするパターンですね。分かりやすいので、税務署に狙ってくださいと主張しているような申告書となります。

・青色申告であれば、最大で65万円の青色申告特別控除を受けることができる
・配偶者などを専従者に設定し、給与相当を経費処理できる
・赤字の場合、給与所得等と損益通算できる
・赤字の場合、翌年度以降の黒字と相殺できる

2.事業所得か雑所得か

所得税法や所得税法施行令では、「事業」とは~であると明確にしていないため、事業所得の定義が不明確です。この点、有名な裁決があります。大学の准教授の執筆及び講演等の業務から生じた所得が、事業所得なのか雑所得なのかで争われたもので、最終的には雑所得と認定されました。
一部抜粋すると、以下の通りです。

イ 法令解釈
所得税法第27条第1項は、事業所得について、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得である旨規定し、その委任を受けた所得税法施行令第63条において、事業所得の事業に当たるものとして、11項目にわたり業種を例示するとともに、その他対価を得て継続的に行う事業がこれに当たる旨規定している。
このように、所得税法第27条第1項及び所得税法施行令第63条に規定する「事業」については、その意義自体について一般的な定義規定を置いていないところ、その意味するところは、自己の危険と計算において独立して行う業務であり、営利性・有償性を有し、かつ、反復継続して業務を遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められるものであると解される。
そして、ある所得が事業所得に当たるか否かを判断するに当たっては、当該所得が社会通念上「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる営利性、有償性、反復継続性をもった活動によって生じる所得か否かによって判断すべきであり、この場合において「事業」といえる程度の規模・態様においてなされる活動といえるかどうかは、自己の計算と危険においてする企画遂行性の有無、その者の精神的肉体的労務の投入の有無、人的・物的設備の有無、その者の職業・経験及び社会的地位等を総合的に勘案して判断すべきである。

裁決では、事業所得は、以下の基準に基づき総合的に判断すべきとされました。
・自己の危険と計算において独立して行う業務であること
・営利性・有償性を有していること
・反復継続して業務を遂行する意思があること
・社会的地位とが客観的に認められること

従って、皆様が副業としてビジネスしている場合に、事業所得なのか雑所得なのかについては、上記の視点で判断することになります。

3.申告のタイミングは?

私が相談を受けた案件とは、時期も含め実例とは異なりますが、以下のような事例で考えてみます。

年度 2015年 2016年 2017年
 ポジション  会社員  会社員  個人事業主
 販売対象  私服  私服と仕入れ  仕入れ

2015年は、私服しか売っていませんので、申告義務なし。
2017年は、会社を退職し、個人事業主として事業を行っていること、転売目的で仕入れた洋服を販売していることから、事業所得として申告する必要がある。

問題が2016年です。既に数年経過しているため、私服と仕入れた洋服がきっちり分別することが難しいのではないでしょうか。その年に開業届を提出していたとすると、その時点から事業として営んでいると仮定できるため、実態とそれほど違いがなければですが、開業届を提出した時点から申告するという方法を勧めます。また、2016年は会社員ですが、2017年以降の準備期間と捉えれば、副業片手間ではなく、しっかりと事業を営んでいるといえるため、事業所得として申告するのは問題ないと判断します。

4.まとめ

今回の事例であれば、2016年度から無申告を解消する必要があります。そして、事業所得として申告すればよいであろうと結論付けました。今回のように、せどりを営んでいる方からの無申告の相談は多いです。今回の相談者は、副業ではなく本格的にビジネスとして開始していますが、副業としてメルカリなどで気軽に売買している方に無申告が多い気がします。バレないと思っている方も多いかもしれませんが、メルカリなどの仲介業者を介している限り、税務署はその仲介業者から情報を取得しますので、いずれバレることになると思います。そうなる前に、無申告を解消することをお勧めします。当税理士事務所は、全ての案件でという訳にはいきませんが、最短で2日で申告書を作成することが可能です。いくつか条件がありますので、こちらを参考にしてください。可能な限り、短期間で正確な決算書・申告書を作成します。
最短で何日で確定申告書を作成できるか

また、無申告を解消すべき理由については、こちらを参考にしてください。
無申告の状態は早く解消しましょう。いずれ税務調査がきますよ。

 

 

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